ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

氏原寛・成田善弘編『転移/逆転移-臨床の現場から』1997・人文書院-心理療法における転移・逆転移を学ぶ

2024年06月04日 | 心理療法に学ぶ

 2020年6月のブログです

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 氏原寛さんと成田善弘さんが編集された『転移/逆転移-臨床の現場から』(1997・人文書院)を久しぶりに読みました。

 中級者向けの事例中心の本ですが、理論面でもかなり高い水準の本で、じーじなどはまだまだ十分に読み込めていない論文もあります。

 2001年に購入したと思うのですが、購入の動機は若き日の藤山直樹さんと松木邦裕さんの論文があったことから。

 お二人とも、いい論文を寄せられています。

 藤山さんは、「私」の危機としての転移/逆転移、というテーマで、心理療法中の「再演」などの危機の状況の時に、どのくらい事態を読めるかの重要性などについて論じています。

 提示されている事例がすごいケースで、勉強になります。

 松木さんも、難しい事例の中で、転移の占める部分をできるだけ明確に理解していくことの大切さを論じます。

 さらに、菅佐和子さんの論文がいいです。比較的平易な文章で、率直な語りを通して、転移・逆転移について述べられています。

 そんな中で、今回、じーじが一番印象に残ったのが岡田敦さんの論文。

 岡田さんは、「転移劇」というキーワードで、転移・逆転移を事例を通して読み解きます。

 これがすごいです。

 精神分析と劇の関係については、フロイトさんから始まって、いろんなかたが述べており、岡田さんもウィニコットさんや土居健郎さん、小此木啓吾さん、北山修さんらの説を挙げて、説明されます。

 そして、心理療法の中での患者さんの「再演」をよいものに改定していくことの大切さを述べています。

 くしくも、心理療法の中での患者さんの「再演」を読む解くことの重要性が重ねて論じられていた印象を今回、感じました。

 今のじーじの問題意識がそこにあるせいでもあるでしょうし、やはり大切なポイントでもあるからだろうと思います。

 さらに勉強を続けていこうと思います。    (2020.6 記)

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 2022年春の追記です

 文中でも述べていますが、じーじの理解が不十分な状態での感想文で、理屈っぽい、わかりにくい文章になっています。

 今も理解が深まったとはいえないのですが、「再演」とは,、じーじの今の理解では、心理療法の中で、クライエントさんがご自分の感情などを言葉で表現できずに、行動で「反復」してしまうことではないかと思います(それで合っているのかなあ?、ちょっと心配。いろんなレベルでの理解があると思います、と少し逃げておきます)。

 そして、「再演」を治療者がきちんと受けとめられると、クライエントさんは少しずつ言葉でご自分の感情などを表現できて、自身の行動の「反復」に気づけるようになる、というのが、今の精神分析的な心理療法の考え方ではないかと思います(まだわかりにくい文章ですね。じーじはもっともっと勉強しなければなりません)。    (2022.4 記)

 

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北方謙三『煤煙』2006・講談社文庫-卑怯なもの、卑劣なもの、傲慢なものを許さない男の生きざまを描く

2024年06月04日 | 小説を読む

 2021年初夏のブログです

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 北方謙三さんの『煤煙』(2006・講談社文庫)を15年ぶりに読みました。

 崩れた文庫本の山をさらに崩していたら、記憶のほとんど残っていない本書を見つけてしまい、つい読んでしまいました。

 北方さんの小説は本当に久しぶり。

 若い頃、かなり熱中して読んでいたのですが、あまりに熱中しすぎたのか(?)、年を取ってからは全く読んでいませんでした(北方さん、ごめんなさい)。

 今回の出会いは少し唐突でしたが、しかし、やはりなかなかいい小説で、あっという間に読んでしましました。

 ひと言で表現をするのが、なかなか難しい小説。

 男の小説です(男女差別をするつもりはないのですが、女性には少しわかりにくい小説かもしれません)。

 あらすじは例によって書きませんが、主人公は中年の弁護士。

 弱いものを助けるというわけでもないのですが、弱いものをいたぶる権力や金持ちを許しません。徹底的にやっつけます。

 正義感というのでもありません。

 あまのじゃくといえばそうですが、そういうところがじーじの美意識に合います。

 それでも、別れた奥さんと中学生になる娘には優しいです。

 後半、自分が破滅に向かっていく予感を感じると、自分から、一見、冷たく、奥さんと娘に別れを告げます。

 孤独ですねぇ。最後は依頼主の飼っていた犬と一緒ですが…。

 しかし、これが男の人生かもしれません(?)。

 少なくとも、男の人生にとって何が大切で、何が大切でないかを考えるきっかけにはなりそうです。

 いい小説が再読できて、幸せです。     (2021.6 記)

 

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