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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談、研究しています

相田信男『実践・精神分析的精神療法-個人療法そして集団療法』2006・金剛出版-精神科病院での実践に学ぶ

2025年04月12日 | 精神療法に学ぶ

 2020年4月のブログです

     *

 相田信男さんの『実践・精神分析的精神療法-個人療法そして集団療法』(2006・金剛出版)を読みました。

 相田さんは精神科医で群馬県にある精神科病院の院長先生、そして慶応大学医学部の講師、さらに精神分析協会正会員というかた。

 じーじはお名前を知っている程度でしたが(相田さん、ごめんなさい)、去年秋の札幌での精神分析学会の分科会でみっちりとお話をお聞きして、すごいちからのあるかただなと驚きました。

 若手治療者のケース検討会の助言者をされたのですが、お話が的確で正確、かつわかりやすい語りで、本当に勉強になりました。

 そして、その相田さんの本を読んでみたくなり、今回、本書を読みました。

 この本もすごい本で、相田さんは正直に飾りなく、さまざまな事柄を率直に語っていらっしゃいます。

 例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。

 まずは、精神科病院での集団療法の実践。

 一見、スタッフと患者さんの普通の話し合いのように見えるのですが、そこで集団療法的な味付けをするのは、その困難さがわたしのような未熟者にも多少ともわかるので、すばらしいなあ、と感嘆させられます。

 できるところから、できることから、集団療法をやっていくという姿勢がすごいです。

 二つめは、夫婦療法の時に、ビデオの電池が切れた際のエピソード。

 それまですごい夫婦喧嘩を展開していたご夫婦が、電池交換の時だけ喧嘩が止まり、ビデオが再びまわり始めると、また激しい夫婦喧嘩が再開した事例をひいて、ビデオと治療者の似た関係を考察されます。

 少し遊びごころもあって、興味深いです。

 さらに、小此木啓吾さんとの対談は、精神分析や集団療法について、わかりやすく語られていて、勉強になります。

 いい指導者といい本に出合えて、幸せだなと思いました。          (2020.4 記) 

     *     

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com  

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西園昌久『精神療法の現場から-実践力動的精神療法-西園精神療法ゼミナール3』2011・中山書店

2025年04月07日 | 精神療法に学ぶ

 2019年5月のブログです

     *

 精神科医で精神分析家の西園昌久さんの『精神療法の現場から-実践力動的精神療法-西園精神療法ゼミナール3』(2011・中山書店)を読みました。

 おもしろかったです。

 先日、同じ西園さんの『精神療法入門-西園精神療法ゼミナール1』(2010、中山書店)を久しぶりに再読して、勉強になるところが多かったので、同じシリーズの本書を買って読みました。

 この本も比較的小さな本なのですが、症例がいっぱいで、勉強になります。

 西園さんのていねいで、親切で、的を得た精神療法の実際が読めて、すごいです。

 例によって、特に印象に残ったことを一つ、二つ。

 まずは、このところずっと書いているような気がしますが、今、ここでの体験によって、過去の記憶が書き換えられるということ。

 治療者と患者さんの今、ここでの関係で、過去の記憶が書き換えられる、ということで、心理療法の意味が強調されます。

 そして、そのために治療者に求められることは、耐えること、生き残ること、などになります(ちなみに、親も子どもとの関係で同じようなことが必要で、耐えられないで、子どもの攻撃に報復をすると虐待になってしまいます)。

 さらに、ここで重要になるのが、ユーモアや遊び。

 遊ぶことは生きることと同じで、親も子どもにとっても大切なことになります。

 二つめは、投影同一化という難しい概念。

 自分の中の悪や不安を認められないとそれを周囲に投影して、自分が攻撃されると錯覚してしまいます。

 また、そういう人たちが集まると、一人の人をスケープゴートにして排除することで、なんとか不安を減少させようとします。

 現代のいじめや戦争に通じようなお話でもあります。

 三つめが、うつと対象喪失の問題。

 うつの人はやはり対象喪失が大きなテーマであり、この視点をそらさずに見ていくことの重要性が指摘されます。

 他にも、大切なことが目白押し。

 さらに勉強をしていこうと思いました。            (2019.5 記)

     *

 2020年12月の追記です

 投影同一化という概念、とても難しいですが、大切だと思います。

 自分の中の不安や攻撃性を認められないと、それを周囲に投影して、被害的になってしまう、そういう人は多いようです。

 周囲を攻撃する前に、自分のこころの中の見たくない部分を直視することが大切になってくるようです。          (2020. 12 記)

    *

 2022年春の追記です

 今のロシアの政権を見ていると、投影同一化という概念がわかるような気がします。

 自らの内にある攻撃性や不安を自覚できずに、それを周囲の国々に投影してしまい、被害的になって、自分の国を守るためには周囲を攻撃しても当然だ、という考えに陥ってしまっている、と理解することが可能ではないかと思います。

 まずは自らの中にうごめいている攻撃性や不安を認めることが、平和へのためには重要になりそうです。            (2022.5 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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西園昌久『精神療法入門-西園精神療法ゼミナール1』2010・中山書店-確かな基本と多くの症例に学ぶ

2025年04月05日 | 精神療法に学ぶ

 2019年4月のブログです

     *

 先日、西園さんの『精神分析技法の要諦』(1999・金剛出版)を再読して、たいへん勉強になったので、こんどは同じ西園さんの『精神療法入門-西園精神療法ゼミナール1』(2010・中山書店)を再読しました。 

 この本も久しぶりの再読になってしまいましたが、「入門」とはいうものの、内容は深く、しかも、症例が豊富で、こちらもすごく勉強になりました。

 西園さんのすごさに改めて感服です。

 今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、記憶の書き換え。

 治療者との良い関係が、患者さんの過去の記憶をたぐり寄せて、過去の記憶が書き換えられたり、修正をされるということ。

 家庭裁判所の面接でも経験があるのですが、こういう不思議なことが起こります。

 いい面接ができると、そのいい関係が過去の記憶を書き換えるということで、ここに心理療法の存在意義の一つがありそうですし、大切な仕事になりそうです。

 よく考えるとすごいことで、過去の親子関係や人間関係に悩んでいる人にとっては、貴重な機会になるのではないかと思います。

 二つめは、治療者の安定の問題。

 これはいろいろな人が述べていることですが、患者さんが不安や怒り、攻撃、見下しなどなど、否定的な感情を持ち込みますので、治療者はそれらを受けとめなくてはならないということ。

 治療者が生き残ること、などという表現がなされますが、大切なポイントだと改めて確認しました。

 三つめは、あいさつの問題。

 平凡なことですが、丁寧なあいさつについて、哲学の例も引かれて、その大切さや重要さを説明されています。

 下坂幸三さんも強調をされていますが、普通の、しかし、丁寧なあいさつ、そういうことに象徴されるような人間関係の大切さが説かれています。

 小さな本ですが、大きくて、豊かなことを教えてくれる「入門」書です。          (2019.4 記)

     *

 2022年5月の追記です

 記憶というのは、現在の感情に色づけられるので、現在の感情によって記憶も変わるようです。

 そういえば、子どもの頃の記憶や新婚時代の記憶も変わりますよね。

 記憶が少しでも良く変われば、クライエントさんの大きな不安も、少しだけ小さくなるかもしれませんね。          (2022.5 記)

     *

 2025年4月の追記です

 例えば、「毒親」と呼ばれる親ごさんの問題。

 今の自分のきつい状況は、親のせいだ、と考えれば、「毒親」ということになってしまうのでしょうが、今の状況に少しだけでもゆとりができれば、あるいは、ひどい親だったけど、少しだけいい時もあったな、とか、親もたいへんな状況で余裕がなかったのかもしれないな、などと思えるようになるのかもしれないな、と考えたりします。

 今の状況や感情による記憶の書き換えということで、「毒親」という記憶との和解が可能になるのかもしれません。         (2025.4 記)

     *     

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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大平健『顔をなくした女-<わたし>探しの精神病理』1997・岩波書店-「わたし」とは?

2025年04月02日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 大平健さんの『顔をなくした女-<わたし>探しの精神病理』(1997・岩波書店)を再読しました。

 大平さんの『豊かさの精神病理』や『やさしさの精神病理』シリーズの一冊、精神科臨床での丁寧な面接風景が描かれます。

 こういう面接をしてみたいな、と思いますし、こういう場面を描写してみたいな、と思いますが、まだまだ力不足です。

 今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 まずは、表題作の、顔をなくした女。

 兄嫁への恨みから発病をした女性、顔がない、と訴えます。

 面接を重ねるうちに、兄嫁より家を継がない兄への恨みが判明しますが、兄にあわせる、顔がない、こともわかります。

 ミステリアスな患者さんの訴えが、精神科面接で少しずつ明らかになっていく様子がすごいです。

 もう一つは、多重人格の女性。

 当時はまだ日本における多重人格の、流行前、の時期ですが、大平さんの面接は慎重で、かつ、丁寧で、感動的です。

 こちらも面接を重ねるうちに、少しずつ出現する人格が減少していき、強い抑圧の結果、人格が分裂せざるをえなかった女性の悲劇が判明します。

 粘りづよく、患者さんをあくまでも大切にして、寄り添っていく大平さんはすごいの一言です。

 まるで推理小説を読むような、見事な治療ですが、やはり患者さんへの愛と尊敬が根本にあることがよくわかります。

 そういう臨床家に少しでも近づけるよう、じーじも謙虚に研鑽を続けようと思います。             (2019.6 記)

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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大平健『診療室にきた赤ずきん-物語療法の世界』1994・早川書房-童話と物語のちからに学ぶ

2025年03月29日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 大平健さんの『診療室にきた赤ずきん-物語療法の世界』(1994・早川書房)を再読しました。

 この本も久しぶり、本棚の隅に隠れていたのを見つけてしまいました。 

 何種類かの付箋とアンダーラインがあって、少しだけ内容にも記憶がありましたが、今回もなぜか(?)新鮮な気持ちで読めました。

 今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、ねむり姫の童話。

 不登校になった真面目な女の子に、大平さんさんはねむり姫の童話をお話します。

 いろいろあって、女の子はしばらく休学し、その後、登校を再開します。

 大平さんは、親にできることの限界を指摘し、子どもは親から自立する時、外からやってくる他人の助けが必要になることを説明します。

 二つめは、三年ねたろうの童話。

 ひきこもりになってしまった青年に、大平さんは三年ねたろうの童話をお話します。

 人が新しい人生を生きるためには、時に内省の時期が必要と説明します。

 こんな調子で、いろいろな童話がお話しされます。

 加えて、大切だと思われたことは、患者さんが安心できる物語を提示することの大切さ。

 適切な物語を、少しのユーモアを交えて提示できる時に、患者さんは物語を納得して、新しい生きる力を獲得できるようです。

 そして、安心できる物語、それは患者さんだけでなく、周囲の者や治療者までにも力を与えてくれるようです。           (2019.5 記)

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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大平健『豊かさの精神病理』1990・岩波新書-豊かさややさしさの精神病理を考える

2025年03月27日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 大平健さんの『豊かさの精神病理』(1990・岩波新書)を再読しました。

 大平さんの豊かさややさしさの精神病理を扱ったシリーズの最初の本で、久しぶりの再読です。

 1990年の本ですから、バブル崩壊前の日本人が成金で大騒ぎをしていた時代。

 精神科には時代を先取りしたファッションなどのモノ重視の新しいタイプの病いが出現していたようで、大平さんはそれらの人々の悩みに真摯に向き合っています。

 その面接の様子はまことに見事で、患者さんに丁寧に寄り添い、そして、彼らが自ら回答を見つけ出せるように細やかに援助をされます。

 その風景描写がまことにすごくて、その後、じーじは同じような報告書を書こうと四苦八苦した思い出があります。

 大平さんは彼らを、モノ語りの人々、と名づけています。

 ブランドもののファッション、グッズ、学校、ペット、などなどに熱中し、一見、悩みと無関係の顔をして生きています。

 しかし、そういう彼らが、何らかの変調をきたし、精神科に訪れます。

 大平さんの見立てでは、それらは、消毒済みの人づきあい、のためのものではないか、という仮説を立てておられます。

 生身の人づきあい、を避けた、新しい対人関係。まさに卓見です。

 時代はバブルを経て、一億総中流化、さらに、正規と非正規、貧困の常態化の時代となっています。

 しかし、大平さんの描く、モノ語りの人々、豊かさの(幻想にいる)精神病理の人々は今も同じようにいます。

 そして、さらには、それらの異常さを感じとって将来に漠然と不安を抱える人々も多くいます。

 人や社会を丁寧に視ることのできる精神科医の報告と提言は今もたいへん貴重です。

 さらに勉強をしていこうと思います。         (2019.6 記)

     *

 2023年5月の追記です

 豊かさの精神病理、と聞くと、じーじは例のマイナンバーカードの2万ポイント付与問題を思い出します。

 豊かさがこころの豊かさとはならずに、こころの貧しさ、卑しさに見えてしまいます。 

 実際に生活が苦しくなっている実態の反映でもあるのでしょうが…。          (2023.5 記)

     *

 同日の追記です

 中国でも事態は同じようです。

 生活水準は昔よりずいぶん向上しているようですが、コロナをめぐる混乱や自由を求める民衆と国家権力による弾圧などの問題を見ていると、豊かさがこころの豊かさになっていない様子がうかがえます。

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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大平健『純愛時代』2000・岩波新書-ていねいな精神科医の面接風景に学ぶ

2025年03月25日 | 精神療法に学ぶ

 たぶん2014年ころのブログです

     *  

 大平健さんの『純愛時代』(2000・岩波新書)を再読しました。

 『豊かさの精神病理』(1990)、『やさしさの精神病理』(1995)に続く、大平さんによる岩波新書の精神医学三部作の一冊。

 大平さんはあの有名な土居健郎さんのお弟子さんの精神科医ですが、その面接風景は確かです。

 本書は岩波新書らしからぬ(?)、くだけておしゃれな(?)題名ですが、内容はしっかりしていて、読みごたえがあります。

 どの章も、大平さんの、おそらくはふだんどおりの、ていねいな精神科臨床の面接風景を描写されているのだろうと思います。

 今回、じーじが特に印象に残ったのが、第3章の「マーガレットのある部屋」という文章。

 映画のクレーマークレーマーそっくりのストーリーで、奥さんに逃げられただんなさんと子どもの奮闘記です。

 そこに若い保母さんの少しだけ職業を超えた愛情がからみ、事態が複雑になります。

 だんなさんのがんばりの甲斐もなく、離婚裁判で子どもは奥さんに奪われ、だんなさんは疲れ果てて、発病します。

 保母さんに精神科病院に連れてこられただんなさんが、大平さんとの面接の中で少しずつ状況や事態を理解していきます。

 その過程はとてもていねいで、精神医学的にも適切なようです。

 やがて、だんなさんは自ら、もとの奥さんへの「未練」や「うらみ」や「意地」に気づきます。

 さらには、保母さんとの愛情にもきちんと向き合えるようになって、自分らしく出発するところで話は終わります。

 人が人との関わりあいの中で、自分らしさを取り戻していくという過程がていねいに描かれていて、感動的です。

 他にも、「透明な膜に包まれて」とか、「ろ過された想い」「天使の仕業」などなど、興味深いお話が満載です。

 大平さんの症例報告は本当にドラマのようですごいです。

 じーじも少しでも見習えるよう、これからもていねいな面接をしていきたいと思います。            (2014?記)

     *

 2020年11月の追記です

 未練、うらみ、意地、といえば、じーじが裁判所に入って調査官補の時に指導官だった山野保さんの研究テーマでした。

 部屋の先輩たちと熱く議論をしていた山野さんを思い出します。

 その成果は、『「うらみ」の心理』や『「未練」の心理』、『「意地」の構造』、さらには、中井久夫さんらとの共著である『「意地」の心理』(いずれも創元社)などといった本になっています。

 じーじも、もっともっと勉強しなければなりません。           (2020. 11 記)

     *

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

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 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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大平健『やさしさの精神病理』1995・岩波新書-ていねいな精神科臨床の面接風景に学ぶ

2025年03月24日 | 精神療法に学ぶ

 たぶん2014年ころのブログです

     *  

 久しぶりに精神科医の大平健さんの『やさしさの精神病理』(1995・岩波新書)を読んでみました(岩波新書ですよ!)。

 たぶん10何年ぶりです(大平さん、ごめんなさい)。

 40歳を過ぎたころ、なんとなく臨床に行き詰った感じで悩んでいて、家族療法学会などに入って勉強を始めたりしていたのですが、そんな時に大平さんの『豊かさの精神病理』(1990・岩波新書)を読んで、その症例の書き方に感心をしました。

 先輩から、報告書の事例は、ドラマを見ているように書きなさい、と言われていたのですが、それを実践している例をそこに見つけてびっくりしました。

 本書はその姉妹編ですが、やはり症例の紹介の仕方が秀逸です。

 もちろん、面接がうまくできていないと、わかりやすい報告はできないのですが、それにしてもうまいです。

 目の前で大平さんと患者さんのやり取りが展開しているかのような感じです。

 面接もお上手ですし、その描写もお見事です。

 以来、じーじも、少しでも大平さんのような文章を書きたいと努力してきました。

 ちょうどその頃、家族療法学会で、面接の逐語録をていねいに検討する研究が流行っていたこともあって、丁寧な事例報告を書くことに熱中して頑張った記憶があります。

 あまりに細かい報告書を書いて裁判官に嫌がられたこともありました(裁判官さん、ごめんなさい)。

 しかし、そのおかげで(?)、少しはましな臨床家になってきたのかもしれません。

 若気の至りでしたが、多少の回り道は人生の常です。

 いずれにせよ、なつかしい、いい本を、久しぶりに読めました。           (2014?)

     *

 2020年11月の追記です

 まだ調査官をやっている時に書いたブログで、報告書のことが話題になっています。

 その後、臨床心理士になって、より面接が重要になっていて、いま、ここで、の双方の感情の動きを大切にしているような気がします。              (2020. 11 記)

     *

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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土居健郎『臨床精神医学の方法』2009・岩崎学術出版社-冷静な「熱さ」に深い理解の原点を見る

2025年03月13日 | 精神療法に学ぶ

 2018年のブログです

     * 

 精神科医で精神分析家の土居健郎さんの『臨床精神医学の方法』(2009・岩崎学術出版社)を再読しました。

 精神科デイケアのボランティアの合間に読んでいたら、面白くてやめられなくなり、メンバーさんそっちのけで(?)読んでしまいました(メンバーさん、ごめんなさい)。

 久しぶりの再読で、あいかわらず、中身は覚えておらず、新鮮な気持ちで読んでしまいましたが、土居さんの晩年の論文と講演録からなっています。

 特に、2007年の講演は、土居さんが講演としてはめずらしく症例とその治療体験をいくつもご紹介され、そのいずれもがとても感動的です。

 指定討論者の藤山直樹さんが、土居先生は(面接の場で)ものすごく生きている、と感想を述べられていますが、その感想がすごく印象的です。

 土居さんの嘘のない、正直な生き方のそのすごさが患者さんに伝わり、治療になるのだろうと思いました。

 心理臨床の技術を学ぶことももちろん大切なのですが、患者さんに臨む決意とか思いとか、そういった治療者の姿勢がやはり大切なのだろうと、再認識させられました。

 今回、もう一つ、気がついたのが、エヴィデンスに触れた箇所。

 土居さんは、感じたことこそがエヴィデンス、と述べ、治療関係とそこで起こる変化の中にこそエヴィデンスはある、と言い切っておられます。

 エヴィデンスでおろおろしているじーじなどには、気持ちのいいくらいの覚悟だと思いました。

 転移や逆転移の中にこそひとつの真実があることを肝に銘記して、今後の臨床に臨みたいと、こころを新たに思いました。           (2018 記)

     *

 2020年冬の追記です  

 じーじにしては早めの再読となりました。

 今回は、土居さんの正直さということが印象に残りました。

 失敗した症例もきちんと提示し、冷静に検討されます。

 大家はみなさんそうですが、正直さということが大切なんだなと痛感します。

 いい経験をさせていただきました。            (2020.1 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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土居健郎『漱石文学における「甘え」の研究』1972・角川文庫-漱石文学を精神分析する

2025年03月11日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 土居健郎さんの『漱石文学における「甘え」の研究』(1972・角川文庫)を再読しました。

 この本もかなり久しぶり。

 土居さんの『漱石の心的世界』(1969・至文堂)という本が文庫本になったもので、当時の定価が180円(!)という小さな本。

 じーじはだいぶ前にこの本を知り、どうしても読みたくて、古本屋さんでやっと見つけて読んだのですが、今読んでもやはり読みごたえのあるいい本です。

 『坊ちゃん』や『三四郎』などの漱石さんの小説を精神分析の理解を参考にして解読していきます。

 例えば、『坊ちゃん』では、主人公と清が互いに「甘え」ている様子が指摘され、『明暗』でも、津田とお延が互いに「甘え」ている心理が指摘されます。すごいです。

 また、『坑夫』では主人公のアンビバレントな心理が、『行人』では精神病の心理が、『こころ』では過ちの心理などが解読されます。

 漱石さんの小説を物語として味わうだけでなく、その心的世界を理解できるという贅沢ができるいい本だと思います。

 さらに、『彼岸過迄』では、真実とは人間を自由にする、という指摘がなされ、『道草』では、世の中に片付くものなんて殆どありゃしない、というセリフが引かれるなど、土居さんは、漱石さんが小説の中で自己分析をしていた、という主張をします。

 土居さんによれば、フロイトさんとほぼ同時期に、フロイトさんのことを知らずに、漱石さんは深い自己洞察の作業をしていた、と指摘されます。

 漱石さんの小説をさらに深く味わい、理解する手助けになるいい本だと思います。         (2019. 7 記)

     *

 2022年夏の追記です

 今ごろ気がついたのですが、『道草』の、世の中に片付くものなんて殆どありゃしない、というセリフは、わからないことに耐えること、に関係がありそうですね。         (2019 記) 

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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成田善弘『新訂増補・精神療法の第一歩』2007・金剛出版-成田さんの名著を再読する

2025年03月05日 | 精神療法に学ぶ

 2022年3月のブログです

     *

 精神科医で精神療法家の成田善弘さんの『新訂増補・精神療法の第一歩』(2007・金剛出版)を再読する。

 これもかなり久しぶり(成田さん、ごめんなさい)。

 しかも、感想文は初めて、たぶん(?)。

 成田さんのデビュー作である『精神科選書・精神療法の第一歩』(1981・診療新社)の改訂版だが、ご自分の文章への反省と思索がとても鋭く、びっくりしてしまう。

 大家はみなそうだが、本当にすごいと思う。

 今回の再読は、じーじの最近の研究テーマ(?)の一つである、わからないことに耐えること、について、成田さんが何か書いていないかな?と探索することだったが、やはりあった。

「すぐには答の出ないのがあたりまえなのだと思って、問を問のままに、多義的な可能性を孕んだままにしておこう。すぐに結論を出さず、曖昧なことを曖昧なままに、わからないことをわからないままにしておくことができることが、精神療法家の大切な能力の一つであるから」

 どうです?すごいでしょう。

 他にも、聴くことと聴かないこと、クライエントさんの言葉の意味を明確にしていくこと、「絶対」という言葉の危なさ、治療構造の大切さ(時間、空間、役割など)、電話についての対応、などなど、心理療法家にとっても重要な事柄が目白押しだ。

 今回は、大切に、大切に、読ませていただいた。

 今日からの心理面接に少しでも生かしていきたいと思う。         (2022.3 記)

     *

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 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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斎藤環『家族の痕跡-いちばん最後に残るもの』2010・ちくま文庫-家族のちからを考える

2025年02月27日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 斎藤環さんの『家族の痕跡-いちばん最後に残るもの』(2010・ちくま文庫)を再読しました。

 家族のちからについての鋭い考察で、良くも悪くもちからのある家族の存在を再確認させられます。

 例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、ひきこもりの家族にも見られるダブルバインドのコミュニケーション。

 言葉と表情とで違うメッセージが発せられるダブルバインドは統合失調症の家族に多いとされますが、ひきこもりの家族にも見られ、治療的にはダブルバインドをなくする方向がいいと述べられます。頷けます。

 これに関連して、コミュニケーションとは、情報の伝達ではなく、情緒を伝えること、ということも述べられます。

 二つめは、臨床家が扱う記憶というのは、事実ではなく、心的現実や幻想である、という主張。

 これも大切な視点だと思います。

 三つめは、世間というもののちから。

 こころの病いになる方に世間のちからが悪く作用しがち、と述べます。

 そして、世間の目に左右されない「自明性」はプレエディパルな二者関係の世界で形成され、思春期や成人後もその「自明性」の空間は機能し、家族はその器の一つである、と述べます。

 なかなか難しいですが、家族の大切さをうまく説明している文章だと思います。

 さらには、家族が世間の目に右往左往しない強さも必要でしょう。

 家族のちからという視点をさらに意識しながら、今後の臨床にあたりたいと思いました。         (2019.9 記)

     *

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

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大平健『食の精神病理』2003・光文社新書-拒食、過食、孤食と「二人の自分」を考える

2025年02月03日 | 精神療法に学ぶ

 2024年2月のブログです

     *

 精神科医である大平健さんの『食の精神病理』(2003・光文社新書)を再読する。

 先日の能登半島地震で崩れた本棚の本の中から発掘した(?)一冊。

 ずっと読みたかったが、出版社品切れで、古本屋さんでも見つからなかった本。

 その本を、実は20年前のじーじが購入して、読んでいたらしい(?)。

 じーじ、すごい(!)。すっかり忘れていた(!)。

 購入していたことを忘れていたくらいだから、中身も当然、忘れていた(!)。

 新鮮に読ませてもらう。じーじの特権だ(!)。

 「食」に関する大平さんのさまざまな考察が、童話や昔話を例に挙げて並ぶ。

 すごく刺激的だ。

 あの童話がこう読めるのか、あの昔話はこんな意味があるのか、とびっくりさせられる。

 そこから、現代の拒食や過食の考察につながり、孤食という社会現象の理解に至る。

 大平さんの著書『豊かさの精神病理』や『顔をなくした女』などとの関連も明示されて、わかりやすい。

 大平さんはさらに、これらの先に、「本当の自分」と「身体の自分」に別れてしまっているらしい「二人の自分」について考える。

 そして、それらと新型うつとのつながりも考察する。

 その治療の一端が、早寝早起きというありふれたことであるという指摘は、楽しい。

 楽しく読めて、いろいろと考えさせられる良書だと思う。         (2024.2 記)  

     *

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成田善弘『精神療法面接の多面性-学ぶこと、伝えること』2010・金剛出版-真摯な精神療法家に学ぶ

2025年02月02日 | 精神療法に学ぶ

 2019年のブログです

     *

 精神科医で精神療法家の成田善弘さんの『精神療法面接の多面性-学ぶこと、伝えること』(2010・金剛出版)を再読しました。

 この本も何回目かの再読で、付箋とアンダーラインが賑やかです。

 しかも、忘れっぽさには自信のあるじーじが、めずらしくところどころ読んだ記憶が残っていてうれしくなりました(?)(自慢になりませんね)。

 例によって、印象に残ったところを一つ、二つ。

 一つめは、精神分析について語っているところ。

 成田さんは、治療が簡易な精神療法で済むならそれでいいし、患者さんのためにもそうすべきとしながらも、精神分析の魅力について、当初、予想もしなかったことを患者と治療者の双方が知ることになる点にある、と述べます。

 精神分析をすることで、患者さんがより深く、自己と他者の関係を知ることになる、と説明されていらっしゃいますが、本当にそう感じます。

 じーじの行なっている精神分析的心理療法では、それほど深い展開にはならないのかもしれませんが、それに近い貴重な体験を積んでいきたいと思いました。

 もう一つは、治療から援助関係への変化ということについて。

 成田さんはいろいろな精神療法を行なっているうちに、治療をするというより、患者さんが一所懸命に努力していることを援助するという姿勢に自身が変わってきた、と述べます。

 上から目線の治療ではなく、患者さんとの協働関係、患者さんの頑張りを援助するという感じがいいようです。

 成田さんの患者さんにより添う姿勢が伝わってきました。

 また、本書では書評も取り上げられていて、じーじがブログでご紹介した精神科医で精神療法家の下坂幸三さんの『フロイト再考』や精神科医で遊戯療法家の山中康裕さんの『深奥なる心理臨床のために』なども紹介されています。 

 成田さんはこう読むのかと、大家の読み方が学べて、勉強になります。

 さらに勉強をしていこうと思いました。        (2019.6 記)

     *

 2022年5月の追記です

 改めて思うのは、心理療法はクライエントさんの自己理解、対人関係の理解の作業に根気強くつきあうことではないかということ。

 カウンセラーができることは、どんな事態が生じようとも、そういうクライエントさんの努力につきあい続けることなのかなあ、と思います。      (2022.5 記)

     *

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 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

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土居健郎『精神療法の臨床と指導』1967・医学書院-精神療法のすごさを学ぶ

2025年01月02日 | 精神療法に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

     *   

 土居健郎さんの『精神療法の臨床と指導』(1967・医学書院)を相当久しぶりに再読しました。

 じーじがこの本を購入したのが1981年、家裁調査官研修所を修了する頃。

 その後、何回か読んで感動し、付箋やアンダーラインもいっぱいですが、ここしばらくはご無沙汰でした(土居さん、ごめんなさい)。

 久しぶりに読んだ本書はやはり刺激的でした。

 今はもう大家になっている人たちの若いころのケースを土居さんが指導しているのですが、その「きれ」がすごいです。

 そういえば、土居さんは調査官研修所にも指導に来てくださり、同期生のケースを午後半日かけて指導してもらったことがありました。

 こわい先生だとお聞きしていたので(土居さん、再びごめんなさい)、ケース提供者だけでなく、周りのじーじたちも緊張をしていたことを思い出します。

 土居さんの指導を読んでいると、同じケース資料を聞きながら、どうしてこんなに仮説が浮かび、それを確認する方法を思いつくのだろう?と本当に驚嘆します。

 アメリカの精神分析の本場で修業をしてきたからといえばそれまでですが、人間に対する熱意と愛情と研究心が半端ではありません。

 人間への尊厳が研究心を深めていくのでしょうか。

 少しでも見習えたらと思います。

 今回も、付箋やアンダーラインのなかったところで、感動する箇所が何か所もありました。

 まだまだケースの読みが浅いなと痛感させられます。

 有名な、わかるということは、わからないところがわかることだ、という文章も、すでに本書で出てきています。

 ケースにおける転移関係を自覚する重要さもわかりやすく指摘されています。

 いまさらながら、よくわかりました。

 今後もさらに読み込んでいきたい本だなと思いました。         (2015?記)

     *

 2020年2月の追記です   

 久しぶりに再読をしました。

 デイケアでボランティアをしながら読んでいましたが、土居さんのケースの読みの鋭さがすごい、と思いました。

 まるで外科医がメスで切開をするような感じです。

 同じケースを読みながら、わかる人にはわかるんだな、と改めて感心させられました。

 じーじの古びた小刀もいつの日か、切れ味が良くなるのでしょうか。

 まだまだ勉強不足です。        (2020.2 記)

     *

 2021年秋の追記です

 1年半ぶりに再読をしました。じーじにしては異例の早さ(えらい!えらい!)。

 やはりすごい本です。まるで推理小説を読んでいるかのようです。

 政治家にもこういう読みの深い人がいるといいのですが…。         (2021.10 記)

     *

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