さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

ひきこもり生活とモンテーニュ その3

2017年12月26日 | らくがき

モンテーニュの『エセー』は、「随想録」と訳されたりしています。長いひきこもり生活のなかで20年を超える年月を費やし、つれづれなるままに書き連ねたエッセイ集で、私の手元にある翻訳では2000ページを超える大作です。内容も様々ですが、「自分観察=人間観察」といった壮大な試みです。

私が紹介するとすれば、真っ先に思い出されるのが「酔っぱらいについて」という章ですね。何をおっしゃるかと読んでみると・・・

さて酔っ払うということは、とりわけ粗野乱暴な不徳であると思う。全く肉体的、下界的なものである。だから今日(1572年頃らしい)最も野蛮な国民といえば、この不徳を尊重する国民だけである。他のもろもろの不徳は判断理性を変質させるものだが、この不徳にいたっては理性をくつがえし、肉体を麻痺させる。人間最悪の状態は、自分を見失い自分を抑えられなくなったときである。

・・・ひどいっ!ワインを愛するフランス人のくせに、酔っぱらいは最低、といきなりの断罪だ。ちなみに酔うことを尊重しているとモンテーニュが批判している国民は、ドイツ人のことらしい。昼間っからビール飲みますからね。それはとてもいいことじゃないですか。現代では、午前11時からパブが開店する英国が私は大好き。日本でも、早めに開店する居酒屋は素晴らしい文化ではないかね。

私が好きな、昼間っから酒が楽しめる店は思い出すだけでもこんなにあるぞ。池袋「ふくろ」、荻窪「鳥もと」、浅草「神谷バー」、赤羽「まるます家」、大宮「いづみや」、横須賀「中央酒場」、大阪「天満酒蔵」、徳島「安兵衛」。これらの店にはすべて表彰状を出してもらいたい。

近年は高齢化が進んでいるから、夕方5時ぐらいから開店することが多い居酒屋だけど、まだ明るい4時頃から開店するところも増えつつある。もうジジーババーが開店前から並んでいたりするのだ。サラリーマンが仕事を終えてやってくる前に酔っ払って帰っちゃうなんて、良い棲み分けではないか。最近増えている24時間営業の「ナントカ水産」みたいなチェーン店は好きじゃないけどねェ。

    
        開店と同時に入って飲み始めるのは、なんか優越感^^

俺が昼間っから居酒屋に行きたいという話はいい。モンテーニュの話に戻りましょう。「酔っぱらいは最低!」と始めたにもかかわらず、モンテーニュは途中からトーンが変わる。

古人がこの酔っ払うという不徳をさほど非難しなかったことは確かである。多くの哲学者も寛大だし、ストア学者(ストイックという言葉になってますね)だってそうで、なかには「時には禁を破ってうんと飲むとよい。酔って心をゆるめるがいいさ」などと勧めている者さえある。

それからは酒を勧める人たちの引用が続く。酒飲み競争で勝ったソクラテスは棕櫚の葉を勝ち得たとか言い出したり、ペルシャ人は酒の後で最も重要な問題を討議したというし、どこかの王様や偉い人も沢山飲んだらしいぞ、なんてエピソードのオン・パレード。

なんか言ってることが逆になってませんかあ?

(つづく)