ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

中井久夫・山口直彦『看護のための精神医学・第2版』2004・医学書院-名著と呼ばれる精神科臨床の教科書を読む

2024年06月03日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年初夏のブログです

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 中井久夫さんと山口直彦さんの『看護のための精神医学・第2版』(2004・医学書院)を読みました。

 精神医学の教科書で名著といわれている本です。

 ようやく読めました。

 看護のための、という名のとおり、精神科の看護師さんやその他のスタッフが理解しやすいようにわかりやすく書かれています。

 とはいっても、内容はかなり本格的で、初めて読むような細やかなことも書かれていて、たいへん参考になります。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、夢の働きについて。

 夢が昼間やり残したこと、こころ残りのことを処理する、と解説されていて、感心しました。

 夢の仕事について、こんなにわかりやすく書かれているのを初めて読みました。

 二つめは、うつ病になりやすい人は、能率が下がった時に、努力を倍加させることで切り抜けようとして破綻する、という説明。

 すごくわかりやすいです。

 さらには、健康人と神経症、人格障害、精神病の比較についてもとてもわかりやすい。

 また、境界性人格障害の人への治療に役に立つかもしれない多少の助言など、日ごろの行動を再確認をするための記載も数多くあって、勉強になりました。

 なんども開いて、読み返していきたい、いい本だと思いました。     (2019.6 記)

 

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井伏鱒二『徴用中のこと』2005・中公文庫-旧日本軍のシンガポール戦線に徴用された作家の声

2024年06月03日 | 随筆を読む

 2022年6月のブログです

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 井伏鱒二さんの『徴用中のこと』(2005・中公文庫)を再読する。

 井伏さんは直木賞作家であったが、1941年、太平洋戦争開戦直前に旧日本軍に徴用されて、マレー半島侵略軍の宣伝班として現地に赴く。

 いやいやながらの徴用であろうが、当時は断わることなどできない情勢。

 書く文章の大部分が軍に不採用になるような状態で、しかし、軍に過度に媚びることなく書き続ける。

 軍事体制下における小説家のあり方の一つを見る。

 やがて日本軍はシンガポールを占領、昭南市と改名して、占領政策を進める。

 アジアの人たちを米英の支配から解放する、といううたい文句は、今のロシアと一緒だ。

 そんな中で大事件が起きる。

 日本軍によるシンガポールの華僑の大虐殺。

 イギリス軍の発表で3万人、日本軍の発表でも6千人という虐殺。

 軍隊による侵略ではこういうことが起こるのは必然のようだ。

 南京大虐殺を否定する人たちがいるが、シンガポールの日本軍による虐殺事件を見ると、日本軍の侵略による虐殺事案は否定できないだろうし、表に出ない虐殺も数多くあったのだろうと思う。

 これは、ロシアによるウクライナ侵略でも事情は同じであろう。

 侵略戦争では、周りがみんな敵に見えて、敵の兵隊と一般人を見分ける余裕などないのだろうと想像する。

 侵略する側の兵士もまた怖いのだ(と思う)。

 そういう中で、国家の都合で戦争に駆り出される民衆は不幸だ。

 戦争に訴えない、民主的な国家を作りあげる努力がいかに大切であるかを思い知らされる。 

 いろいろなことを考えさせられる貴重な一冊である。     (2022.6 記)

 

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