僕には、秘密の場所がある。
それはとある神社だ。
街から離れた、周囲に民家もない、山の奥に谷間の斜面に鎮座している、
無名の小さな神社。
この神社を知ったのは、もういつの頃か覚えていない。
たぶん、仕事でクルマを走らせている時、“たまにはいつもと違うルートを
走ってみるか”と思いついて通った道の途中で出逢ったのだと思う。
出逢った。
そう。
まさにそんな感じだった。
相手は生き物ではない。場所だ。
でも、その神社が視界に入った時、“出逢った”と感じた僕がいた。
鳥居をくぐると、長い石段の参道が続く。
一段一段、登ってゆく。
途中、深呼吸をする。
咽せるような緑の匂いが両胸いっぱいに満たされる。
また一段一段登りはじめると、カコーンと、高く軽い音が緑を引き裂くように響いた。
参道の右手に“ししおどし”があった。
しかし、そのししおどしを見て、僕はあっと小さな声を上げて息を飲んだ。
歴史が好きな方なら、写真を見れば一目瞭然かも知れない。
このししおどしの周囲を取り囲む積まれた石。
これは明らかに、横穴式石室の名残りだ。
つまり、ここに古墳があったのだ。
しかし、その墳丘は千数百年もの長い月日の間に崩れ去ってしまったのだろう。
石室の一部だけが取り残され、今ではそこを山の湧き水が静かに流れている。
その石室の名残りを見つけて、ふと思った。
そうか。ここは古墳が築造されるような場所なのだ。
ということは、太古の人々にとっても、特別な場所だったのだろう。
その記憶が受け継げられて、神社が建立され、今に至っている・・・。
それ以来、僕はたまにこの神社を訪れるようになった。
仕事で社外に出た途中。仕事の帰り。休みの日・・・。
“ちょっと休みたいな”
そういう時、気がつくと、僕はこの神社にたどり着き、
参道を登り、拝殿で拝み、そして帰りの参道の途中に腰掛け、
何をするでもなく、ただただ、ぼんやりとする。
癒されるのだ。
参道に座って、緑の中、風の音と湧き水の音を小鳥のさえずりを
耳にしていると、鋭角に尖っていた心が少しずつゆっくりと丸く鈍角に
なってゆく。
千数百年前、ここに古墳を築いた古墳の主の気持ちも分からなくもない。
昨日もそうだった。
僕は仕事でクルマを走らせていた。
ただ違っていたのは、昨日はすっかりその神社のことを忘れていた、ということだ。
忘れていたのに、偶然(本当にそうなのか分からないが)、その神社の前を通りかかった。
通りかかって、思い出した。
僕は鳥居の斜め前にクルマを停め、何の躊躇もなく鳥居をくぐり、参道を登った。
まるで、この神社に呼ばれたみたいだ。
参道を登りながらそう思った。
昔は古墳だった石室の前を通る。
取り残された古墳は、相変わらずししおどしとして、定期的にカコーンと、緑の山あいに
乾いた音を響かせていた。
拝殿に着いて、二礼二拍手一礼し、そして参道を降りた。
途中、いつものように参道に腰掛けて、少しだけぼんやりとしてみた。
疲れてたもんな。
色々とあったもんな。
今も、疲れてるもんな。
まだ、これからも色々とあるからな。
きっと、呼ばれたんだな・・・。
山奥の湧き水が流れる小さな神社。
秘密の場所。
僕のヒーリング・プレイス。
それはとある神社だ。
街から離れた、周囲に民家もない、山の奥に谷間の斜面に鎮座している、
無名の小さな神社。
この神社を知ったのは、もういつの頃か覚えていない。
たぶん、仕事でクルマを走らせている時、“たまにはいつもと違うルートを
走ってみるか”と思いついて通った道の途中で出逢ったのだと思う。
出逢った。
そう。
まさにそんな感じだった。
相手は生き物ではない。場所だ。
でも、その神社が視界に入った時、“出逢った”と感じた僕がいた。
鳥居をくぐると、長い石段の参道が続く。
一段一段、登ってゆく。
途中、深呼吸をする。
咽せるような緑の匂いが両胸いっぱいに満たされる。
また一段一段登りはじめると、カコーンと、高く軽い音が緑を引き裂くように響いた。
参道の右手に“ししおどし”があった。
しかし、そのししおどしを見て、僕はあっと小さな声を上げて息を飲んだ。
歴史が好きな方なら、写真を見れば一目瞭然かも知れない。
このししおどしの周囲を取り囲む積まれた石。
これは明らかに、横穴式石室の名残りだ。
つまり、ここに古墳があったのだ。
しかし、その墳丘は千数百年もの長い月日の間に崩れ去ってしまったのだろう。
石室の一部だけが取り残され、今ではそこを山の湧き水が静かに流れている。
その石室の名残りを見つけて、ふと思った。
そうか。ここは古墳が築造されるような場所なのだ。
ということは、太古の人々にとっても、特別な場所だったのだろう。
その記憶が受け継げられて、神社が建立され、今に至っている・・・。
それ以来、僕はたまにこの神社を訪れるようになった。
仕事で社外に出た途中。仕事の帰り。休みの日・・・。
“ちょっと休みたいな”
そういう時、気がつくと、僕はこの神社にたどり着き、
参道を登り、拝殿で拝み、そして帰りの参道の途中に腰掛け、
何をするでもなく、ただただ、ぼんやりとする。
癒されるのだ。
参道に座って、緑の中、風の音と湧き水の音を小鳥のさえずりを
耳にしていると、鋭角に尖っていた心が少しずつゆっくりと丸く鈍角に
なってゆく。
千数百年前、ここに古墳を築いた古墳の主の気持ちも分からなくもない。
昨日もそうだった。
僕は仕事でクルマを走らせていた。
ただ違っていたのは、昨日はすっかりその神社のことを忘れていた、ということだ。
忘れていたのに、偶然(本当にそうなのか分からないが)、その神社の前を通りかかった。
通りかかって、思い出した。
僕は鳥居の斜め前にクルマを停め、何の躊躇もなく鳥居をくぐり、参道を登った。
まるで、この神社に呼ばれたみたいだ。
参道を登りながらそう思った。
昔は古墳だった石室の前を通る。
取り残された古墳は、相変わらずししおどしとして、定期的にカコーンと、緑の山あいに
乾いた音を響かせていた。
拝殿に着いて、二礼二拍手一礼し、そして参道を降りた。
途中、いつものように参道に腰掛けて、少しだけぼんやりとしてみた。
疲れてたもんな。
色々とあったもんな。
今も、疲れてるもんな。
まだ、これからも色々とあるからな。
きっと、呼ばれたんだな・・・。
山奥の湧き水が流れる小さな神社。
秘密の場所。
僕のヒーリング・プレイス。
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