見えないだけ 年若い友へ
牟礼 慶子
空の上には
もっと青い空が浮かんでいる
波の底には
もっと大きな海が眠っている
胸の奥で
言葉がはぐくんでいる優しい世界
次の垣根で
蕾をさし出している美しい季節
少し遠くで
待ちかねている新しい友だち
あんなに確かに在るものが
まだここからは見えないだけ
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中学校で、新一年生を歓迎して在校生から送ったり、
卒業するにあたって、新しい世界に旅立つ卒業生に送ったりした、
この詩。
この詩の言葉は簡単で単純だ。
見えないものがあるっていうこと、
それはただ見えないだけで確かにそこにあるっていうこと、
目には見えないけれど、どれだけしっかりとその先にあり、待っているものなのか、
見えないものの大事さを教え、見えないことの不安をやわらげ、
背中を押してくれる詩だと思う。
ある友達が言った。
「日本人は宗教を信じられないように、目に見えないものを信じられない民族かもしれない。」
確かに、日本人は目に見えないものを信じる気持ちが、
他国の人たちに比べて少ない人たちかもしれないと思う。
目に見えないものを信じて、
見えないものから勇気をもらって、
希望を見いだして前に進めるのは、
きっと生き物たちの中で人間のみができること。
確かにそこにあるのだ。
あんなに確かにあるものが、まだここからは見えないだけ。
タイに帰って、確かにある、まだここからは見えないものを
この目でこの体で感じて、納得して帰って来られるように。
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