「今後の日朝交渉に関する声明」
報道によると、北朝鮮との水面下交渉が東南アジアの某国で行われ、日本側は北朝鮮に特使を派遣したいと申し入れたとのこと。この日本側の「特使派遣」報道に鑑み、私たちは今後の日朝交渉に関して次のような見解を明らかにしたい。
まず、日朝間のストックホルム合意に関する水面下交渉で2014年秋と15年に生存が伝達された政府認定拉致被害者の田中実さんと拉致された可能性を排除できない金田龍光さんの2人については、「北朝鮮からの調査報告の中に、そうした情報が入っていたというのは、その通りです。ただ、それ以外に新しい内容がなかったので報告書は受け取りませんでした。」と、外交当事者が昨年9月にはじめて証言している。
私たちは、この北朝鮮側から生存情報伝達のあった田中実・金田龍光両氏の帰国意思の確認のために、ストイックホルム合意に基づき政府担当者を北朝鮮に派遣することを提案したい。現在、国内には家族会・救う会に代表される「全ての拉致被害者即時一括帰国」との方針を主張する人たちが存在する。理念としては理解できるものの、関係者の高齢化が進み一刻の猶予もない現状及び日朝外交の歴史的経緯からみれば非現実的であると判断せざるを得ない。
次に、日朝間の未解決な人権人道問題は拉致問題だけではなく、残留日本人問題、遺骨・墓地問題、日本人妻問題、行方不明者問題等があることはストックホルム合意に明記され、日朝両国政府はそれらの解決に合意している。私たちは、ストックホルム合意に基づき、日本人に関する全ての人権人道問題の公平な解決を政府に強く望みたい。具体的には、解決可能な問題から着手し、その成果を他の問題解決につなげていく手法を採るべきと考える。政府は、常々、拉致問題最優先と公言してはばからないが、その声に押されて声も出せずにいる弱い立場の人たちのことを忘れてはならないと思う。
最後に、北朝鮮が今なお弾道ミサイルをはじめとするミサイル発射を繰り返していることに強く抗議したい。ミサイル開発・発射に伴う費用を、食糧難で塗炭の苦しみを味わっている北朝鮮人民の経世済民に役立てるべきである。さらに言えば、国連が「人道に対する罪」と厳しく断罪した北朝鮮国内の過酷な人権侵害状況の改善について、政府はあらゆる場を通じて国際社会に訴えかけ、北朝鮮に対しても直接求めるべきである。北朝鮮に対する人道支援は、ストックホルム合意に基づく我が国の人権人道問題解決及び北朝鮮国内の人権侵害状況改善が具体的に示された後にすべきであると提言したい。
令和5(2023)年8月1日
北朝鮮人権人道ネットワーク
代表 陶久敏郎
役員・アドバイザー一同
【NKHNW役員】
陶久 敏郎 (救う会徳島会長)
加藤 博 (北朝鮮難民救援基金理事長)
佐伯 浩明 (在日帰国者の生命と人権を守る会代表)
川添 友幸 (救う会神奈川代表)
松尾 和幸 (博多ブルーリボンの会会長)
賀上 文代 (特定失踪者・賀上大助氏の母)
【NKHNWアドバイザー】
須田 洋平 (弁護士)
川島 高峰 (明治大学准教授)
山田 文明 (在日帰国者の生命と人権を守る会名誉代表)
宮塚 寿美子 (国学院大学栃木短大非常勤講師)
井上 卓弥 (ジャーナリスト、「満州難民」著者)
宮塚 利雄 (宮塚コリア研究所代表)
眞鍋 貞樹 (拓殖大学教授)
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