今日の女王サマ

映画、本、音楽、お出かけ、思ったことなどズラズラ書き連ねています。

ナイロビの蜂

2006年05月18日 | 映画&本&音楽&TV

「寒い国から帰ってきたスパイ」、「ロシア・ハウス」などの作品で知られるジョン・ル・カレの『ナイロビの蜂』(原題 THE CONSTANT GARDENER )を観て来ました。

庭いじりの好きなジャスティン・クエイルは英国の一等書記官。そして、活動家で情熱的な女性テッサ。本当に対照的な2人ですが、一目惚れとも言うべき出会いで結婚します。

アフリカへ渡ったテッサは妊娠中の大きなお腹をかかえて、どこへでも出かけて行きます。危険な活動に深入りし、惨殺体で発見されるのですが、夫であるジャスティンはそれまで妻が具体的にどんな活動をしているのか、ほとんど知りませんでした。

妻はなぜ自分に何ひとつ教えてくれなかったのか。テッサの死の真相を探って行く過程で、ジャスティンは夫である自分に対する、テッサの深い愛を知って行くのです。

アフリカの無知な人々を食い物にする大企業の恐ろしい陰謀。新薬の人体実験です。あ~やだやだ、人間ってどこまで醜いんだろう。
部族間の戦いで命を落としても、新薬の副作用で死に至っても、誰もなんとも思わない。人の命がとても軽く見られているアフリカ。

ジャスティンは妻の遺志を継ぎ、真相を暴き白日の下にさらします。自分の命と引き換えに。
苦い結末ではありますが、ウヤムヤにできなかったんです。テッサを失くした自分に戻るべき家はなかったのですから。

死んでしまった幻のテッサと語り合うジャスティン。銃を持って忍び寄る男たちに対する恐怖はもうありません。彼は愛するテッサのもとへ帰ってきたのです。

ジャスティンを演じるのはレイフ・ファインズ。端正な面立ちで、代々外交官を勤める家に生まれたというジャスティンの育ちの良さが、そこに立っているだけでにじみ出てきます。
テッサを演じるのはレイチェル・ワイズ。この『ナイロビの蜂』でアカデミー助演女優賞と、ゴールデングローブ助演女優賞をダブル受賞しました。

しかし、ここで私はアフリカの現実、アフリカの子供たちに目が奪われていました。虐げられていることを知らず、笑顔を向ける顔、顔、顔。発展途上国での人体実験など絶対にあってはならないことです。絶対に。


サスペンスのテイストも十分にありながら、これはジャスティンとテッサの愛の物語でもあります。