OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

コンセプトワークとしての「旭山動物園」 (〈旭山動物園〉革命(小菅 正夫))

2006-06-26 00:13:38 | 本と雑誌

Polar_bear  複数のメンバでものごとを考えたり、プロジェクトを進めたりする場合に、コンセプトワーク(意味づけ作業)が重要であることは、以前、このブログでも「刑務所建替プロジェクト」を例にコメントしたことがあります。

 旭山動物園でも、スタッフの勉強会で「動物園の意味づけ」の議論がなされたそうです。

(p22より引用) まず、「動物園とは何をするところなのか」といった動物園の存在意義の確認から始めた。・・・
 整理すれば、「レクリエーションの場」「教育の場」「自然保護の場」「調査・研究の場」の四つの役割がある。・・・その基本に関して、飼育係が共通認識を持っていれば、あとはそれぞれの飼育係に考えさせる。それをうまく動物園づくりに生かしていけばいいのだ。

 個々のスタッフが動物園の「コンセプト(意味)」を明確に共有化していれば、スタッフの自発性に委ねた自律的な運営が可能になります。スタッフの誰もが、ただ誰かに言われたことをするのではなく、自らの中の判断軸に基づいて能動的なアクション・創意工夫にチャレンジするようになるのです。

 ちなみに、旭山動物園の英語名に「WILDLIFE CONSERVATION CENTER(野生生物保護センター)という言葉をつけているのは、「自然保護の場」としての「種の保存の場」をコンセプトのひとつに掲げている証左だと言えます。

 さて、こういったコンセプトを考えたり、そのコンセプトを具現化するアクションの知恵だしをしたりするためには、それなりの検討する時間が必要です。
 幸か不幸か、旭山動物園にはその時間があったようです。

(p47より引用) いま振り返って、不遇の時期に意味があるとしたら、お金はなかったけれど、動物園についてじっくりと考える時間が与えられていたということだと思う。市から、「予算がついたから、つくりたいものを何でもつくってくれ」と言われて、思いつきでつくったとしても、いまのようにはなっていないだろうなという気がする。
 アイデアも熟成させる時間が必要だ。一度考えたアイデアを土台にして、そこに新しい考えを各自が持ち寄って再度練り直す。そういう作業をできたのは、意味のあることだった。

 もうひとつ、コンセプトワークから具体的アクション実施という一連のプロセスにおける旭山動物園のKSFです。
 それは、外部の知恵に頼らなかったことです。

(p92より引用) 私たちの施設が比較的安く仕上げているのは、コンサルタント会社に相談せずに、自前でやっている側面もある。多くの動物園は、コンサルタント会社に依頼をして、造ってもらうことが多いのだ。しかし、彼らは野生動物の専門家ではないので、行動展示をしようとしても、思い通りにいかないこともある。

 コンセプトワークが本職のコンサルタント会社が機能しないのは当然でしょう。
 コンサルティング会社には、経営のスペシャリストは大勢いても、ペンギンやホッキョクグマの気持がわかるスペシャリストがいるとは思えませんから。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする