龍の声

龍の声は、天の声

『米中貿易戦争』渡辺哲也さん著のまとめ

2018-09-11 21:57:09 | 日本
世界は大きく時計の針を戻している。すでに米ロ、米中は冷戦に突入しており、世界の分断と対立は日に日に激化している。そして、残念なことに、これは悪化する一方であろう。

北朝鮮問題が大きく動く中で、南シナ海、東シナ海には、アメリカ、イギリス、フランス、インド、オーストラリア、日本(自衛隊)などの船舶が常駐し、新たな国家の連合体と枠組み作りが始まっているのだ。そして、ここにおける仮想敵国は中国であり、ロシアであるといえるのである。

「政治と経済は別である」などと間違ったことを言う人がいるが、政治と経済は表裏一体であり、政治が動くとき、経済も大きく動くのである。また、今も昔も戦争で最も大切なのは「兵站」であり、金が尽きれば戦いは負けるのだ。

同時に、経済なき同盟関係など生まれることもなく、強い経済こそが国の力を決めるわけだ。現在、中国が膨張拡大政策をとれるのも、強い経済力を手に入れたからであり、金の力で貧しい国を支配しているからだともいえるのだ。

しかし、中国の金である人民元はまだ、世界で通用しない。人民元は事実上、ドルにほぼ連動しており、香港ドルなどドルの裏付があるから利用できるのであり、それを失えば、通貨の暴落が待っている。だからこそ、中国は人民元取引の拡大に躍起になっている。

しかし、これはアメリカとの対立要因でしかなく、絶対に勝てるうちに叩くというのが戦争の鉄則となる。そして、今、これが始まったわけだ。

同時に中国とアメリカの対立は新たな世界の色分けと枠組み作りを促進する。これから、世界の国々はどちらを選ぶか踏み絵を踏まされ、チーム分けが進んでいくことになるのかもしれない。

朝鮮半島がその典型であり、韓国はアメリカとの関係を打ち切り、統一朝鮮となろうとし、中国との関係を強化しようとしている。

この世界の姿は、第一次世界大戦前後の世界の構図に類似しているものともいえる。歴史は繰り返す、しかし、過ちは繰り返してはいけない。この歴史の荒波を乗り切った時、日本にとっての屈辱の戦後が終わる時になるのかもしれない。


「膨張する中国の軍事力、2035年にはアジアの盟主か?」

2018-09-11 06:13:48 | 日本

<Mr.ミリタリー>
中国の習近平国家主席が総指揮する中国軍が革新的に変化している。戦争と戦闘で勝つことができる軍隊に変貌している。兵力は多いものの指揮統制が難しく腐敗まで蔓延していた中国軍を現代式の軍隊に変えているのだ。目標は2035年。どこにも屈しない軍事力を保有するということだ。中国軍が膨張すれば韓半島(朝鮮半島)にも影響を与える。米国は中国軍の拡張に緊張している。先月、米国防総省が議会に報告するため「2018年中国軍の軍事力と安保発展」を作成した。
 
1894年に韓半島で始まった日清戦争当時、清軍は日本軍を軽視した。1873年に国民皆兵制で動員体制を構築した日本はドイツ式の正規師団を創設した。約9000人で構成された7個師団と2個旅団に日本製の村田銃と口径70ミリの野砲まで配備した。清は日本軍を見くびっていたが、蓋を開けてみると全く違った。日清戦争で清軍は「安城(アンソン)→ソウル→平壌(ピョンヤン)→中国、遼東半島→旅順→山東半島」という戦闘で日本軍に連戦連敗した。戦争史専門家らは清軍は腐敗していたうえ烏合の衆であり、武器と戦術も統一されていなかったと評価した。兵力と武器が多かった清は日本に勝てなかった。
 
清に続く中国の軍隊は国共内戦の過程でその骨格が作られた。中国を7つの区域に分け、軍区形態で各地域を守った。そのような過程で軍区は地域軍閥化し、利権と不正が乱舞した。多くの兵力を保有しながらも、指揮統制はもちろん、陸・海・空軍の合同作戦の遂行はさらに難しい状況となった。時代的な差はあるが、中国軍は先進国の軍隊と比較すると過去の清軍とそれほど変わらなかった。このため習主席は国防改革を前面に出し、旧式の中国軍を米軍と似た現代的な軍隊に変えることにした。
 
習主席の最初の試みは軍構造の改変と命令体系の確保だ。7つの軍区を東・西・南・北・中央の5つの戦区(theater)に再編成し、その上に合同参謀本部議長にあたる連合総参謀長を新しく置いた。すべての指揮命令は共産党中央軍事委員会主席の習近平に集中する。習主席の命令が連合総参謀長を経由して戦区司令官に伝えられる形だ。韓米の「大統領→合同参謀議長→作戦司令官」命令体系と似ている。習主席は軍に「絶対服従」を指示した。これを通じて軍を完全に掌握したのだ。習主席が名実共に軍統帥権者であり総司令官だ。また、18の集団軍のうち5つを解体し、司令官全員を交代した。そして230万人だった中国軍から昨年末30万人を縮小した。
 
改編された中国軍の核心は戦区司令部だ。一つの戦争区域を担当する戦区司令部は中国軍初の陸・海・空軍合同作戦指揮システムだ。このうち韓半島に関連する北部戦区司令部は第79(遼東半島)・第80(山東半島)・第78(ハルビン)集団軍など地上軍をはじめ、空軍師団、青島北海艦隊などで構成されている。韓国戦争(朝鮮戦争)にも参戦した第79・第80軍は韓半島を担当する主力だ。中国は昨年9月の北朝鮮の6回目の核実験直後、中朝国境で訓練もした。北部戦区司令部の地上軍兵力が17万人である点を考慮すると、韓国軍の西部軸線を担当する第3軍司令部より規模が小さい。
 
米ジョージタウン大のオリアナ・スカイラー・マストロ教授によると、北部戦区司令部は北朝鮮有事にM-17など輸送ヘリコプターで兵力を北朝鮮地域に迅速に投入し、攻撃ヘリコプター作戦を遂行できる。山東半島にある第80軍は海兵隊を活用して韓半島上陸作戦も可能だ中国軍は北朝鮮の核施設が国境から100キロ以内にあるという点から、有事の際には米軍より先に掌握できるとみている。中国はこうした軍事作戦を効率的にするため師団を旅団に、連帯を大隊に分け、任務によって旅団・大隊を中心に編組を可能にしている。また作戦情報をリアルタイムで共有して同時に作戦を展開できる指揮統制システムも構築中だ。
 
中国がこのように軍を大々的に改革する理由は結局、(アジア)地域で優位を確保するためだ。このため作戦は攻勢的な性向を持つという。例えば台湾事態が発生すれば、ミサイルとサイバー作戦などで米軍の介入を防いだ後、海兵隊を上陸させて占領するというものだ。このため中国は現在1万人の海兵隊を2020年までに3万人以上に拡大する計画だ。また、中国が輸入する原油の80%が南シナ海を通過するという点を考慮し、海上輸送路保護目標も立てている。中国は海上輸送路と台湾確保のために海・空軍とミサイルおよびサイバー能力を積極的に高めている。
 
まず米海軍が中国沿岸から1500キロ以内に接近できないよう東風21ミサイルなどを多数配備した。状況によっては東風26Dで米国領グアムを攻撃する計画もある。昨年は正確度が高く対応時間が短い新型中距離ミサイル(MRBM)東風16Gを配備した。米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)75-100基を保有する。このうち東風31AGは射程距離1万1200キロで正確度が100メートル以内だ。弾頭には爆発力20-150キロトンの核弾3-5個が入っている。さらに中国は射程距離1万4000キロ以上の東風41も開発している。このミサイルは20-250キロトンの爆発力を持つ核弾10-12個を一度に搭載して運ぶことができる。
 
海軍力の強化に特に意欲的だ。中国は来年実戦配備される初の国産空母「遼寧」(6万7500トン)を含む5隻の空母を計画している。空母には殲15艦載機を搭載し、現在開発中のステルス機の殲31を載せる見込みだ。しかし中国が十分な艦載機パイロットを確保し、空母作戦能力を備えるには少なくとも20年はかかる。空母も性能の面で米国とは相手にならない。また中国はミニイージス艦「洛陽3級」(052D級、7500トン)を配備した。対空能力を強化したイージス級巡洋艦にあたる055級(1万3000トン)も建造している。しかしイージス艦は性能でも数的にも米海軍に絶対劣勢だ。空軍は依然としてロシアに依存している状態だが、ステルス機の開発が進んでいない。戦闘機の国産エンジンの性能が問題だ。
 
中国軍事力は現在では米国の相手にならない。核兵器を除けば南北とそれぞれ対戦しても必ず勝つという勝算がない。中国の運命をかけない限り韓半島占領は難しい。しかし20-30年後には東アジアで確実に声を高めると予想される。米国が太平洋司令部をインド・太平洋司令部に変えたのは中国に対応する行動だ。日本は米国と共に進むという立場だが、韓国の戦略は明確でない。米国が中国を相手に貿易戦争を拡大するのは中国の軍事力膨張ペースを遅らせる措置でもある。こうした環境で中国は過去の光栄を取り戻すことができるのだろうか。