ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

ビオン(松木邦裕ほか訳)『ビオンの臨床セミナー』2000・金剛出版

2024年06月09日 | 精神分析に学ぶ

 2018年のブログです

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 ビオンさん(というのもなんか変なのですが、ビオンと呼び捨てにするのも失礼なので、ビオンさんと呼びます)の『ビオンの臨床セミナー』(松木邦裕・祖父江典人訳、2000・金剛出版)を再読しました。

 ビオンさんのご紹介も初めてでしょうか。

 なかなか難しい本で、うまくお伝えできるか、やや心配です。

 もっとも、じーじの尊敬する藤山直樹さんでも、ビオンさんは7割くらいしか理解できていない気がする、と、ある本でおっしゃっていますので、じーじなどは1~2割がいいところかもしれません。

 本書は、ビオンさんのケース・スーパーヴィジョンを紹介している本で、なかみはなかなか深いです。

 おそらく、経験のある人ほど、学べることは多いと思いますが、じーじのような初学者にはうわべを理解するだけで精一杯、しかし、それでもそれなりに勉強になると思います。

 今回、印象に残ったことをひとつ、ふたつ。

 一つめは、ビオンさんがよくおっしゃいますが、セッションはすべて初回セッションである、ということ。

 このことは本書でも、何度も何度も繰り返し強調されています。

 同じ内容を、今日は昨日ではない、とも表現されています。

 二つめは、これも有名な言葉ですが、記憶なく、欲望なく、理解なく、という精神分析についての言葉。

 一つめとも関連しますが、今、ここで、に集中することの大切さを強調されています。

 ビオンさんは、大切なのは今、起きていること、私たちが何かできるのは現在だけ、とも述べておられます。

 三つめは、キーツさんの言葉を引かれていますが、シェイクスピアさんは確かさに性急に到達しようとせず、あいまいさに耐えられた、と述べている点。

 ここでもキーツさんが出てきて驚いたのですが、それがさらに、あのシェイクスピアさんが原典らしく、びっくりです。

 じーじは今、ようやく古本屋さんで購入したキーツさんの書簡集を読んでいる最中なのですが、さらに遅まきながらシェイクスピアさんも読まなければならないのかもしれません。

 年を取ってもどんどん忙しくなりそうで、今でもくたびれきっているじーじにはうれしい悲鳴の今日この頃です。    (2018. 11 記)

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 2021年夏の追記です

 じーじはこの時、初めてビオンさんーキーツさん-シェイクスピアさんのつながりを知ったようです。    (2021.8 記)

 

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村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』2002・新潮文庫-喪失、希望、再生を描く

2024年06月09日 | 村上春樹を読む

 2022年初夏のブログです

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 昨日のブログにかえるくんのことを書いたので、かえるくんが出てくる(!)村上春樹さんの短編集『神の子どもたちはみな踊る』(2002・新潮文庫)をかなり久しぶりに、おそらく15年ぶりくらいに読む。

 年のせいか、小説を読むスピードが遅くなってきた最近のじーじにはめずらしく、六つの短編を一日で読んでしまった。

 もったいない。

 再読が遅くなってしまったのは、この短編集の中で、じーじが一番好きな「かえるくん、東京を救う」のあらすじをなんとなく覚えていたせいだが、他の短編はまったく中身を忘れていた。

 昔、飲み会で、この本の話が偶然出て、同僚の若い女の子が、わたしは「蜂蜜パイ」が好きです、といい、じーじは、「蜂蜜パイ」はたしか淋しいくまさんのお話だったよな、そういうお話が好きなんだ、ふーん、という程度に聞いていたが、今回読み返してみると、すごい恋愛小説でびっくりした。

 あの子はこんなすごい恋愛小説が好きだったんだ、と今さらながらに見直したが(?)、じーじの記憶がまったく当てにならないことを改めて想い知らされてしまった。

 他の「UFОが釧路に降りる」「アイロンのある風景」「神の子どもたちはみな踊る」「タイランド」の四作もすばらしい。

 いずれも、例によって、あらすじは書かないが、生きるうえでの偽善、喪失、断念、希望、再生、などなどが、一見軽妙な文章の中で深く描かれている印象を受ける。

 読み手の人生と相まって、いくらでも広がりと深まりを感じさせてくれるのではなかろうか。

 今ごろ褒めるのもなんだが、いい短編集だ。

 今度はもっと早めに再読をしたい。     (2022.6 記)

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 2023年5月の追記です

 本書の「蜂蜜パイ」が好きだという女の子が神田橋條治さんの大フアンで、神田橋さんの研究会で自分のケースのスーパーヴィジョンをしてもらったことがあるという。 

 勇気があるというか、うらやましいというか、すごいお話で、優秀な後輩の成長が楽しみだ。     (2023.5 記)

 

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