ユラーナ Ulana - A bridge between Japan and Overseas Countries

龍神由美のブログ。江戸の面影を残す川越に、先祖代々300年住んでいます。私の川越暮らしを綴ります。

川越・荒井桶屋さんと野村万作・萬斎

2015年06月29日 | 日本文化
川越には、今でも、風呂桶を作る桶屋さんが健在です。喜多町にある「荒井桶屋」さんが、そうです。

私は、アメリカから帰国した1998年に、荒井桶屋さんを見つけ、家で使う桶を作っていただきました。当時の木の材料は、さわらでした。その後、10年くらい経ってから、もうひとつ作っていただきました。

我が家は、大正時代に建てられた家なので、時代劇に出てくるような桶が、お水を撒くのに、ぴったりなのです。

荒井さんは、小さな花入れにするような桶も作っていらっしゃいましたので、桶の形をしたお花入れもいただきました。こちらも、10年以上してから、もうひとつ、作っていただきました。ひとつは、トイレ用に、ひとつは、お玄関用にです。

ベテランの職人さんの作った桶は、なんとも言えない味わいがあります。とても丁寧なお仕事なのに、こんな値段でいいのか?というくらいお安い価格です。

昨日、1700席ある「ウェスタ川越の大ホール」の杮落としがあり、狂言師の野村万作・萬斎親子が、「三番叟」と「舟渡聟(ふなわたしむこ)」を演じてくださいました。私は、来賓として招かれましたので、前から8列目くらいのど真ん中で拝見いたしました。ホールは、3階まで、満席でした。

私は、出来たばかりで、何も出来ない「ウェスタ川越」の指定管理者の教育係を買って出ましたので、野村親子と特別ゲストの川越出身の大物俳優・市村正親さまをお迎えするために、接茶とトイレに活けるお花に心を砕きました。

誰も、接茶のことなど、気にしていない模様でした。今どき、トイレにお花を活けるお家もないらしく、私が、楽屋のトイレに花を活けるということを聞きつけたお偉いさんに責められました。何故、人間国宝をお迎えするトイレに花を活けてはいけないのか、お茶器に心を砕いてはいけないのか、今もって、私には、わかりませんが。

兎にも角にも、私は、人間国宝とそのご子息、そして、市村正親さまを心からお迎えすべく、奔走いたしました。

「トイレに花」って当然でしょ?違います?私は、荒井桶屋さんに、自分の家で使っている花入れを持ってゆき、これと同じ物を2つ作って欲しいと、1カ月以上前にお願いしておきました。2週間程で出来ていました。手が込んでいるにもかかわらず、2つで税込5000円でした。申し訳ないようです。

そして、昨日の本番前、演者の皆さまが、楽屋入りをする前に、トイレにリンドウの花を活けました。

そして、演者の皆さんは、どう感じたのでしょうか。

そして、今朝、荒井さんに、我が家で使っている桶を修理してもらうために、持って行ったところ、荒井さんは、とてもお忙しそうでした。

「急に忙しくなっちゃって」

「そのようですね。今、作っているのは、何ですか?」

「四角い風呂桶です」

なるほど、日本の風呂桶、外国人には、人気ですよね。日本人は、どんどん西洋化していっていますが、外国人は、日本人が捨て去るものに、目を付けるのです。高級ホテルでは、和のテイストが求められます。また、高級日本旅館では、やはり、木の風呂桶でしょうね。

そんなこんなで、荒井さんは、とてもお忙しくなってしまったのです。

すると、荒井さんは、こんなことをおっしゃいました。

「昨日、狂言があったでしょ」

「はい」

「狂言の人から、酒樽の注文が入っちゃって。それも、昨日のうちに」

はい、確かに、昨日の「舟渡聟」では、酒樽が使われていました。しかしながら、随分と年季が入っているなぁ、と思いながら、見ていた私でした。

トイレに入った野村さん親子は、誰かにこう尋ねたに違いない。「この花入れの桶は、どこで作ったのですか?」

訊かれた人がどう答えたのかわかりませんが、昨日のうちに、荒井さんの元に、大量の酒樽の注文が入ったのです。

私がトイレに花を活けることを責めた方たち。何をどう考えて、私を責めたのか知りませんが、少なくとも私が用意した桶の花入れのお蔭で、荒井桶屋さんに、酒樽の注文が入ったわけです。それ以外に、どんなルートがあるというのでしょうか。それも、人間国宝が使う酒樽です。川越の職人さんが作った酒樽が、全国、あるいは、全世界の野村家の狂言の舞台で、これからずっと使われるわけです。

少しは、私の果たしている役割に感謝してもらいたいものです。結局、花入れの代金もリンドウの花代も、私が負担しました。


ユラーナ
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お茶出し(接茶)その2

2015年06月26日 | 日本文化
まず、お茶出しの講習会を開くには、お道具が必要です。某企業では、お茶出しに必要な道具は、一切、ありませんでした。

そこで、仕方なく、講師であるワタクシが、百貨店に必要な道具を買いに行きました。

1.お急須
2.湯ざまし
3.お茶碗
4.お茶卓

ここまでは、地元の百貨店で揃ったのですが、まだまだ、足りません。

浦和で、大学の同窓会があった際に、大宮のそごうに寄り、次の物を買い足しました。

5.お盆
6.茶さじ
7.コップ

そごうには、コースターはありませんでした。コップにコースターを敷いてお客さまにお出しする人は、いなくなってしまったのでしょうか?

そこで、今度は、銀座三越に参りました。

8.冷茶器(和風)
9.コースター

しかし、これでは、お客さまにお出しするには、十分ではありません。

お絞りの台がありません。以前勤めていたドイツ系の会社の秘書室では、籃胎漆器(らんたいしっき)のお絞り台を使っていましたが、地元の百貨店でも、大宮そごうでも、銀座三越でもありませんでした。我が家では、籃胎漆器のお絞り台と冷茶器用のお茶卓を使っています。しかし、どこも、もう扱っていないのです。

*籃胎漆器とは?(ブリタニカ国際大百科事典より)
漆工芸品の一種。竹を裂いて薄く削って編んだ素地すなわち籃胎 (籃は竹で編んだ籠) に,漆を塗り重ねた器物。遺例として中国,戦国時代,漢代の楽浪郡古墳の出土品,日本の縄文時代末期の青森県是川発掘のものが知られている。

九州の専門業者さんにお電話したところ、売ってくださるというので、送っていただきました。これで、

10.お絞り台
11.冷茶器用お茶卓

が揃いました。

しかしながら、これでは、まだ、お茶入れをすることは、できません。

まず、お茶がない。お茶は、川越の老舗に行き、特別なお客さま用にお出しする100グラム1500円のお茶を買いました。

皆さん、1500円?そんな高いの?と思われましたか?では、申し上げましょう。1500円で、ペットボトルのお茶は、何本買えますか?仮に、1本150円として、10本しか買えません。

しかし、100グラムを買うと、いったい、どれくらいのお茶を入れることが出来るのでしょう。私は、そんな分量を計測したことは、ありませんが、少なくとも、ペットボトル10本をはるかに凌ぐ量のお茶を入れることができます。


(つづく)

ユラーナ
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お茶出し(接茶)

2015年06月26日 | 日本文化
今どき、どれくらいの方が、ご自分の家で、お急須でお茶を入れて飲んでいらっしゃるのでしょうか?

先日、某企業で、お茶出しの研修を行わせていただきました。(3回)

まず、主催者側の女性に、ご自分の家で、お茶を飲んでいらっしゃるかどうかを尋ねたところ、

「えー飲んでいます」

「では、100グラムいくらのお茶をお飲みですか?」とワタクシ。

「えっと、母が買ってくるので、よくわかりませんが、4~5000円はすると思います」ですと。

ワタクシは、絶句いたしました。お抹茶ならわかりますが、お煎茶をお茶屋さんや百貨店やスーパーに買いにいった場合、100グラム4000円や5000円のお茶は、存在しないと思います。狭山茶でも、3000円がマックス。

宇治茶ですと、あのペットボトル「綾鷹」を出している上林春松本店で、次のようなものが、高額商品としてあります。

ご進物「京錦」
煎茶 京錦 壺入り 150g
10,000円(本体価格)

ご進物「瑞茗・相生」
玉露 瑞茗 缶入り 200g
煎茶 相生 缶入り 200g
10,000円(本体価格)

彼女の家では、こんなお茶を毎日飲んでいるのでしょうか?私には、そう思えません。

「ああ、こんなことで、研修が始まったら、いったいどうなることやら」、と思いました。

(つづく)


ユラーナ

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電話応対 その2

2015年06月25日 | 日本語
先ほど、某社のある方に用事があり、お電話いたしました所、ご本人は不在でした。

「それでは、夕方5時頃、お電話くださるようお伝えください」とワタクシは、申しました。

すると、相手のお嬢さまは、何と、「そのように伝えます」と言いました。

えっ?客である私の言葉を単に「伝えます」でよいのですか?「お伝えしておきます」と言われたこともあります。

そのような場合、「それでは、その旨、申し伝えます」という美しい日本語があるのを、皆さん、ご存じないようですね。

私が電話した会社とは、大手企業です。そんな電話応対の基礎も、会社では教えていないのですね。がっかりです。


ユラーナ

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電話応対

2015年06月24日 | 日本語
近頃は、電話をする機会が減っていると思います。メールやラインで用件を済ませる人が多いらしく、今は、失語症になっている方が多いようにお見受けいたします。

先日、某企業の電話応対の講習会の講師を務めてまいりました。
第1回目の生徒さんは7人。第2回目は4人、第3回目は3人でした。

皆さん、それぞれ、社会経験のある方たちです。しかしながら、電話応対は、ド素人そのものでした。

ワタクシは、22歳でドイツ系企業の「取締役付き秘書及び翻訳」という仕事をいただいて以来、秘書業務は長く行ってきました。秘書にとって、電話応対は、必須です。22歳から30年くらいの秘書としてのキャリアがあります。

社会人としての経験が長くとも、電話応対が出来るとは限りません。企画の仕事であれば、今は、メールや打ち合わせだけで済んでしまうことでしょう。

電話応対は、社会人にとって基本中の基本ですが、それが、今の日本人には出来ていないのです。

どれほど、出来ていないのかについては、徐々に、お話ししてゆきたいと思います。


ユラーナ

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