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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談、研究しています

伊東徹秀『北紀行-風の恋歌』1995・麦秋社-北海道を読む

2025年05月25日 | 北海道を読む

 2015年のブログです

     *

 伊東徹秀さんの『北紀行-風の恋歌』(1995・麦秋社)を再読しました。

 1995年の本ですが,帯広の古本屋さんのシールがついているので,おそらくは2000年前後に買って読んだ本だと思います。

 それでも15年ほど前になります。

 北海道の山々を歩いた紀行文が中心のエッセー集で,前回は狩場山を歩いた文章が記憶に強く残っていたのですが,今回は愛山渓から大雪山の沼や山々に入る紀行文が印象的でした。

 前に自分が歩いた道が出てきて,文章家が書くとこんなふうに描写されるんだと感動しました。

 前回も文章がうまいなと思ったのですが,今回はさらにその美しさと清冽さに感心させられました。

 本当にとてもいい文章です。

 読んでいて気持ちがよくなり,こころが洗われるような,すがすがしい感じになる文章です。

 文章でもカウンセリングができるんだなと思わせるような体験でした。

 また北海道に行きたくなりました。(2015記)

 

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小野有五『北海道 森と川からの伝言』1997・北海道新聞社-北海道の自然保護を考える

2025年05月20日 | 北海道を読む

 2020年4月のブログです

     *

 小野有五さんの『北海道 森と川からの伝言』(1997・北海道新聞社)を久しぶりに読みました。

 面白かったです。

 小野さんは当時、北大大学院の先生。専攻は地球環境科学。

 その難しそうな肩書とはうらはらに、森や植物、川などのお話をわかりやすくしてくれます。

 もともとは「北海道新聞」に週1回連載されたエッセイ。

 ミズバショウやカタクリなどの春の花のお話から始まって、北大構内のハルニレ伐採のお話や札幌の河畔林伐採のお話、さらには、士幌高原道路とナキウサギのお話、千歳川放流路のお話、などなど、だんだんと深刻なお話になってきます。

 深刻になるのは小野さんのせいではなく、住民の声を聞かずに開発(?)を進めようとするお役所のせいなのですが、住民無視、企業優先のお役所体質は今も変わりません。

 小野さんのお話は、そのような社会の中で、住民の生活を守るために必要な知識を豊富に教えてくれて、役に立ちます。

 びっくりしたのは、この本に出てくる何冊かの本。

 今となっては、この本が先だったのか、ほかの本が先だったのかは、はっきりしないのですが、幸田文さんの『木』『崩れ』や、はた万次郎さんの『ウッシーとの日々』『アブラコの朝-北海道田舎暮らし日記』などは、じーじも購入して、今も大切な本です。

 もうひとつが、ナキウサギふぁんクラブ。

 ナキウサギは、以前、北海道で山歩きをしていた時に、そのかわいい姿に何度も立ち止まったことがありましたので、ファンクラブに入ってしまいました。

 こうしてみると、小野さんだけではないのでしょうが、小野さんのようにものが見える先輩たちの影響は大きいのだろうなあ、と強く思います。

 じーじもそういう聡明な先輩たちに一歩でも近づけるよう、もっと勉強をしていこうと思います。        (2020.4 記)

  

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米村晃多郎『サイロ物語』1980・作品社-北海道の農家と大自然を描く物語たち

2025年05月12日 | 北海道を読む

 2020年4月のブログです

     *

 米村晃多郎さんの短編集『サイロ物語』(1980・作品社)を久しぶりに読みました。

 この本もだいぶ昔に帯広の古本屋さんで買ったもの。

 何回か読んではいるのですが、今回はかなり久しぶりになってしまいました(米村さん、ごめんなさい)。

 しかし、いい発見がありました!?

 なんと、あの天陽くんのモデルになった神田日勝さんをモデルにした小説があったのです(今ごろ気づいて、あった、もないのですが…)。

 日勝さんのことを昨年まではあまりよくわからずにいたので(日勝さん、ごめんなさい)、これまで読み流していたと思うのですが、今回は、えっへん!やっと気がつきました。

 日勝さんと奥さんの生活が戦後開拓農家の苦労話として、かなり詳しく描かれています。

 いい小説です。

 米村さんの文章はとても美しい日本語で、余韻が残って、心地良さを感じさせてくれます。

 他の小説もなかなか力作ぞろいで、北海道の開拓地やへき地の様子がていねいで美しい文章できちんと描かれています。

 こういう驚きがあるので、読書はやめられません。

 今年も北海道の牛さんのように、同じ本を何度も読み返していこうと思います。     (2020.4 記)

 

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鳩沢佐美夫『コタンに死す-鳩沢佐美夫作品集』1973・新人物往来社-アイヌ民族からの叫びをきく

2025年04月28日 | 北海道を読む

 2020年4月のブログです

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 アイヌ民族の作家である鳩沢佐美夫さんの『コタンに死す-鳩沢佐美夫作品集』(1973・新人物往来社)を再読しました。

 この本は20年くらい前に帯広の古本屋さんで購入したもので、一度読んだきりだったのですが(鳩沢さん、ごめんなさい)、今回、すごく久しぶりに読みました。

 1973年、じーじが大学に入った年の本ですが、内容は全く古くありません。

 それどころか、アイヌの人々への差別問題だけでなく、最近、問題になった知的障碍者の避妊手術事件などがすでに描かれていて、作者の問題意識の深さにびっくりさせられます。

 短編集ですが、じーじは作者の自伝的な小説である二つの小説が印象に残りました。

 一つはおばあちゃんとの思い出話を描いたもの。

 おばあちゃんのアイヌ民族の知恵がたくさん描かれていて、美しい小説です。

 もう一つは、戦時下での小学生の姿を描いた小説。

 アイヌ民族ゆえにだんだんと差別をされる主人公の憤りと哀しみが描かれます。

 哀しいことですが、この現実を忘れてはならないと強く思います。

 これを読んでじーじは、小学生の頃に、貧乏な子や頭の悪い子をみんなと一緒になって馬鹿にしていた自分を思い出し、申し訳なさと自分への怒りでこころがいっぱいになりました。

 鳩沢さんの文章はとても美しい日本語です。

 日本語教育を受けたのだから当然かもしれませんが、下手な日本人の作家さんより美しいです。ましてや、今の若い作家よりはずっとうまいです。

 アイヌ民族の人たちとのことだけでなく、じーじたち自らの内にあるすべての差別意識についても、深く考えていきたいと思いました。    (2020.4 記)

 

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東直己『鈴蘭』2010・角川春樹事務所-私立探偵・畝原シリーズ第8作、生きる哀しみと喜びを描く

2025年04月28日 | 北海道を読む

 2023年4月のブログです

     * 

 東直己さんの『鈴蘭』(2010・角川春樹事務所)を読む。

 私立探偵・畝原シリーズの第8作。

 生きる哀しみと喜びを描いている、と思う。

 いい小説だ。

 このところ、樋口有介さんと東直己さんの小説にはまっていて、ずっと読み続ける毎日。

 幸せな日々だ。

 主人公の畝原は、第4作の『熾火』で関わりのできたみなしごを引き取り、養女とし、さらに、長年、娘の学童保育を通じて付き合いのあった女性とその連れ子と一緒に生活をするようになる。

 娘と再婚した女性の連れ子の女の子と養女との3人の女の子の父親となって、なかなかにぎやかだ。

 第5作から第8作まで、畝原が私立探偵として関わる事件とともに、女の子たちの成長ぶりが読んでいて楽しいが、特に養女となったみなしごの成長ぶりにとても癒される。

 その子は、保護された時、虐待の跡があり、学齢期なのに言葉をまったくしゃべれず、腎臓が一つないという人身売買の被害者だったのだ。

 その子が、本当に少しずつ言葉を身につけていく様子が感動的だ。

 第8作もあらすじはあえて書かないが、生きることが下手な老人の哀しみが描かれるといってよいのかもしれない。

 悪気がないのに、迷惑をかけてしまう人生は哀しそうだ。

 しかし、急に生き方を変えられるわけもなく、哀しみは続く。

 生きることはなかなか大変だと思う。

 そんな中で出会う小さな幸せは尊い。大切にしたい。

 そんなことを描いている小説ではないかと思う。         (2023.4 記)

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坂本直行『山・原野・牧場-ある牧場の生活』1975・茗溪堂-直行さんの素敵な画文集です

2025年04月27日 | 北海道を読む

 2020年3月のブログです

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 先日、坂本直行さんの息子さんの坂本嵩さんの『開拓一家と動物たち』を読みましたので、こんどは直行さんご自身の『山・原野・牧場-ある牧場の生活』(1975・茗溪堂)を久しぶりに読みました。

 直行さんは何度もご紹介していますが、六花亭の包装紙の花の絵を描かれたかた。

 この本にもいくつかのきれいな草花の絵が描かれています。

 もっとも、直行さんが有名なのは花の絵だけではなく、山の絵もすばらしく、日高の山や利尻、大雪など数多くの山の絵を描かれていて、じーじの部屋にも直行さんの山の絵や花の絵が孫娘たちの絵と並んで(直行さん、ごめんなさい)、たくさん飾ってあります。

 本書は昭和初期に北海道の南十勝で開拓に従事した独身時代の直行さんと仲間の生活が描かれていますが、希望に燃えた若者の頑張りが読んでいて楽しいです。

 厳しい自然の中で、決して楽な開拓生活ではないのですが、青年らしい楽観的な生活が心地いいです。

 直行さんは北大の山岳部出身ですから、暇さえあれば山に行き、また、開拓地から見た美しい日高の山々の絵を描かれていて、本書は花の絵と山の絵、そして、開拓生活の絵が満載、カラーの絵もあって、直行さんファンにはまるで宝箱のような本です。

 本を読んでいると、また南十勝の農村や海岸を訪ねてみたくなります。

 今年の夏は、ぜひ南十勝の自然の中で、のんびりしたいな、と思いました。    (2020.3 記)

 

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坂本嵩『開拓一家と動物たち-北の大地に素手で立ち向かった開拓家族の生活誌』1996・朝文社-直行さん一家の開拓話

2025年04月26日 | 北海道を読む

 2020年3月のブログです

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 坂本嵩さんの『開拓一家と動物たち-北の大地に素手で立ち向かった開拓家族の生活誌』(1996・朝文社)を再読しました。

 坂本嵩さんは六花亭の包装紙の草花の絵で有名な坂本直行さんの二男さん。

 その6人兄妹の二男坊の目から見た直行さん一家の北海道十勝での開拓生活がとても魅力的に描かれます。

 魅力的といっても開拓地のこと、その生活はいろいろと我慢と苦労の多いものですが、一方で、大自然の中での素敵な生活でもあります。

 馬や牛、羊、豚、鶏などとの生活、じゃがいもやとうもろこし、ビートなどの畑作、そして、熊の恐怖。

 今から70年から80年前の十勝です。

 当然、電気もない生活。

 しかし、一家は厳しい自然の中で協力をして、開拓の生活を進めます。

 そして、豊かな自然の中で子どもたちは伸び伸びと育ちます。

 嵩少年は料理がうまかったことから、一家の料理当番をすることが多かったようで、当時の開拓地での、質素だけれども、今から見るととても豪華な数々の料理が紹介されます。

 鮭や鱒、じゃがいもやとうもろこし、そして、牛乳などで作るシチューや石狩鍋などの料理。

 栄養満点で、おいしそうです。

 その開拓地も今は大規模農家に統合されて、昔の面影はないとのこと。

 自然豊かな開拓地がなくなってしまったのは残念なことです。

 今年の夏は久しぶりに十勝の開拓地跡を訪ねてみたくなりました。    (2020.3  記)

 

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宮下奈都『羊と鋼の森』2018・文春文庫-調律師の青年のこころと魂の成長を描く

2025年04月24日 | 北海道を読む

 2018年2月のブログです

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 宮下奈都さんの『羊と鋼の森』(2018・文春文庫)を読みました。

 2016年の本屋大賞受賞作で、読むのを楽しみにしていましたが、ようやく文庫本で出ましたので、さっそく読みました。

 期待にたがわず、とてもいい小説です。

 17歳の秋、たまたますばらしい調律師と出会い、その感動のあまり、自分もそんな存在になりたいと調律師になった青年のこころと魂の成長をていねいに描いた小説です。

 あこがれの調律師だけでなく、職場の先輩調律師や女性事務員さんも、それぞれがひとくせもふたくせもありながら、主人公の純粋さと真剣に向き合ってくれます。

 主人公は、ひとことでいうと、ねくらで奥手な青年。

 北海道の山奥で育った田舎者の青年で、不安や焦りや少しの希望で胸がはち切れそうな状態。

 そんなナイーブな青年が少しずつ周囲に助けられて成長していきます。

 じーじが一番好きだった場面は、主人公のおばあちゃんが亡くなったお葬式の場面。

 大学生となって家を離れた弟が悲しみと不安に耐え切れずに森で泣き出すと、主人公も初めて大声でこころから悲しみの感情を爆発させます。

 哀しい時にこころから泣けてよかったな、とつくづく思います。

 そんなふうな、若者や人びとの人生や生き様に大切なことがらがぽつりぽつりとちりばめられていて、まるでこころの宝石箱のような小説です。

 けっして明るいだけの小説ではないですが、読む価値はあります。

 読んで考える価値もありそうです。

 いい小説に出会えたことに感謝します。        (2018.2 記) 

     *  

 同日の追記です

 2018年2月20日の「ケサランパサラン読書記-私の本棚-」さんのブログでも本書が取り上げられていて、いい文章です。ぜひご一読を。

     *

 2018年9月の追記です

 この小説は今年夏に映画が公開されましたが、撮影地が東川町など大雪山周辺で、地元ではおおいに盛り上がっていました。

 映像がとても美しいようで、ぜひ一度、観てみたいと思っています。        (2018.9 記)

 

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東直己『悲鳴』2001・角川春樹事務所-東直己さんの私立探偵・畝原シリーズの第3作です

2025年04月23日 | 北海道を読む

 2023年4月のブログです

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 東直己さんの小説『悲鳴』(2001・角川春樹事務所)を久しぶりに読む。

 このところ、樋口有介さんと東直己さんの小説にはまってしまい、ずっと読み続けている。

 この小説は、東さんの私立探偵・畝原シリーズの第3作。

 ご存じのかたもいらっしゃるかもしれないが、東さんにはススキノ探偵シリーズがあって、映画化もされて、それなりに知られているが、こちらの私立探偵・畝原シリーズも負けないくらいに面白い。

 舞台はやはり札幌。

 地元の元大手新聞の記者だったが、事件関係者の陰謀で誤認逮捕をされ、新聞社を解雇された中年男性が主人公。

 奥さんに逃げられ、小学生の女の子を育てながら、私立探偵をして生計を立てている。

 その畝原の正義感と、以前と変わらずに友情を示してくれる友人らの姿が読んでいてすがすがしい。

 しかし、仕事に関わって起きてくる事件はおどろおどろしていて、現代的な理解を超えたような事件の連続。

 一種の現代風俗小説のようでもある。

 第3作である『悲鳴』も同じ。

 あらすじは書かないが、差別、ホームレス、宗教、利権、腐敗、などなど、現代の闇を描く。

 一服の清涼剤は、畝原の一人娘と、畝原の友人の息子で、畝原の空手の弟子である青年の関わり。青春である。

 おどろおどろしい事件の中で、主人公の愚直さとユーモアが楽しい。

 読後感は悪くない。

 絶望を抱きそうにもなるが、生きてゆくこともよさそうとも思える。

 良質の小説ではないかと思う。          (2023.4 記)

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辻仁成『函館物語』1998・集英社文庫-辻仁成さんの青春時代の函館と今の函館を歩く

2025年04月22日 | 北海道を読む

 2021年2月のブログです

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 辻仁成さんの『函館物語』(1998・集英社文庫)をすごく久しぶりに読みました。

 20年ぶりくらいでしょうか。

 本棚の上のほうに重ねてあったのですが、偶然、目にとまりました。

 おもしろかったです。

 2日間で一気に読んでしまいました。

 辻さんは青春時代の4年間を函館で過ごされたそうですが、その思い出の地を散策する旅行記です。

 じつは、じーじは函館の生まれ。

 母の実家が函館にあって、そこで生まれました。

 1年ほどで旭川に引っ越したので、育った記憶はないのですが、時々、函館のじーじとばーばのところに遊びに行ったので、函館の記憶は少しだけあります。

 親戚がお寿司屋さんをやっていたので、遊びに行くと、お寿司をお腹いっぱい食べさせてもらった楽しい記憶があります。

 さて、本書、辻さんの青春時代の函館と今の(といっても、1996年当時の)函館を旅します。

 いい町ですね、函館は。

 素敵なお店や素敵な建物、素敵な風景が目白押しです。

 それらが辻さんの青春時代の思い出とあいまって、ノスタルジックな印象を残します。

 歴史のある町ですが、少しの寂寥感があるような感じもします。

 それらも含めて、いい町なのではないでしょうか。

 今年の夏は久しぶりに函館にも足をのばしたいなと思いました。    (2021.2 記)

 

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坂本直行『雪原の足あと』1965・茗溪堂-直行さんの画文集を姿勢正しく(?)読む

2025年04月21日 | 北海道を読む

 2020年4月のブログです

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 坂本直行さんの画文集『雪原の足あと』(1965・茗溪堂)を読む。

 ふだん読書の時は座椅子に寝っ転がって読んでいるので、大きな本は敬遠気味だが(直行さん、ごめんなさい)、今回は姿勢正しく直行さんの大判の本を読む。

 直行さんが原野での開墾生活をやめて、画業一本になってからの本で、山歩きの話や開墾生活の思い出が語られ、それに山や花の絵が添えられている。

 とても贅沢な本で、六花亭の包装紙で有名なきれいな花々や六花の森の売店の絵葉書などでしか見れなかったすばらしい山の絵が、大判の本の中にいっぱいだ。

 見ていると気持ちがすがすがしくなってくる。

 こころが疲れた時などには、ぜひ眺めたいと思う。

 今後は姿勢正しく(?)、直行さんの本を読んでいきたい。    (2020.4 記)

     *

 2024年春の追記です

 今も直行さんのこの本は、姿勢正しく読みたい、と思っているが、たまには寝っ転がって読んでみたい(?)、ような気もする。

 この本も文庫本で出てくれると、六花亭のおせんべい(そんなのあったかな?)をポリポリかじりながら、寝転んで読めそうだ(!)。

 山渓さん、頑張ってね(?)。  

 と、ここまで書いて、念のため、調べてみたら、去年にもう文庫本が出ていた(直行さん、山渓さん、ごめんなさい)。

 これは買うしかないね(!)。     (2024.4 記)

 

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喜多由布子『知床の少女』2007・講談社-北のじーじとばーばの知恵に学ぶ

2025年04月19日 | 北海道を読む

 2020年4月のブログです

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 喜多由布子さんの小説『知床の少女』(2007・講談社)をしばらくぶりに読みました。

 いい小説です。

 涙もろいじーじは、終わりのほうは、涙じわーんで読んでしまいました。

 高校受験に失敗をして、浪人中の女の子が主人公。

 家庭不和もあって、精神的に余裕がなくなっています。

 そんな女の子に、札幌に住むじーじが遊びに来ることをすすめます(いいじーじですね)。

 そして、じーじのはからいで知床で水産工場を営む、さくらばあ、というばーばのところに。

 そこで、働く人たちとの生活の中で、女の子は本当にだいじなことはなにかを学んでいきます。

 飾りはないけど、質素で純朴な人たち。

 厳しいけれど、こころ温かい人々とのやりとりの中で、女の子は都会では見失われている大切なものに気づいていきます。

 梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』の北海道版みたいな素敵な小説です。

 明るいだけでなく、哀しみもあるところが北海道らしいのかもしれません。

 喜多さんの文章はシンプルだけど、力強く、そして、美しい日本語で読みやすく、あっという間に読んでしまいました。

 いい小説が読めて、今、しあわせな瞬間を味わっています。

 明日からまた頑張ろうという勇気をもらえたような気がします。          (2020.4 記)

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久保俊治『羆撃ち』2012・小学館文庫-羆(くま)撃ちという生き方

2025年03月30日 | 北海道を読む

 2019年3月のブログです

     *

 久保俊治さんの『羆撃ち』(2012・小学館文庫)を再読しました。

 久保さんは、先日、ご紹介をした竹田津実さんの『獣医師の森への訪問者たち』(2018・集英社文庫)に出てきた猟師さんで、じーじはこのお二人が知り合いとは全く知らずに、お二人の本を別々に愛読してきており、本当にびっくりしました。

 竹田津さんの本を読んでいるうちに、この名作をもう一度味わってみたくなり、さっそく読んでみました。

 椎名誠さんが本書の帯に、その研ぎ澄まされた感性に羨望する、と書いておられますが、クマを追い詰め、クマと真剣勝負をする久保さんとクマとの死闘は本当にすごい!の一言につきます。

 命がけという言葉が大げさではない世界で、クマも久保さんも全力で闘います。

 その緊張感は、人間も動物の一員なんだなと思わせるものがあります。

 久保さんは途中からフチという名のアイヌ犬を育てて、狩猟の相棒とします。

 このフチと久保さんのやりとりがまたすばらしい世界です。

 詳しいことは書きませんが、両者の信頼関係の美しさには本当に羨望します。

 人間の世界でも、こんなに美しい関係はめったに見られないかもしれません。

 北海道の大地を舞台にしたすばらしい物語を味わうことができました。

 今年の夏は、この物語の舞台となった標津の森と山に行ってみたいなと思います。            (2019.3 記)

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竹田津実『獣医師の森への訪問者たち』2018・集英社文庫-北海道を読む

2025年03月29日 | 北海道を読む

 2019年2月のブログです

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 竹田津実さんの『獣医師の森への訪問者たち』(2018・集英社文庫)を読みました。

 竹田津さんの本を読むのは久しぶり(竹田津さん、ごめんなさい)(なお、前に『北の大地から』などのブログを書いていますので、よかったら読んでみてください)。

 さて本書、すごく面白かったです(面白すぎて、つい笑ってしまうので、電車の中で読むのは要注意かもしれません)。

 竹田津さんが獣医師として北海道の小清水町に赴任してからの仲間や後輩たちとの活躍が描かれます。

 しかし、主役は北海道の野生の動物たち。

 キタキツネ、エゾリス(キタリス)、モモンガ、シマフクロウ、などなど。

 少し小さめですが(文庫本ですからね)、動物たちの写真もかわいいですし、竹田津家の子どもさんたちと動物の交流もかわいいです。

 小清水町は知床の入り口にある町で、じーじも毎年のように小清水町の道の駅を利用しますが、こんなに自然が豊かで、いろいろな動物たちがいるとは気づきませんでした、

 竹田津さんのお仲間の中には、動物たちと同じような存在になって、動物たちと普通におつきあいをしている人たちがいて、うらやましいなあ、と思いながら読ませてもらいました。

 そして、びっくりしたのは、猟師の久保俊治さん。

 竹田津さんはお仲間たちと映画『キタキツネ物語』を作り(竹田津さんは『キタキツネ物語』の作者なんです)、久保さんはそこに猟師役で出演されたそうですが、その久保さんが名作『羆撃ち』(2012・小学館文庫)を書いた久保俊治さんのことだとわかり、その偶然に本当にびっくりしました。

 また、久保さんの猟師の体験を聞いて、竹田津さんがステン・ベルクマンの『千島紀行』(先日、ブログで紹介しました)に出てくる沢口さんという猟師を思い出すところがあり、ここもびっくり。竹田津さんを本当に身近に感じてしまいました。

 今年の夏は、またまた小清水町にもお邪魔をして、じーじも少しでも動物たちを同じような存在になるべく、年老いたただのじーじの動物になることを(?)目指そうと思いました。           (2019.2 記)
 

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佐々木譲『ユニット』2005・文春文庫-DVと犯罪被害者遺族を描く

2025年03月27日 | 北海道を読む

 2021年3月のブログです

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 佐々木譲さんの『ユニット』(2005・文春文庫)を読みました。

 すごく久しぶり。

 本棚の発掘作業をしていて(?)、偶然、見つけました(佐々木さん、ごめんなさい)。

 緊張感のある小説で、ハラハラ、ドキドキ、しながら読みました。

 年寄りの心臓には少し悪い(?)小説です。

 テーマはDVと犯罪被害者遺族。

 舞台は北海道。

 あらすじはあえて書きませんが、DV被害者とDV加害者、それに、妻子を殺された遺族とその犯人らが織りなす人間模様を綿密に描きます。

 DVの怖さと異常さ、二面性が怖いくらいに描きこまれていますし、殺人事件の遺族のうらみと憎しみ、そして、それからの離脱も描かれます。

 読んでいると、人間が怖くなると同時に、少しだけ希望も持てるかもしれません。

 人間はとても弱い存在ですが、案外捨てたもんでもないな、と思えるかもしれません。

 いい小説に再会できたことに感謝をしたいと思います。           (2021.3 記)

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