ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

中井久夫『隣の病い』2010・ちくま学芸文庫-ていねいで温かな精神科医に学ぶ

2024年06月18日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

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 中井久夫さんの『隣の病い』(2010・ちくま学芸文庫)を再読しました。

 これもかなり久しぶりの再読。

 付箋とアンダーラインがすごいことになっているので、少し整理をしながら、しかし、またたくさんの印をつけながら、読みました。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、統合失調症の患者さんの幻覚妄想について。

 患者さんにとって、幻覚妄想はたいへんな症状ですが、しかし、発病時の表現しがたいような恐怖体験に比べれば、幻覚妄想は言語化と視覚化がなされているので、まだ耐えられやすいかもしれない、という理解をされます。卓見だと思います。

 二つめは、以下の文章。

 「いかにデータとして欲しくても、患者さんにとって意味のないことはしない」

 すごいです。当たり前のことなのですが、大学教授の言葉として、すごいと思います。

 三つめは、河合隼雄さんとの出会いの思い出。

 1969年11月の芸術療法研究会(今の芸術療法学会)に中井さんが顔を出したところ、河合隼雄さんが、当時はまだ知られていなかった箱庭療法の症例について発表をされていて、そこで意気投合をされたということで、なかなか感動的です。

 中井さんは、これは使える、と考えて、さっそく病院で手作りの箱庭を作って、試してみられたそうで、その熱意と研究心がすごいです。

 さらに、そこから中井さんの有名な風景構成法にも発展をしたといいますから、お二人の出会いは本当にすばらしいものだったと思いますし、お二人の熱意と探求心はすごいと思います。

 読んでいて、なんだかこちらにまで勇気をもらえるような、そんな気がしました。

 いい本を再読できてよかったなと思います。       (2019. 11 記)

 

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池内紀編『ちいさな桃源郷-山の雑誌アルプ傑作選』2018・中公文庫-素敵な山の雑誌を楽しむ

2024年06月18日 | 随筆を読む

 2018年のブログです

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 池内紀さんが編集した『ちいさな桃源郷-山の雑誌アルプ傑作選』(2018・中公文庫)を読みました。

 本の帯に、山河と人と生きものを小声で語りつづけた伝説の山の雑誌「アルプ」、とあります。

 雑誌「アルプ」は登山家でエッセイストの串田孫一さんが中心となって出されていたちょっとおしゃれな山の雑誌で、解説によれば、1958年(昭和33年)から1983年(昭和58年)までの25年間に300号が発刊されています。

 じーじがまだ子どもの頃から若い頃のことで、じーじにはめずらしく勉強一筋の時期であり(?)、ライブで読んだことはなかったのですが、なぜかその後、古書店や文学資料館、郷土資料館などで何回か見た記憶があります。

 本書にも、深田久弥さんや上田哲農さん、更科源蔵さん、宮本常一さん、畦地梅太郎さん、尾崎喜八さんなど、すばらしい登山家、歴史家、詩人さんなどの文章が選ばれています。

 編者の池内さんは、優秀なドイツ文学者で、すばらしい翻訳が数多くありますが、東大の先生らしからぬ、軽妙なエッセイや紀行文で知られ、最近はご存じのように、おしゃれなじーじの本の著者として有名な人です。

 ということで、とても気持ちよく、楽しく、読むことができました。

 じーじが特に気に入ったのは、やはりどさんこの更科源蔵さんや文章が美しく、大好きな深田久弥さん、そして、今回、初めて読んだのですが、北海道東部のヤウシュベツ川のことを書いている吉田元さんという作家さんでした。

 吉田さんの文章はとても美しくて興味深いもので、こういう出会いがあるので読書はやめられません。

 久しぶりに山や川に行ってみたくなりました。     (2018.10 記)

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 2023年夏の追記です

 今日のあるブログでご紹介がありましたが、北海道知床に北のアルプ美術館があります。雑誌アルプがたくさん展示されているという、小とても贅沢な美術館です。

 じーじはこの美術館の前を車で通ったことはあるのですが、いずれも時間がなくて立ち寄れませんでした。

 来年こそは、雑誌アルプの世界にゆうたりと浸りたいなあ、と思います。      (2023.8 記)

 

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