ユラーナ Ulana - A bridge between Japan and Overseas Countries

龍神由美のブログ。江戸の面影を残す川越に、先祖代々300年住んでいます。私の川越暮らしを綴ります。

今週の朝日歌壇

2011年05月24日 | 短歌
今週の朝日歌壇から、心に響いた歌をご紹介いたします。


    喘ぎつつ坂登り来て避難所の廊下に見つけし母の後ろ姿 (久慈市)三船 武子
                              (佐佐木幸綱、永田和宏選)

作者は、あちこちの避難所を回ってお母さんを捜されたのでしょう。やっと見つけたお母さんの後ろ姿に、涙した作者の姿が浮かびます。


    葬儀社の店も家族も霊柩車も流されてみなガレキとなりぬ (八戸市)山村 陽一
                              (馬場あき子選)

作者は、八戸の葬儀屋さん。先週の歌から続けて読むと、仕事のために被災地を訪れて、同業者が皆いなくなってしまったことに、唖然としていらっしゃる様子が浮かびます。その場に立った方ではなくては、詠めない歌です。


    新緑は曇硝子を青くせり西方浄土の木なる栗の木 (東京都)豊 英二
                              (高野公彦選) 

高野公彦先生の評に「上句に初夏の季節感がよく出ている。下句、『栗』という文字を分解すれば『西の木』即ち西方浄土の木」とありました。震災の歌と少し離れて、こういう歌には、ほっとします。そして、学ぶことができました。


    よろこびに尾を振りながら井守二匹今朝植え付けし早苗泳ぐ (三重県)喜多 功
                              (佐佐木幸綱選)

井守二匹が「よろこびに尾を振りながら」とは、田んぼを愛していらっしゃる方でなくては、詠めない歌ですね。無農薬の田んぼなのでしょうか。


   白き和紙にくるみて小鳥葬れり間なく遊びし小さき鈴と (東京都)志摩 華子
                              (佐佐木幸綱選)

亡くなってしまった小鳥を白い和紙に包んであげ、そして、よく遊んでいた小さい鈴と一緒に、埋葬してあげたという作者。私も子供の頃、文鳥を飼っていましたが、死んでしまったときは、本当に悲しかったです。作者は、涙をぽろぽろとこぼしながら、埋葬してあげたのではないでしょうか。


今週は、日常を詠んだ歌が少し増えました。被災地のことは、絶対に忘れてはいけないし、現在も避難所生活の方は、多数いらっしゃるわけで、歌を通して、それを知り続けることが大切だと思っています。しかし、また、「日常を生きる」ということも大切なのだと、選者の先生の選ばれる歌を通して知りました。


ユラーナ

   
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