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神田橋條治『発達障害をめぐって-発想の航跡・別巻』2018・岩崎学術出版社

2024年07月09日 | 精神科臨床に学ぶ

 2018年のブログです

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 神田橋さんの『発達障害をめぐって-発想の航跡・別巻』(2018・岩崎学術出版社)を読みました。

 神田橋さんの名著『発想の航跡』の中から発達障害に関係する文章を選んだということですので、さっそく読んでみました。

 ちなみに、『発想の航跡』はとてもいい本なのですが、かなり高価で、貧乏なじーじはなかなか買えずに、たまたま家庭裁判所の図書室にあったのを借りて読んだり、コピーを取ったりしました(神田橋さん、ごめんなさい)。

 でも、本書は堂々と(?)購入しましたので、許してくださいね。

 神田橋さん流の発達障害観はどんなかな?と思って読みましたが、やはり神田橋さん(!)、発達障害は程度の差はあれ、みんなが発達障害、と言い切ります。

 そう言われてしまえば、差別も何もなく、あるのは区別だけで、教育や訓練の対象になります。

 治療者を含めて、丁寧な訓練や教育が必要になるということで、人ごとではなく、自分のこととして取り組みざるをえません。

 本書によれば、発達障害で最近、問題になっているのが、発達障害が基盤にあって、さまざまな理由から、うつ症状やパーソナリティ障害が出てきているケースだそうで、治療が難しいといいます。

 うつやパーソナリティと思って治療をしてもあまり良くならず、治療関係が悪化してしまい、よく検討をしてみると、発達の問題が絡んでいるという具合で、現場では苦労されているようです。

 そういった場合、ただ単にうつ症状だ、パーソナリティ障害だ、と言うだけでなく、もっと丁寧な診断で、今、この人に何をしたらいいのか、という診断をしていく必要があるし、それが大切だ、とおっしゃいます。

 神田橋さんの真骨頂です。

 さらに、本書の圧巻は、ケーススーパーヴィジョン。

 人と話すことができない、という主訴の女性で、神田橋さんの見立てでは、発達障害と愛着障害の人だそうです。

 丁寧なカウンセリングで少しずつ話せるようになりますが、その過程を神田橋さんが適切な質問で明確化をしていき、本当に感心させられます。

 本当にすごいなと思いますし、じーじも少しでもこんなふうになりたいなと思います。

 印象に残ったのは、カウンセリングで双方が退行をするためにはきちんとした枠を契約することが大切、というご指摘があって、本当にそうだなと思いました。

 他にも、クライエントさんにも考えてもらうこと、アイデアを出してもらうことの大切さやセルフモリタニング能力を高める工夫、クライエントさんのためになる心理検査の工夫、などなど、学ぶことが多くありました。

 さらに読み深めていきたい、いい本だな思います。     (2018. 12 記)

 


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