ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

小倉清ほか『子どものこころを見つめて-臨床の真髄を語る』2011・遠見書房-真のエヴィデンスとは

2024年06月26日 | 子どもの臨床に学ぶ

 たぶん2017年のブログです

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 小倉清さん、村田豊久さん、小林隆児さんの『子どものこころを見つめて-臨床の真髄を語る』(2011・遠見書房)を読みました。

 2011年の本ですが、なぜか読みそびれていて、今回、やっと読みました。

 いい本です。

 本の帯に、「発達障碍」診断の濫用は逆に子どものこころを置き去りにし、今や脳は見てもこころは見ない臨床家がどんどん産み出されている、とあるのですが、そういう現実を危惧している3人の児童精神科医による鼎談です。

 こころを見ない、とは、子どもの問題行動の原因を、心理テストや脳波を見ただけで診断をしてしまう危うさを指摘していて、もっともっと問題行動の背景や理由、気持ちや考えに目を向けないと真の診断にはならない、と警告をしています。

 それはある意味で、子ども一人一人の個性を本当の意味で尊重したうえでの診断ということになりそうです。

 また、そうした考えから、精神医学は自然科学より社会科学に近い、とか、精神医学は人間学、といった発言が出てきますが、まったく頷けます。

 さらに、印象に残ったのが、臨床の教育は徒弟制度、という発言。

 師匠の技を間近に見ることで成長していくしかない、と述べられています。

 よく臨床家は職人だ、と言われますが、同じ意味だと思います。

 昔、調査官の後輩が「職人としての調査官」という論文を書いたのですが、先見の明があったな、と感心します。

 いずれにしても、エヴィデンスやDSMだけでは十分ではない、臨床の奥深い世界を垣間見ていくことが重要になりそうです。

 ふだんからのケース検討やケース研究での学びを大切にしながら、説得力のある、質の高い臨床の力をつけていきたいなと思います。(2017?)

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 2024年初夏の追記です

 子どもの気持ちにきちんと目を向けることが、子どもの個性を本当に尊重することになる、というところは大切だな、と思います。

 そしてそれは児童精神科医療だけでなく、さらには子育てや教育の分野にも共通するのではないかと思います。   

 とはいえ、子どもの気持ちにきちんと目を向けるということは、口でいうほど簡単なことではありませんし、なかなか至難のわざです。

 じーじがふりかえってみても反省ばかりです。  

 さらに努力をしていかなければなりません。     (2024.6 記)

 

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川上弘美『東京日記5 赤いゾンビ、青いゾンビ。』2017・平凡社-電車で読むのは危険な本です

2024年06月26日 | 随筆を読む

 2017年のブログです

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 川上弘美さんの『東京日記5 赤いゾンビ、青いゾンビ。』(2017・平凡社)を読みました。

 すごーくおもしろかったです。

 おもしろすぎて、何度か大笑いしてしまい、この本は電車の中で読むのは危険(!)だな、と思いました。

 シリーズ5作目で、実は去年に出ていたのにチェックし忘れで、今頃読んでしまいました(川上さん、ごめんなさい。でも、文庫本になる前に買ったので許してください。ちなみに、じーじが文庫本や古本以外の新しい本を買うのはきわめてまれなことなのです)。

 さて、本書、今回も本当に面白いです。

 川上さんが読者を笑わせようと構えて書いているわけではなく、ふだんの日常生活を淡々と書いているだけなのに、結構、奇想天外なことが出てきて、すごくおかしいです。

 あるいは、川上さんの周りでは、笑いの神さまがさまざまないたずらをしているのかもしれません。

 それを常人とは違う感性でキャッチして文章にすることも、すぐれた小説家の仕事なのかもしれません。

 内容はあまり書けませんが、じーじが一番おもしろかったのは、川上さんが新潟の小さな本屋さんで自分の本があるかどうかをチェックしたところ、一冊だけあったのですが、周りの本がベストセラーすぎて、かえって心苦しくなった、というエピソード。

 川上さんらしく、控えめな(?)エピソードで、ますます川上ファンになってしまいました(!)。

 他にも、真面目なのに、すごくおもしろいお話が満載です。

 そういえば、真面目な話が多いわりに、なぜか、下着のお話が多いのが、川上さんらしい(?)のかもしれません。

 色っぽい小説をお書きになる売れっ子小説家ゆえのことなのでしょう(?)。

 冗談はさておき、とてもいい日記シリーズです。

 哀しいとき、つらいとき、死にたくなったとき(?)にお読みになれば、また元気が出ること、うけあいです。

 よろしかったら、ご一読ください。      (2017 記)

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 2019年1月の追記です

 「じーじの日記」のお手本(?)になったすてきな日記です。     (2019.1 記)

 

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