いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

聞く力  阿川佐和子 著

2013年01月11日 | その他
年末年始の目の回るような忙しさが一段落したところでやっと一息ですが、この冬は全国的に寒いのでしょうか。義父母の介護サービスの方々のお正月休みも終了したようなのでとりあえず首都圏へ戻ってきましたが連日厳しい寒さが続いています。

さて、今回は阿川佐和子氏の「聞く力」です。年末の慌ただしさの中で、介護用品や正月用品の入った買い物袋を抱えたまま、本数の少ない電車の待ち時間の間にふと飛び込んだ駅ビル内の書店で2012年度の新書の年間ベストセラーの表示が目に留まりました。去年、十歳ほど年下の友人から「待ち時間に読むにはちょうど良い本」と聞いていたのを思い出し、この本を購入しました。最近はゆっくり書店に立ち寄ることはほとんどなく、本はネットで購入するばかりで、新書を書店で購入したのは本当に久しぶりでした。

忙しい時にもすぐ読める、それでいて、けっこう頷けるところがベストセラーとなった理由なのでしょうか? 最初はハウツー本なのかなと思って読み始めたのですが、内容からすると阿川さんのインタビューの経験談という感じでした。具体的なので実生活でも参考になることもあるのかなと思いますが、思いのほか軽いノリで一気に読めてしまいました。私としては読み進めるうちに「2012年はどんな世の中だからこの本のどんなところが人々の心に響いたのだろう?」という観点へ興味が移っていきました。

人間は人とコミュニケーションをとらずに生きていくことはできません。自分を主張することは大切なことですが、相手の主張も理解できなければ、人間関係を築くことは不可能に近いでしょう。

絵文字をたくさん使った電子メールで文章も中途半端で通じ合えるのは非常に身近にいる者同士だけで、人間関係を築くためには対話が必要です。最近それが苦手な人々が増加していることは確かでしょう。でもそんな人々も実は、けっこう人間関係の構築がうまくできないことを悩んでいるようです。兄弟姉妹も少なく家族関係も希薄でPCや携帯電話との対話ばかりでコミュニケーションの基礎作りから難しくなってきた近頃・・・確かに「聞く力」というインパクトのある題名に注目したくなる人は多いかなと思います。

この本は人間関係を構築する上でとても大切なことを言っていると思います。
つまり相手の立場や考え方をどれだけ考えられるかです。相手が話してくれなければどんな人かなかなかわかりません。そこで大切なのは「聞く力」すなわち聞き出す力でもあり聞ける力でもあると思います。

若い人ばかりではありません。この本はあくまでも阿川さんの経験に基づくものですが、私個人の問題に置き換えても相手を理解するという難しさに突きあたることはよくあります。

現在の私は身内ですが高齢者の介護と向き合っています。同じ立場の友人たちと時々情報交換をしますが、中でも意外に多いのは高齢の親たちと民生委員の方やケアマネージャーさんやヘルパーさんたちとのトラブルの話題です。高齢の親たちにも今まで生きてきたプライドもありますから、その辺りの気配りができるかどうかはかなり大きな問題です。

友人のひとりAさんの八十代後半のお姑さんは、Aさん曰く、「たいへんプライドが高い人」なのだそうです。ある日民生委員の方が一人暮らしのお姑さんのお宅を訪ねた時、友達に話すような言葉使いで話しかけたそうなのですが、それが相当気に障ってしまったらしくお姑さんはずっと不機嫌だったそうです。なあんだそんなこと・・・とまだ元気な若い人々なら思ってしまうかもしれませんが、実は年を重ねた人々とお付き合いするときはとても重要なことです。

また私の義父も最近話し方がとてもスローペースになってきました。なかなか何を言いたいのかわかりません。でも阿川さんの「言葉を置き換えたり、答えを促したり、一見、親切そうな聞き手のようですが結果的には答えようとしている人を追い立てることになります。」という言葉が心に浮かぶと、せっかちですぐいらいらする自分を少し待たせてくれます。


よく考えてみれば当たり前のことも多いのですが、阿川さんのこの本のお話から私は生活のいろいろなヒントをいただいたような気がしました。


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