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埼玉県比企郡嵐山町の記録アーカイブ

短歌 根岸喜・高崎静子・大野春枝 1958年

2009年07月17日 | 菅谷地区婦人会『つどい』

          根岸・根岸喜
遠き記憶さくら若葉の教会に蒼き少女のわれがゆきしは
祈ある生活をゆく人等にて守られてしづかな朝の礼拝
キリスト者蘇轍の隙(あひ)に隠見し今聖餐のワイン配らる
裸樹に觸る雪の素性あらわにてキヤコルの後に来たるさびしみ
椎の実の堕ちくる日に邂逅ふ駅のひさしにただ泪ぐみ
拗ねながらゐたりし稚さ雲白くあかざ花咲く丘の草原
淡き記憶松虫草のおもい出は桜樹の下に君が右手に
会合に赴かむと託す洋傘の下耳朶かすめ吹く迅き風あり
雨気孕む風にあふられ飛び込める蛾よいましばし助(いた)はられ居む
抗(あがら)ひはひそまりながら消えてゆくドームに高く日の堕つる頃
とざされて光る窓あり夕映のビルの高さの彩雲ひとつ

          志賀・高崎静子
歌の会終えていづれば甘やかに銀座は夜の雨となりをり
手折らむとしてためらいつ朝霧をふくめて匂う白き椿を
久に見る夕月のかげさやけくて紅ばらの花暮れ残りたり
音もなく雨降るなつのひるさがり白きダリヤのうなだれた咲く

          志賀・大野春枝
台風に打ちひしがれしコスモスもやがて自ら起きて花咲く
秋の夜を夫と向いて物言はず心淋しくこうろぎを聞く
修学旅行より帰りたる子をかこみ粗末乍らも夕餉は楽し

     菅谷地区婦人会『つどい』創刊号 1958年(昭和33)11月



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