「日朝首脳会談から22年目を迎えるにあたり」
家族会・救う会は、令和5年2月26日に決めた今後の運動方針において、「再度訴える。政府は、親の世代が存命のうちに「全拉致被害者の即時一括帰国」を実現せよ!」と、昨年と同様の主張を繰り返している。
確かに、今年の運動方針にある「親の世代が存命のうちの「全拉致被害者の即時一括帰国」こそが、絶対に譲れない私たちの要求であり、その実現のための手段として日朝首脳会談を求めているのだ。」との主張に込められた心情は多くの国民の理解するところだが、“絶対に譲れない私たちの要求であり”との部分には、本当にそう思っているのかとの疑問が残る。
仮に、“親の世代が存命なうち”との部分を有本明弘氏と横田早紀江氏に限定して、北朝鮮側から“有本恵子さんと横田めぐみさんが生存している”との情報が日本政府に寄せられたとき、家族会・救う会は、「全拉致被害者の即時一括帰国は絶対譲れないから“有本恵子さんと横田めぐみさん”の生存情報だけではだめだ、政府認定の拉致被害者はあと10名いるのだから2名だけの情報は受け入れられない」と拒絶するのだろうか。現行の家族会・救う会の運動方針の矛盾が、その時点で破綻することは目に見えている。
もっと言えば、政府方針にもあるとおり、日本人拉致被害者は政府認定の17名以外にもいることは確実なのだから、全拉致被害者の即時一括帰国との運動方針は何人が全員なのかという問題を簡単には解決できない以上、結局は家族会・救う会の主張が自らの首を絞めることになる。第一、「全拉致被害者の即時一括帰国は絶対譲れない」との運動方針に家族会は全員が賛同しているのか、また全拉致被害者に未認定の行方不明者まで含んでいるのか、その肝心の部分が不透明であり疑念を払拭できない。
今からでも遅くないから、“ストックホルム合意に基づき、一人からでも取り戻し、最終的に全員取り戻す”との運動方針に転換することをお勧めしたい。そうすれば現行政府方針に合致し、特定失踪者問題調査会の運動方針にも合致し、ストックホルム合意を受け入れることで他の人権人道問題との連携・協調も可能となり、拉致被害者救出活動が「全拉致被害者の即時一括帰国」という実現困難な理念に縛られることなく、現実的で柔軟な対応が可能となる。多くの国民は、拉致問題に関心がないのではなく、成果を出せないでいる救出運動のあり様に関心がないのだと思う。
日朝首脳会談から21年間、拉致問題は何の前進もしていない。一刻の猶予もないのは家族会・救う会の「全拉致被害者の即時一括帰国」との運動方針変更ではないのかと、日朝首脳会談から22年目を迎えるにあたり一言申し上げたい。
令和5(2023)年9月17日
救う会徳島 代表 陶久敏郎
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