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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談、研究しています

神田橋條治『精神科診断面接のコツ』1984・岩崎学術出版社-精神科面接の名著に学ぶ

2025年05月08日 | 精神科臨床に学ぶ

 2020年5月のブログです

     *

 神田橋條治さんの『精神科診断面接のコツ』(1984・岩崎学術出版社)を久しぶりに読みました。

 この有名な精神科臨床の面接の名著、じーじも家裁調査官の時代から何度も読んで参考にさせていただいていますが、感想文は初めてです。

 このまるで宝箱のような本を再読して、今の力量で何をどう感じるのか、自分で確かめてみたいと思いました。

 あいかわらず、付箋とアンダーラインだらけで、少し整理をしながら読み進めました。

 あくまでも、今の時点で印象に残ったことを一つ,二つ。

 一つめは、読んでいて思い出したのですが、ごく近い未来を予測することの大切さ。

 その後、この予測と結果を比較することで、面接や診断の善し悪しがわかり、面接の技術が上がるといいます。頷けます。

 二つめは、いつでも、あと5分で面接を終われるような面接をせよ、ということ。

 これは、面接が即治療であるということからくる必然性のように思われます。

 また、いま、ここから、を大切にして、そこからだんだんと話を広げる、ということとも関係してくるようです。

 三つめは、「なぜ」という問いをできるだけ使わないことの大切さ。

 「なぜ」を使わないだけで、質問がより丁寧で細やかなものになる、といいます。

 これはなかなか難しいことですが、記憶に誤りがなければ、成田義弘さんなども、「なぜ」よりも「どのように」などの言葉を勧めていた記憶があります。

 その他、メモなしで面接をして、記録を書き、後で録音と比べる方法や仮説をたくさん考えることなどは、調査官時代の指導官だった山野保さんからも教わったことがあり、懐かしい修行方法でした。

 さらに、勉強をしていこうと思います。         (2020.5 記)

     *

 2022年2月の追記です

 再読をしていたら、神田橋さんが、面接室外での面接について、述べられているところに気づきました。

 その場合、医師と患者さんが横並びになって、前方にぼんやり目を向けていると、患者さんの不安が起こりにくい、とあります。

 じーじの公園カウンセリングも、それなりに理にかなっているんだなあ、と改めて思いました。         (2022.  2 記)

     *     

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com

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中井久夫『精神科治療の覚書』1982・日本評論社-中井さんの名著に細やかさやていねいさを学ぶ

2025年04月11日 | 精神科臨床に学ぶ

 2024年4月のブログです

     *

 中井久夫さんの『精神科治療の覚書』(1982・日本評論社)をかなり久しぶりに読む。

 中井さんの名著なのに、再読がすっかり遅くなった。反省。

 中井さんが日々の精神科治療で経験されたことをすごく細やかに、ていねいに記されていて、勉強になる。

 真摯な精神科医はこんなにもいろいろなことを考えて治療をされているのか、と本当に感心させられる。

 それでいて、そこから患者さん中心の精神医学が立ち上がってくるさまが見えてくるようですごい。

 例は違うかもしれないが、松田道夫さんの『育児の百科』を思い出す。

 松田さんも、子どもの症状をていねいに細やかに記して、そこから親ごさんが安心できるような情報を導き出すが、そこがそっくりな印象を受ける。

 患者さんや家族を大切にする大家は分野が違っても、同じような作業をされているのかもしれないなあ、と思ったりする。

 もう一つびっくりしたのが(一回読んでいて、今ごろ、びっくりした、もないが…)、この本で中井さんがすでに「ハムレットの原理」に触れている点。

 患者さんの話を「聴く」ということは、その訴えに関して、中立的な「開かれた」態度を維持すること、「開かれた」ということはハムレットがホレイショにいうせりふ「天と地の間には…どんなことでもありうる」という態度、と述べられていて、19世紀のある治療者(誰かな?)が「ハムレットの原理」と名づけている、と紹介されている。

 この「ハムレットの原理」を中井さんは患者さんに「ホレイショの原則」と呼んでいたらしいし、じーじの考えではこれはわからないことにすぐに結論を出さずに耐えて考え続けることでもあると思う。

 今頃、中井さんの先見の明に触れられて、お粗末なじーじだが、勉強の楽しさを十分に味わえた1か月であった。        (2024.4 記)

     *     

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

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 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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神田橋條治『発達障害をめぐって-発想の航跡・別巻』2018・岩崎学術出版社

2025年03月31日 | 精神科臨床に学ぶ

 2018年のブログです

     *

 精神科医で精神分析家の神田橋條治さんの『発達障害をめぐって-発想の航跡・別巻』(2018・岩崎学術出版社)を読みました。

 神田橋さんの名著『発想の航跡』の中から発達障害に関係する文章を選んだということですので、さっそく読んでみました。

 ちなみに、『発想の航跡』はとてもいい本なのですが、かなり高価で、貧乏なじーじはなかなか買えずに、たまたま家庭裁判所の図書室にあったのを借りて読んだり、コピーを取ったりしました(神田橋さん、ごめんなさい)。

 でも、本書は堂々と(?)購入しましたので、許してくださいね。

 神田橋さん流の発達障害観はどんなかな?と思って読みましたが、やはり神田橋さん(!)、発達障害は程度の差はあれ、みんなが発達障害、と言い切ります。

 そう言われてしまえば、差別も何もなく、あるのは区別だけで、教育や訓練の対象になります。

 治療者を含めて、丁寧な訓練や教育が必要になるということで、人ごとではなく、自分のこととして取り組みざるをえません。

 本書によれば、発達障害で最近、問題になっているのが、発達障害が基盤にあって、さまざまな理由から、うつ症状やパーソナリティ障害が出てきているケースだそうで、治療が難しいといいます。

 うつやパーソナリティと思って治療をしてもあまり良くならず、治療関係が悪化してしまい、よく検討をしてみると、発達の問題が絡んでいるという具合で、現場では苦労されているようです。

 そういった場合、ただ単にうつ症状だ、パーソナリティ障害だ、と言うだけでなく、もっと丁寧な診断で、今、この人に何をしたらいいのか、という診断をしていく必要があるし、それが大切だ、とおっしゃいます。

 神田橋さんの真骨頂です。

 さらに、本書の圧巻は、ケーススーパーヴィジョン。

 人と話すことができない、という主訴の女性で、神田橋さんの見立てでは、発達障害と愛着障害の人だそうです。

 丁寧なカウンセリングで少しずつ話せるようになりますが、その過程を神田橋さんが適切な質問で明確化をしていき、本当に感心させられます。

 本当にすごいなと思いますし、じーじも少しでもこんなふうになりたいなと思います。

 印象に残ったのは、カウンセリングで双方が退行をするためにはきちんとした枠を契約することが大切、というご指摘があって、本当にそうだなと思いました。

 他にも、クライエントさんにも考えてもらうこと、アイデアを出してもらうことの大切さやセルフモリタニング能力を高める工夫、クライエントさんのためになる心理検査の工夫、などなど、学ぶことが多くありました。

 さらに読み深めていきたい、いい本だな思います。               (2018. 12 記)

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

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 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

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 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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中井久夫『「伝える」ことと「伝わる」こと』2012・ちくま学芸文庫-ていねいな精神科治療に学ぶ

2025年03月22日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2018年ころのブログです

     *

 中井久夫さんの『「伝える」ことと「伝わる」こと』(2012・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 おそらく3~4回目、単行本の時も含めると、数回は読んでいると思うのですが、なぜか今回も新しい発見が数多くあって(?)、新鮮な驚き(?)をたくさん経験できました。

 記憶力がだんだんあやしくなってきているお年寄りの特権(?)です。

 本の内容は中井さんのご専門の統合失調症や神経症の治療論が中心ですが、いずれもあくまでも中井さんご自身の体験に基づいた丁寧な治療のあり方を述べられていて、心理臨床に携わる者にもたいへん参考になります。

 中でもじーじが今回、参考になったのが「意地」の問題。

 ここのところ、「うらみ」や「意地」のことについて考えているので、いろいろと参考になりました。

 特に、「意地」を張っていることをそっと汲んであげると「うらみ」になりにくい、というご指摘はすごいと思いました。

 他にも、初期のロールシャッハテストには枠があった、とか、びっくりするような話題ものっています。

 博学で、しかも、地に足の着いた中井さんの治療と文章は、本当に素敵ですし、貴重だと思います。

 今後もさらに学びつづけていきたいと思います。          (2018? 記)

     *

 2021年4月の追記です

 心理療法における「枠」の重要性や不思議さということを考えます。

 中井さんの考案した風景構成法という心理テストでは、治療者がまず紙に外枠を描きます。

 そうすることで統合失調症の患者さんでも心理的に安全に絵を描くことができます。

 風景構成法のもとになった箱庭療法でも、統合失調症の患者さん用の箱庭は、木の枠が通常より少し高くなっていて、患者さんを心理的に護るようです。

 不思議ですが、「枠」が大切なポイントになっているようです。

 さらに、心理療法では、「枠」としての時間の重要性も挙げられます。

 決まった時間だからこそ、治療者も患者さんも護られるようです。

 もっともっと、勉強を深めたいと思います。            (2021.4 記)

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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中井久夫・山口直彦『看護のための精神医学・第2版』2004・医学書院-名著と呼ばれる精神科臨床の教科書を読む

2025年03月06日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 中井久夫さんと山口直彦さんの『看護のための精神医学・第2版』(2004・医学書院)を読みました。

 精神医学の教科書で名著といわれている本です。

 ようやく読めました。

 看護のための、という名のとおり、精神科の看護師さんやその他のスタッフが理解しやすいようにわかりやすく書かれています。

 とはいっても、内容はかなり本格的で、初めて読むような細やかなことも書かれていて、たいへん参考になります。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、夢の働きについて。

 夢が昼間やり残したこと、こころ残りのことを処理する、と解説されていて、感心しました。

 夢の仕事について、こんなにわかりやすく書かれているのを初めて読みました。

 二つめは、うつ病になりやすい人は、能率が下がった時に、努力を倍加させることで切り抜けようとして破綻する、という説明。

 すごくわかりやすいです。

 さらには、健康人と神経症、人格障害、精神病の比較についてもとてもわかりやすい。

 また、境界性人格障害の人への治療に役に立つかもしれない多少の助言など、日ごろの行動を再確認をするための記載も数多くあって、勉強になりました。

 なんども開いて、読み返していきたい、いい本だと思いました。          (2019.6 記)

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中井久夫『隣の病い』2010・ちくま学芸文庫-ていねいで温かな精神科医に学ぶ

2025年03月02日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 中井久夫さんの『隣の病い』(2010・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 これもかなり久しぶりの再読。

 付箋とアンダーラインがすごいことになっているので、少し整理をしながら、しかし、またたくさんの印をつけながら、読みました。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、統合失調症の患者さんの幻覚妄想について。

 患者さんにとって、幻覚妄想はたいへんな症状ですが、しかし、発病時の表現しがたいような恐怖体験に比べれば、幻覚妄想は言語化と視覚化がなされているので、まだ耐えられやすいかもしれない、という理解をされます。卓見だと思います。

 二つめは、以下の文章。

 「いかにデータとして欲しくても、患者さんにとって意味のないことはしない」

 すごいです。当たり前のことなのですが、大学教授の言葉として、すごいと思います。

 三つめは、河合隼雄さんとの出会いの思い出。

 1969年11月の芸術療法研究会(今の芸術療法学会)に中井さんが顔を出したところ、河合隼雄さんが、当時はまだ知られていなかった箱庭療法の症例について発表をされていて、そこで意気投合をされたということで、なかなか感動的です。

 中井さんは、これは使える、と考えて、さっそく病院で手作りの箱庭を作って、試してみられたそうで、その熱意と研究心がすごいです。

 さらに、そこから中井さんの有名な風景構成法にも発展をしたといいますから、お二人の出会いは本当にすばらしいものだったと思いますし、お二人の熱意と探求心はすごいと思います。

 読んでいて、なんだかこちらにまで勇気をもらえるような、そんな気がしました。

 いい本を再読できてよかったなと思います。           (2019. 11 記)

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武田専『分裂病という名の幻想』2003・元就出版社-精神分析で患者さんにより添う「熱い」精神科医に学ぶ

2025年02月28日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 武田専さんの『分裂病という名の幻想』(2003・元就出版社)を再読しました。

 武田さんは慶応大学医学部出身。

 後輩だった小此木啓吾さんの紹介で、日本の精神分析の先達である古沢平作さんから指導を受けました。

 今では精神分析の大家である西園昌久さんらと同期で、日本の精神分析を切り開いたかた。

 精神分析的な治療を行なう武田病院を創設されています。

 本書はその武田さんの回想録ですが、武田さんもかなり「熱い」(!)人です(武田さん、ごめんなさい)。

 やはりすごい人というのは、情熱的でなければ、その道を究めることが難しいのかもしれません。

 それだけに、読んでいて面白いですし、痛快。

 気持ちが晴れ晴れとしてきます。

 一方、統合失調症の患者さんや家族に向ける愛情はとても温かく、ていねいです。

 統合失調症の患者さんだけでなく、たくさんの症例の患者さんが紹介されますが、いずれの患者さんへの治療もていねいで、こころがこもっています。すごいな、と思います。

 「熱い」人は、弱い立場の人には優しいのだ、と思います。

 びっくりしたのは、武田さんも、眼はそれを探し求めるもの以外は見ることはできない、という言葉を引いていること。

 精神分析や精神療法における大切な点のようです。

 もっとも、世の中のこと、すべてに通じる言葉かもしれません。

 「熱さ」と冷静さ、武田さんの魅力が爆発しているかのような、楽しくて、感動的な本です。         (2019. 10 記)

     *

 2025年3月の追記です

 きたやまおさむさんの『コブのない駱駝-きたやまおさむ「心」の軌跡』(2024・岩波現代文庫)を読むと、イギリス留学から帰国をしたきたやまさんが、慶応大学病院の小此木啓吾さんのもとで勉強をしながら、武田病院に勤務した記述がありました。

 当時のきたやまさんの精神分析学会での精力的な発表は、こういった経験から生みだされたのかもしれないなあ、と想像したりします。

 その後、きたやまさんは九州大学の先生となって活躍されますが、貴重な勉強の期間だったことが想像できます。       (2025.3 記)

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中井久夫『精神科医がものを書くとき』2009・ちくま学芸文庫-患者さんへの祈りを大切にする精神科医

2025年02月26日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 中井久夫さんの『精神科医がものを書くとき』(2009・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 もう何回目になるでしょうか。

 本は付箋とアンダーラインで大変な状態。少しだけ整理をしながら読みました。

 中井さんが精神科医になった前後のお話や大学病院での実践などが語られます。

 全編を貫くのは中井さんの患者さんへのやさしい祈り。

 以前にも書きましたが、中井さんは患者さんの薬を手渡すときに、効きますように、と祈りの言葉をそえる、といいます。

 他にも、わたしも病棟の一部になったら、患者と出会えるだろうと思った、とか、精神医学の目指す健康とは、苦しみや脅えなしに、ゆとりをもって生活を営めること、などと書きます。

 さらには、症例報告を書いた後の治療は、しばらくうまくいかない、などと、耳の痛い言葉もあります。

 いずれも患者さん第一の中井さんならではの言葉だと思います。

 そして、同じような姿勢は患者さんの家族にも貫かれます。

 すごいな、と本当に感心させられます。

 解説の斎藤環さんが、中井さんは精神医学を体系化しなかった、とその現場第一主義を評していますが、本当に患者さんのことだけを考えて働いてきたのだな、と感心させられます。

 今からでも見習っていこうとつくづく思いました。          (2019. 10 記)

     *

 2023年秋の追記です

 中井さんからはたくさんのことを教えていただいていますが、そのうちのひとつが、わからないことに耐えることの大切さ。

 中井さんがハムレットで見つけられた「ホレイショの原則」という、この言葉を患者さんにお話するそうです。

 中井さんから、先のことはわからなくても、そんなに心配いらないよ、とやさしく言われたら、誰でも安心できそうですね。      (2023.9 記)

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サリヴァン(中井久夫ほか訳)『精神医学的面接』1986・みすず書房-妄想・仮説・要約

2025年02月23日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 アメリカの精神科医サリヴァンさんの『精神医学的面接』(中井久夫ほか訳・1986・みすず書房)を再読しました。

 すごく久しぶりで、たぶんようやく2回目くらいの再読です(サリヴァンさん、ごめんなさい)。

 結構厚い本で、真面目な勉強が大の苦手なじーじとしては、なんとなく再読が遅くなってしまいました。

 面接について、たまにはじっくりと勉強をしてみようと思って再読をしたのですが、まったくの偶然ですが、タイムリーなことに、精神科デイケアで妄想について考える必要があって、結果的にとても勉強になりました(こういうことがたまにあるので、読書はやめられません)。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、複数の仮説について。

 以前にもどこかで出てきましたが、仮説を多く持つことの大切さです。

 おそらく視野が広く、深くなるのだと思います。

 反対に、一つの仮説では信仰になってしまう、とサリヴァンさんは警告します。

 二つめは、面接の要約の大切さ。

 これは下坂幸三さんも強調されていますが、面接の内容を再確認することで、クライエントさんの発言を客観化されることになり、さらに面接が深めるきっかけになるようです。

 三つめは、妄想への対応。

 サリヴァンさんは、妄想に暗黙の承認も否定もしないことが大切、と述べます。

 中井久夫さんは、加えて、ちょっと不思議がるのがいい、といわれます。

 いずれもなかなか難しいことですが、大切な実践であり、今後、経験を重ねていきたいと思います。        (2019.7 記)

     *

 2023年春の追記です

 一つの仮説では信仰になってしまう、というサリヴァンさんの言葉はいいですね。

 じーじが家裁調査官補だった時、指導官だった山野保さんも、仮説は3つ以上考えなさい、とおっしゃっていました。      (2023.3 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com  

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神田橋條治『医学部講義』2013・創元社-患者さんを大切にする精神科医に学ぶ

2025年02月23日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 神田橋條治さんの『医学部講義』(2013・創元社)を再読しました。

 これも久しぶり、しかしながら、大切なことがいっぱいです(再読が遅くなって、神田橋さん、ごめんなさい)。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、マニュアル診察の弊害。

 マニュアルをチェックするだけの診察が横行していて、誤診が多発している状況に警告を発しています。

 そうではなくて、患者さんの全体を診て、診察をする大切さを強調されます。同感です。

 二つめは、これとも関連しますが、サリヴァンさんもいう「関与しながらの観察」の重要性。

 パソコンの画面を眺めるより、患者さんをよく診て、関わることの大切さを述べられます。

 これに関連して、「患者様」という表現に違和感を感じる、とも述べられます。これにも同感です。

 言葉だけを丁寧にしても、患者さんを丁寧にすることにはなりません。

 しかも、丁寧にしすぎで、人間味がなくなっています。

 ここで、中井久夫さんの『看護のための精神医学』(2001・医学書院)を薦められていて、いいタイミングです。

 そして、三つめは、神田橋さんも自身の失敗を隠さないこと。

 他の大家と同様ですが、すばらしい臨床家の資質の一つのようです。

 大切なことをいろいろと教えられ、また深く臨床を考えることができました。感謝します。        (2019.7 記)

     *

 2022年9月の追記です

 大切なことがいっぱい述べられている本ですね。

 早いうちに再読をしなくっちゃあ、と思います。         (2022.9 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

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 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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西丸四方『彷徨記-狂気を担って』1991・批評社-時代に流されない真摯な精神科医に学ぶ

2025年02月19日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 西丸四方さんの『彷徨記-狂気を担って』(1991・批評社)を再読しました。

 西丸さんはドイツの伝統的な精神医学であるシュナイダーさんやブロイアーさん、ヤスパースさんなどの本を翻訳されたかたで、松沢病院や信州大学病院などで精神科臨床にあたられたかた。

 その見識と実践はすごいです。

 偉い先生なのですが、飾りが全然なくて、いつも本音で語られている印象で、そのざっくばらんさは魅力です。

 幻聴についての考察など、オリジナルな発想で、とても興味深い検討がなされていて、じーじももう少し考えてみたいと思うところが多々ありました。

 また、精神科臨床の実践がとてもていねいで思わずうなってしまいます。

 トイレのたれ流しで、トイレットペーパーを集めてしまう患者さんについて、細やかにその日常行動を観察し、それまで誰もが気づかなかった不潔恐怖に気づき、ていねいな対策を講じた結果、患者さんの症状はなくなります。

 たんに精神病の症状だと皆があきらめていたことがらを解明するその姿に感動します。

 このような細やかで、ていねいな診療がいくつか紹介され、本当に感心させられます。

 他にも、東京裁判で東条英機の頭を叩いた大川周明さんの治療体験や精神病になった医学部の学生さんの治療経験など、西丸さんならではの経験も披露されます。

 いずれも真摯でていねいな精神科治療の実践例であり、経験の少ないじーじなどには宝の山のようです。

 こういう先達がおられることを誇りにして、少しでも近づけるよう努力していきたいと思いました。        (2019.6 記)

     *

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

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松木邦裕ほか編『精神病の精神分析的アプローチ-その実際と今日的意義』2008・金剛出版

2025年01月29日 | 精神科臨床に学ぶ

 2017年のブログです

     *

 松木邦裕・東中園聡編『精神病の精神分析的アプローチ-その実際と今日的意義』(2008・金剛出版)を再読しました。

 この本もかなり久しぶりの再読で、しかも、最初に読んだ時にはじーじの力量がとても貧弱だった時で、あまり理解をできずに終わってしまったという記憶がありました。

 今回、精神科デイケアでのボランティアも5年目に入り、以前よりは少しだけ精神病のことや精神分析的アプローチのことが理解できるかもしれないという淡い期待を持って読みました。

 しかし、やはり精神病という病いはなかなか難しい病いで、そのアプローチも並大抵のことでは難しいということを再認識させられました。

 そんな中、本書の著者らは、本当に地道な努力と患者さんとの協同作業で、一歩一歩患者さんの治療に当たっていることが読み取れます。

 今回、改めて勉強になったことはたくさんあるのですが、たとえば、精神病状態のこころの状況(これは解体・破滅不安といわれるようですが…)の理解とか、妄想の意味やそれへの対応の方法、転移と逆転移の読み取り、不安のコンテイン、その他もろもろ、です。

 これらの考え方が、具体的な事例をもとに述べられているので、じーじのような初級者でも多少は理解ができます。

 中級者であれば、さらに深く理解できるのではないかと思われます。

 現場でいろいろ経験していることと照らし合わせると、頷けることも出てきました。

 ケースが見える人は、本当にいろいろ見えて、いろいろな対応ができるんだな、と改めて感心をしました。

 少しでもそういうレベルになりたいですし、メンバーさんと協力作業ができるようになりたいものだ、とつくづく思いました。

 年寄りだからとあきらめないで、さらに少しずつでも勉強を積み重ねていこう、と思いました。       (2017 記)

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

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映画『レナードの朝』(1991)-精神神経疾患と闘う患者さんと医師らの勇気ある物語

2025年01月15日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2017年のブログです

     *

 テレビを観ていたら、たまたまBSで、有名な映画『レナードの朝』が始まりました。

 なんとなく観はじめてみたら、とても面白くて、とうとう最後まで観てしまいました。 

 この有名な映画をじーじはこれまできちんと観たことがなく(レナードさん、ごめんなさい)、今回、初めてしっかりと観させてもらいました。

 いい映画です。

 途中からは涙を浮かべながら観ていました。

 感想をひと言で述べるのは難しいです。

 いろんなことを考えながら、観ていました。

 精神科医のあり方とは?精神科看護師のあり方とは?精神科職員のあり方とは?

 そして、患者さんの回復とは?などなど。

 問いかけられているテーマは深く、重く、多層的で、答えも難しいです。

 しかし、どのようなことにせよ、患者さんに、より添う、という姿勢やこころ構えは、不可欠なのだろうと思います。

 そして、それらは、決して同情ではなく、むしろ友情のようなもののように思われます。

 そういえば、土居健郎さんや木村敏さん、中井久夫さんは、患者さんへの尊敬の念が大切だ、とよく言われています。

 さらに、映画の主人公の精神科医は人見知りで未婚の中年男性で、そんな医師の孤独な生活と、一時的にせよ回復をしたレナードさんの恋愛模様とどっちが幸せなんだ、という鋭い問いかけもあります。

 回復をしたレナードさんが自立と反抗の時期を迎えて、年老いた母親を悲しませるという親子関係の課題も提起されます。

 その他、患者さんの老いの問題、夫婦の問題、などなど、投げかけられるテーマも多様で深いです。

 人生観が問われるいい映画です。

 また機会があれば、観たいと思います。        (2017?記)

     *

 2023年2月の追記です

 6年ぶりに観ました。

 あいかわらずいい映画です。

 何回観ても感動し、さまざまなことを考えさせられてしまいます。

 現実の辛さにも直面させられますが、レーナードさんの淡い恋愛と主治医のぶっきっちょな恋愛が少しだけ救いです。        (2023.2 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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中井久夫『世に棲む患者』2011・ちくま学芸文庫-ていねいな精神科治療に学ぶ

2025年01月11日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2014年ころのブログです

     *

 精神科医の中井久夫さんの『世に棲む患者』(2011・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 中井さんはじーじがもっとも尊敬と信頼をする精神科医のお一人。

 一度だけ研究会で講演をお聞きしたことがありますが、流行のパワーポイントを使わずに、黒板に板書をしてお話をされたのが、新鮮な記憶として残っています。

 本書を読むのは、単行本だった『病者と社会-中井久夫著作集第5巻』(1991・岩崎学術出版社)の時も含めると4~5回目だと思うのですが、今回も勉強になりました。

 中井さんは統合失調症の治療で有名で、また、風景構成法などでは世界的に高名な精神科医ですが、その文章はまったく偉ぶったところがなく、やさしい語り口で、しかし、その内容は深く、広く、目配りの行き届いた文章です。

 中井さんの精神科治療もおそらくは同じようにやさしくて、配慮の行き届いた治療なのだろうと想像させられます。

 今回は、統合失調症だけでなく、境界例や強迫症などにも言及をされていて、とても勉強になりました。

 特に、あらためて驚いたのは、二人の家裁調査官の先輩の研究に言及されているところ。

 一人は(名前は明記されていませんが、内容から想像をすると)以前にもご紹介をしたことのある山野保さん。

(おそらくは)山野さんの『「未練」の心理-男女の別れと日本的心性』(1987・創元社)などを中心に未練や境界性人格障害について触れています。

 そういえば、じーじが裁判所に入った時に、配属された家事事件の部屋で、山野さんを中心としたメンバーが未練や嫉妬について勉強をされていて、よくそんな話題が部屋の中で話されていたことを思い出します。

 もうお一人は佐竹洋人さん。

 佐竹さんとも一緒に仕事をさせていただいたことがありますが、佐竹さんと中井さんは佐竹・中井共編『意地の心理』(1987・創元社)というとてもいい本を出されていて、この本を読むと、未練と意地の関係について考えさせられるところが多いです。

 しかし、当時、まだまだ若造にすぎなかったじーじは、まだあまりこれらの研究のすごさが実感できない新米で、ずいぶんもったいないことをしたなと反省をしています。

 その後、仕事の中で、うらみの重要性や困難さなどを経験して、いかにこのような研究が重要であったかを、今頃になって実感しています。

 今からでも、もっともっと勉強をしていかなければなりません。           (2014?記)

       *

 2021年12月の追記です

 中井さんらが指摘をされた、甘え、うらみ、未練、意地、などの言葉は、その後、土居健郎さんの本などをさらに読みこむことで、じーじの臨床でも大切な言葉になっています。

 奥が深い世界なので、さらに勉強をしていこうと思います。          (2021.12 記)

     *

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 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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中井久夫『統合失調症の有為転変』2013・みすず書房-その2・こまやかな精神科治療に学ぶ

2025年01月08日 | 精神科臨床に学ぶ

 2017年のブログです

     * 

 中井久夫さんの『統合失調症の有為転変』(2013・みすず書房)を再読しました。

 前に読んだのは2013年秋ですから4年ぶりです(当時のブログもありますので、拙いものですが、よかったら読んでみてください)。

 いい本なので早めに再読をしようと思っていましたが、4年たってしまいました(中井さん、ごめんなさい)。

 しかし、やはりいい本です。

 中井さんの統合失調症の患者さんへの優しさが本からあふれてくるような感じで、読んでいてこちらまで優しくなれるような気がします。

 4年で自分がどれだけ成長できたのかは心もとないのですが、こういういい本を見つけて読むのも、一応、才能かもしれません。

 本の中身は、やはり中井さんの精神科診療のさまざまな工夫、丁寧な考察、そして、優しい祈りでしょうか。

 そうなんです。中井さんは患者さんに薬を出す時に、どうか効きますように、と祈るらしいです。

 すごいお医者さんです。

 あとは前回も書きましたが、絵画療法についての報告と考察。細やかでいい論文が並んでいます。

 この4年の間に、中井さんの『精神科医がものを書くとき』(2009)、『隣の病い』(2010)、『世に棲む患者』(2011、いずれも、ちくま学芸文庫)などなどを読ませていただきました(そのうちのいくつかはブログにご紹介させていただきました)。

 そんなわけで、中井さんのご本からはずいぶんと勉強をさせてもらっています。

 中井さんはいつもそうですが、実践第一で、ご自身が経験したことを丁寧に細やかに書いてくださるので、本当にとても参考になりますし、そこからまた自分の考えを深めていくことができるような気がします。

 そういう本が本当にいい本なのだろうと思います。

 今後、さらに経験を積み重ねて、考えと実践を深めたいと思います。        (2017 記)

     *

 2022年5月の追記です

 じーじも、カウンセリングが、効きますように、効きますように、ってお祈りしようっと。               (2022.5 記)

     *

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 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

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