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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談、研究しています

北山修ほか編『語り・物語・精神療法』2004・日本評論社-神田橋條治さんの症例検討会ライブがすごいです

2025年05月16日 | 心理療法に学ぶ

 2023年5月のブログです

     *

 北山修・黒木俊秀さん編著の『語り・物語・精神療法』(2004・日本評論社)を久しぶりに再読する。

 2002年の第9回日本語臨床研究会の記録。

 日本語臨床研究会は、北山修さんや藤山直樹さんなどが参加されていた精神分析を日本語で研究しようという勉強会で、じーじも何回か参加させてもらったことがあるが、型にとらわれない、自由でなかなか刺激的な研究会だった。

 何回目だったかは忘れたが、甲南大学で行われた時に、中井久夫さんが講演をされたが、以前どこかにも書いたが、パワーポイントがお嫌いだという中井さんが、黒板にいっぱい板書をされてお話をされたのが印象的だったのを覚えている。

 今回もいろいろなプログラムがのっているが、圧巻なのが神田橋條治さんの症例検討会でも公開スーパーヴィジョン。

 すごい!のひと言だ。

 若手臨床家の解離の症例を神田橋さんがスーパーヴィジョンをするが、そのていねいな指導ぶりがすばらしい。

 治療者が考えたことや連想をしたことをていねいになぞり、それが患者との関係でどんなふうに展開しているのかを、一緒に検討する。

 神田橋さんの質問や連想や感想で、治療者の記憶や連想がすごく豊かになっていくさまがすばらしい。

 総じて、患者さんの様子をポジティブにとらえていく構えがすごいなあ、と感心させられる。

 やはり神田橋さんはただものではない、と思ってしまう。

 連休中にいいものを読ませていただいて、とても楽しい連休になった。          (2023.5 記)

     *    

 2025年5月の追記です

 これも前にどこかに書いたが(すみません。年寄りなもので、何度も繰り返してしまうようになってきました。大目に見てやってください)、確か何回目かの日本語臨床研究会で河合隼雄さんが講演をされたことがあった。

 河合さんは、いつものように、大切なお話を面白おかしく話をされていたが、途中で突然、時間なので、今日はこの辺で、と話を終えて、さっさと演壇から降りてしまった。

 じーじは、びっくりしたが、同時に、本物の臨床家というのは、本当に時間をきちんと守るんだ、と感心した記憶がある。

 河合さんに、臨床家が時間を守ることの大切さを教えていただいた貴重な経験だった。      

 その後、時間をきちんと守れるかどうかが、じーじの臨床家の力を見る基準の一つになっている。    (2025.5 記)

     * 

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com  

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北山修ほか編『日本語臨床3「甘え」について考える』1999・星和書店-「甘え」の臨床に学ぶ

2025年05月14日 | 心理療法に学ぶ

 2020年5月のブログです

     *

 北山修ほか編『日本語臨床3「甘え」について考える』(1999・星和書店)をかなり久しぶりに読みました。

 土居さんの「甘え」理論を1997年の第4回日本語臨床研究会で討議をしたあとの論文集ですが、読むのはなぜか久しぶりになってしまいました(土居さん、北山さん、ごめんなさい)。

 例によって、付箋やアンダーラインがあるものの、記憶がほとんどなく、なんと藤山直樹さんも論文を書いていて、ラッキーでした(一回読んだはずなのに、ラッキーもないのですが…。藤山さん、ごめんなさい)。

 言い訳になりますが、人はやはりその時の実力に応じた読書しかできないのですね。

 さて、今回の実力(?)で、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つは、小此木啓吾さんの論文。

 小此木さんは土居さんより10歳後輩らしいのですが、土居さんの影響で小此木さんも精神分析を勉強をされたとのことで、「甘え」理論についても、土居さんのお人柄をからめて、ご紹介され、わかりやすいです。

 共通の症例の治療経験も述べられ、深い思索が示されています。

 次は、藤山さん。

 藤山さんは、「甘え」と「はにかみ」について、わかりやすく述べられています。

 提示された症例が、藤山さんの他の論文でも取り上げられていることに、途中で気づき、忘れん坊のじーじとしてはめずらしく症例を記憶していることに、感動しました(?)。

 藤山さんは、「はにかみ」が生じる時に、「甘え」が自覚できると述べられており、さらに、それらと「恥」や「秘密」との関係ついても論じていて、とてもいい論文です。

 それにしても、日本語臨床研究会のレベルの高さに驚きます。

 じーじはもうしばらく後の会から何回か参加させてもらったのですが、その頃も刺激的な議論がなされていた記憶があります。

 さらに、経験と思索を深めたいと思います。           (2020.5 記)

     *     

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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山中康裕『こころと精神のはざまで』2005・金剛出版-こどもごころを残したすてきな臨床家に学ぶ

2025年05月13日 | 心理療法に学ぶ

 2020年5月のブログです

     *

 精神科医で遊戯療法家の山中康裕さんの『こころと精神のはざまで』(2005・金剛出版)を久しぶりに読みました。

 このところ、BS放送大学の小野けい子先生の「イメージと心理療法」を見ていて、ゲストで登場される山中さんの切れのいい、しかし、温かみとユーモアのあるお話をお聞きして、やはりすごい先生だな、と思い、何冊かの本を読み返しています。

 本書は、雑誌「臨床心理学」に、河合隼雄さんの後を受けて連載されたエッセイというか、論文で、山中さんの学術的な経験が本音でどんどんと語られます。

 バウムテストや絵画療法の思い出、ひきこもりの「内閉論」、こころの「窓」論、箱庭療法のカルフさんとの思い出、などなど、その専門性の高さはじーじも尊敬をするところです。

 また、河合隼雄さんだけでなく、中井久夫さんや木村敏さん、その他の優秀な学者さんとの交流もすごいです。

 ちなみに、精神分析の成田善弘さんは中学の同級生で、それ以来の付き合いとか、これもすごいです。

 山中さんのすごさは、その素直さではないでしょうか。

 こどものこころを残したおとな。

 学者らしからぬ、気さくで楽しい人柄は、とてもいい臨床家の姿を体現されています。

 本書でも、多少の失敗も正直に記されていますが、素直に反省をされるので、そこから治療が進展したりします。

 なかなかできないことですが、見習いたいです。

 さらに、読み込んでいきたい本だと思います。          (2020.5 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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下坂幸三『摂食障害治療のこつ』2001・金剛出版-摂食障害とその家族に向き合う

2025年05月12日 | 心理療法に学ぶ

 2019年5月のブログです

     *

 精神科医で精神分析家、家族療法家の下坂幸三さんの『摂食障害治療のこつ』(2001・金剛出版)を再読しました。

 先日、同じ下坂さんの『拒食と過食の心理-治療者のまなざし』(1999・岩波書店)を再読して、かなり勉強になったので、その続きです。

 この本もかなり久しぶりの再読。

 最近は摂食障害の患者さんにお会いすることがあまりないので、つい足が遠のいてしまいました。

 本書のほうが岩波本より2年後に出た本で、出版社も精神医学関係の会社からであり、少しだけ専門的かもしれませんが、基本はぶれていません。

 今回、印象に残ったことを、一つ、二つ。

 一つめは、繰り返しになりますが、面接論で、患者さんや家族の発言をなぞるように繰り返して、要約することの大切さ。

 このことはよく言われますし、たまたま、今読んでいるサリバンさんも同じことを強調していて、本当に重要な点だと思います。

 下坂さんの場合は家族面接をされますので、それを患者さんと家族の前で実践し、同意は無理でも、それぞれに確認をすることの大切さも述べられます。

 このように、それぞれの考えをていねいに聴いて要約し、みんなで確認することの重要性を下坂さんは、前書でも協調されていますが、本当に重要な点だと思います。

 じーじも家族面接で実行してみたことがありますが、特に、家族がこれまで言えなかったことを言えた、という経験をされることが多かったように思います。

 そして、下手をすると論争の場になってしまうこのような場で、治療者が治療者として生き残ることで、患者さんや家族の不安を受けとめることにもなると述べます。

 二つめは、面接のていねいさについて。

 たとえば、ものの見方が善悪に極端に分裂してしまう患者さんに、少しの反対面を確認し、患者さんの強迫性を崩すこと。

 原因より現象をていねいに語ってもらい、生身の姿を確認することで、やはり強迫性を崩すなど、現実を見据えて、互いに確認することの治療性を説きます。

 いずれも、治療現場で下坂さんが手探りで実践してこられた方法ですが、フロイトさんをご自分なりにていねいに読み解いて、実践されてきた重みが感じられます。

 空理空論でない、現場からの誠実な声に学ぶところがたくさんあります。

 さらに勉強を続けていきたいと思います。         (2019.5 記)

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 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

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 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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下坂幸三『拒食と過食の心理-治療者のまなざし』1999・岩波書店-摂食障害と向き合う

2025年05月10日 | 心理療法に学ぶ

 2019年5月のブログです

     *

 精神科医で精神分析家の、家族療法家の下坂幸三さんの『拒食と過食の心理-治療者のまなざし』(1999・岩波書店)を再読しました。

 これもかなり久しぶりの再読。

 昔、家裁調査官の時に、万引きをした女の子が摂食障害の子で、対応に苦労した時に、下坂さんの本で勉強をしたことを思い出します。

 いわゆる不良少女とは違う真面目な女の子の非行で、非行というよりやはり精神的な病いとして理解する必要を感じたことがありました。

 以来、摂食障害はじーじの中で大切なテーマの一つですが、なかなか難しいです。

 この本もアンダーラインや付箋がいっぱいですが、どれくらいきちんと理解できているのかは心許ないですし、ましてやそれを心理療法の中でどれくらい実践できるのかについてはまだまだだな、と思ってしまいます。

 それでも、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、摂食障害と強迫症、境界例の関係。

 内心の不安から自分や周囲をコントロールしようとする心性ということで、これらの病いは似ているところがありそうです。

 完全か無、善か悪、白か黒、といった極端な考え方も共通しています。

 ひょっとすると少しだけ緊張感に満ちた家庭での、自分を守る手段の一つなのかもしれません。

 二つめは、上記と関係しますが、過食や拒食にも理由があるので、その理由、利益をていねいにきくこと、いわゆる、下坂さんのいう現象論が大切ということ。

 そして、患者さんの心的現実には安易にうなずかずに、冷静な確認が必要となるようです。

 三つめが、できれば家族同席面接で、親子、それぞれの言い分をていねいにきいて、それを言語的になぞり返して、相互に確認をすること、これが重要になるようです。

 いずれも、行なうのはなかなか難しいことで、訓練と実践が必要で、今後さらに勉強を重ねていきたいと思いました。         (2019.5 記)

     *

 2022年5月の追記です

 ここでも、思うことは、こころの成熟は、あいまいさに耐えること、白も黒も灰色もある世界を理解できるようになることなどが大切になりそうな気がします。         (2022.5 記)

     *     

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 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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川上範夫『ウィニコットがひらく豊かな心理臨床-「ほどよい関係性」に基づく実践体験論』2012・明石書店

2025年05月09日 | 心理療法に学ぶ

 2020年5月のブログです

     *

  心理療法家の川上範夫さんの『ウィニコットがひらく豊かな心理臨床-「ほどよい関係性」に基づく実践体験論』(2012・明石書店)を初めて読みました。

 川上さんの論文は、これまでにいくつか読ませていただいています。

 そのこまやかでていねいな実践を踏まえた論考にはすごく感心させられることが多かったのですが、今回、単行本を古本屋さんで手に入れることができました(こんないい本が品切れなのはもったいないことです)。

 すごい本です。

 川上さんは、ご自分のケースを紹介しながら、ウィニコットさんをとてもわかりやすく説明してくれていますが、それがすごいです。

 ウィニコットさんをこんなに深く理解して、説明されるかたはそういません。

 ひょっとすると、ウィニコットさんが表現できなかったことも説明されているような気もします。本当にすごいです。

 例によって、特に印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、遊ぶこと、二人でいながら一人、抱えること、などなどのウィニコットさんのアイデアが、ほどよい関係性、という川上さんの考え方とご自身のケースで、こまやかにわかりやすく説明されます。

 こんなにわかりやすいウィニコットさんの説明は初めてですし、さらに深い理解に誘われて刺激的です。

 二つめは、関係性、という考え方から、精神病や発達障碍などを説明されて、それがまたとてもわかりやすいこと。

 それだけでなく、母子関係や親子関係の理解にも広がって、さらには、時代の病いである不登校や非行、虐待などの理解にも進みます。

 このあたりは、乳児の関係性からはじまって、それがおとなや時代の関係性にまで広がっていて、視野が広いですし、理解が深いです。

 いい本に出会えたなと思います。

 今後、さらに、読み込んでいきたいと思います。         (2020.5 記)

     *

 2023年5月の追記です

 ウィニコットさんの言葉の中で印象深いものに、治療者の解釈は治療者の限界を示すため、というのがあります。

 どんな解釈にも限界があるということとともに、治療者が限界を見せることで、クライエントさんの自立をうながす側面があるのではないかと思います。

 治療者の言葉が、もし、いつもあまりに完璧過ぎると、クライエントさんの依存性を助長して、自立を阻害してしまうのだと思います。

 ほどよい関係性、ほどよい母親ということの一面を示しているように、じーじには感じられます。        (2023.5 記)

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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遊戯療法・箱庭療法・プレイセラピー-2019年遊戯療法学会

2025年05月06日 | 心理療法に学ぶ

 2019年の日記です

     *

 昨日から遊戯療法学会で東京にいる。

 昨日はワークショップとシンポジウム。

 ワークショップは山中康裕さん。

 箱庭療法のカルフさんと思い出話。

 今も昔も「熱い」先生で尊敬をする。

 山中さんのお元気なお話を堪能してまことに幸せな時間を過ごす。

 シンポジウムは養護施設の子どもさんのケース。

 いつもお世話になっている新潟大の横山知行先生が指定討論者のお一人だったが、先生のすごいケースも提示されて、教わることが多かった。

 今日の午前中は研究発表。

 じーじは田中千穂子さんが助言者の分科会に参加したが、田中さんのあいかわらず切れのいい助言に酔う。

 とても幸せな時間だった。

 午後、もう少しだけ勉強をして帰りの新幹線に乗る予定。

 新幹線で吞むビールが今から楽しみだ。         (2019.5 記)

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 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

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 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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氏原寛・成田善弘編『転移/逆転移-臨床の現場から』1997・人文書院-心理療法における転移・逆転移を学ぶ

2025年04月14日 | 心理療法に学ぶ

 2020年6月のブログです

     *

 心理臨床家の氏原寛さんと精神療法家の成田善弘さんが編集された『転移/逆転移-臨床の現場から』(1997・人文書院)を久しぶりに読みました。

 中級者向けの事例中心の本ですが、理論面でもかなり高い水準の本で、じーじなどはまだまだ十分に読み込めていない論文もあります。

 2001年に購入したと思うのですが、購入の動機は若き日の藤山直樹さんと松木邦裕さんの論文があったことから。

 お二人とも、いい論文を寄せられています。

 藤山さんは、「私」の危機としての転移/逆転移、というテーマで、心理療法中の「再演」などの危機の状況の時に、どのくらい事態を読めるかの重要性などについて論じています。

 提示されている事例がすごいケースで、勉強になります。

 松木さんも、難しい事例の中で、転移の占める部分をできるだけ明確に理解していくことの大切さを論じます。

 さらに、菅佐和子さんの論文がいいです。比較的平易な文章で、率直な語りを通して、転移・逆転移について述べられています。

 そんな中で、今回、じーじが一番印象に残ったのが岡田敦さんの論文。

 岡田さんは、「転移劇」というキーワードで、転移・逆転移を事例を通して読み解きます。

 これがすごいです。

 精神分析と劇の関係については、フロイトさんから始まって、いろんなかたが述べており、岡田さんもウィニコットさんや土居健郎さん、小此木啓吾さん、北山修さんらの説を挙げて、説明されます。

 そして、心理療法の中での患者さんの「再演」をよいものに改定していくことの大切さを述べています。

 くしくも、心理療法の中での患者さんの「再演」を読む解くことの重要性が重ねて論じられていた印象を今回、感じました。

 今のじーじの問題意識がそこにあるせいでもあるでしょうし、やはり大切なポイントでもあるからだろうと思います。

 さらに勉強を続けていこうと思います。         (2020.6 記)

     *

 2022年春の追記です

 文中でも述べていますが、じーじの理解が不十分な状態での感想文で、理屈っぽい、わかりにくい文章になっています。

 今も理解が深まったとはいえないのですが、「再演」とは、じーじの今の理解では、心理療法の中で、クライエントさんがご自分の感情などを言葉で表現できずに、行動で「反復」してしまうことではないかと思います(それで合っているのかなあ?、ちょっと心配。いろんなレベルでの理解があると思います、と少し逃げておきます)。

 そして、「再演」を治療者がきちんと受けとめられると、クライエントさんは少しずつ言葉でご自分の感情などを表現できて、自身の行動の「反復」に気づけるようになる、というのが、今の精神分析的な心理療法の考え方ではないかと思います(まだわかりにくい文章ですね。じーじはもっともっと勉強しなければなりません)。          (2022.4 記)

     *

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

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 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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今朝のびっくりはきたきつねくんとの遭遇です!-じーじの2025春の北海道の旅・5

2025年04月12日 | 心理療法に学ぶ

 2025年4月のブログです

     * 

 じーじの北海道の旅では、いろいろとびっくりすることが多いが、今朝はなんときたきつねくんとの遭遇!

 いつものように、道の駅の近くの公園を散歩していると、前方から茶色の動物が接近!

 最初は丸っこいのでたぬきくんかな?と思ったが、よく見るときたきつねくん!

 夏に見るガリガリにやせた姿ではなく、冬を越したせいか丸々と太っていて、しっぽもすごく太くて立派!堂々としている。

 見ていると、臆することなく近くまで来て、平然と通りすぎる。

 思わず、後ろを振りむいて、見送ってしまった(じーじはふだん美人ちゃんとすれ違っても、めったに振りむくことはないが(?)、今回は思わず振りむいてしまった)。

 そして、不覚にも(?)少しだけ後をつけてしまったが、きたきつねくんのあしは早く、あっという間に見えなくなってしまった。

 すごい!

 東川町はまるで動物王国だ。

 今回はまだ遭遇していないが、えぞりすくんやえぞしまりすくんもいるだろうし、さらには、えぞしかさんやひぐまさんにも出会えるかもしれない(?)。

 ひぐまさんは、新聞では、美瑛の青い池付近を散歩しているらしいし、美瑛と東川は隣り町だし、可能性がないわけではなさそうだ。

 すごいなあ!東川という町は。

 景色はいいし、動物は豊かだし、住んでみたいなあ。

 住むのは無理でも、時々はやってきて、こころの洗濯をしたいなあ、とつくづく思う。

 いい町です、東川は。         (2025.4 記)

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松木邦裕ほか『摂食障害との出会いと挑戦-アンチマニュアル的鼎談』2014・岩崎学術出版社

2025年04月03日 | 心理療法に学ぶ

 2020年3月のブログです

     *

 松木邦裕・瀧井正人・鈴木智美『摂食障害との出会いと挑戦-アンチマニュアル的鼎談』(2014・岩崎学術出版社)を久しぶりに読みました。

 じーじにしては早めの再読、と思ったのですが、もう6年ぶりになるのですね。いかん、いかん(松木さん、ごめんなさい)。

 付箋がいっぱいだったので、少し整理をしながら読んだら、だいぶすっきりしました(?)。

 もっとも、本当に理解できているのかな?やや心配です。

 鼎談相手の瀧井さんは心療内科医、鈴木さんは精神分析医と3人それぞれの立場で治療に従事しておられますが、3人とも、摂食障害は食の病いというより、こころの病い、という理解で一致しているようです。

 そうなのです。摂食障害は食の病いとして表現されますが、こころを深く理解していくと、生きていることの不安を見つめられずに、不安を感じまいとして行動でまぎらわしている病い、として理解されておられます。

 たしかに、体重は比較的コントロールしやすいので、不安を見つめないで、万能感を保持しやすいのかもしれません。

 摂食障害の人に、万引きなどの問題行動が伴いやすいこともそれを証明しているようです。

 しかも、世の中、DSMなどのマニュアルが流行していて、こころの中を理解するより、表面の行動や症状のみで治療が行われているので、問題が深刻化しやすい、と述べられています。

 やはり、こころの問題が重要なんですね。

 成長にしたがって出会う抑うつ不安といかに付き合っていくのか、周りがどれくらいサポートできるのか、が大切なようです。

 なかなかいい本ですので、もっともっと経験を積んで、学びを深めていきたいと思いました。          (2020.3 記)

     *

 2022年9月の追記です

 今、読み返してみると、ここでも、あいまいさに耐えること、わからないことに耐えることの大切さがポイントになっているようです。           (2022.9 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com  

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北山修監修・高野晶編著『週一回サイコセラピー序説-精神分析からの贈り物』2017・創元社

2025年03月19日 | 心理療法に学ぶ

 2018年のブログです

     *   

 北山修さんが監修をした『週一回サイコセラピー序説-精神分析からの贈り物(2017・創元社)を読みました。

 去年秋の精神分析学会で北山さんや高野さんなどからご紹介のあった本で、今、精神分析学会で論議されている精神分析と精神分析的心理療法との異同について考えるのに、最適な一冊かなと思って読みました。

 なかなか刺激的な本です。

 これまであまり明確に議論をされてこなかったことがどんどん明らかにされるせいもあるでしょうし、精神分析的心理療法という古くて新しい心理療法を皆さんがなんとか確立していきたいという意気込みみたいなものも感じられます。

 もっとも、じーじは精神分析の訓練を受けたこともなく、本を読むだけで、どちらかというと精神分析的心理療法を学んだり、実践する立場ですので、冷静に勉強をしたいと思って読みました。

 本書では大勢の人が論文を書いており、たとえば、北山修さんの独創的な論文には本当に感心させられますし、鈴木龍さんの事例と理論にはこころから納得させられます。

 また、高橋哲郎さんの論文では、あの土居健郎さんが出てきて、とても感激させられます。

 そんな中で、今回、じーじが一番、勉強になったのが、先日もご紹介をさせていただいた生地新さん。

 生地さんは「子どもと思春期」という論文で、子どもや思春期の心理療法について詳しく説明をされ、週1回面接の意味やそれ以外の面接との比較についても述べられていて、月1~2回程度の面接が多いじーじの実践にもとても参考になりました。

 まだまだ読み方が浅く、理解も十分ではないと思いますので、今後、時間をかけて読み込み、実践に活かしていきたいなと思いました。             (2018 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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北山修『ふりかえったら風・対談1968-2005 3 北山修の巻』2006・みすず書房

2025年03月14日 | 心理療法に学ぶ

 たぶん2017年のブログです

       *     

 北山修さんの対談本『ふりかえったら風・対談1968-2005 3 北山修の巻』(2006・みすず書房)を再読しました。

 この本もかなりの久しぶりでしたが、今回は前回読んだはずなのにすっかり忘れていた(?)斧谷彌守一(よきたにやすいち)さんという哲学者を再発見(?)したことが一番の収穫です。

 斧谷さんはハイデガーさんの研究者ですが、ハイデガーさんはヘーゲル弁証法の正・反・合を発展させて、全体性と聖なるものの関連に気づいていたのではないか、という説を述べられます。

 ただし、ウィニコットさんを知らなかったため、子どもとおとなの中間領域という考えやそこが創造の場であるという考えには至らずにいて、喜びと悲しみの中間領域という考えには思い至らなかったのではないか、という大胆なお話に発展しています。

 たしかに、ハイデガーさんは読むのにも難儀をするような緻密な哲学で、ウィニコットさんの遊びや創造性の世界からは少し縁遠い印象を受けますが、しかし、素人の感想ですが、どちらもがかなり深い世界を扱っているなという雰囲気だけはなんとなくわかります。

 久しぶりに哲学らしい論議を読めて、面白かったです。

 他にも、精神分析の鈴木晶さんとの対談では、昔話の変化とつくり直しの話題が出て、例のつるの恩返しの物語が書き換えられるかというテーマに繋がっています。

 同じく精神分析の小此木啓吾さんとは境界パーソナリティをめぐって対談がなされ、現代社会における子どもの過剰適応との関連が検討され、死の本能の隠蔽やエディプスの崩壊とおとなになることへの失望など、なかなか刺激的な話題が話されます。

 さらに、精神分析の妙木浩之さんとは、ウィニコットさんをめぐって話され、ウィニコットさんやフロイトさんの症例報告が間接話法で書かれていることを指摘されて、ローデータ神話を批判されます。

 事例報告を直接話法で書くか、間接話法で書くか、という問題は、事例検討が重要である臨床家にとっては大きな問題で、今後、真剣に考えていきたいなと思いました。

 対談本ですが、とても刺激になった一冊でした。         (2017?記)

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

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 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

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 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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下坂幸三・飯田眞編『家族療法ケース研究5・うつ病』1993・金剛出版-ていねいな家族療法に学ぶ

2025年03月07日 | 心理療法に学ぶ

 2020年3月のブログです

     *

 下坂幸三さんと飯田眞さん編集の『家族療法ケース研究5・うつ病』(1993・金剛出版)を久しぶりに読みました。 

 家族療法学会にはしばらく顔を出していませんので、なんとなく疎遠になった感じですが、しかし、実はじーじの面接は、50歳前後のしばらくの間、家族療法の勉強の中で鍛えられた感じがします。

 面接の逐語録をそのまま報告書に書いて、調停委員さんには評判が良かったのですが、裁判官からは、もう少し短く書いてくださいね、と注文をつけられたりしました(裁判官さん、ごめんなさい)。

 その後は、精神分析的な面接が中心になっていますが、母子面接などの家族面接も大切だと考えていて、その重要さは変わりません。

 今回、うつ病の家族療法を再読して、懐かしさとともに、新たに考えるところが多々ありました。

 例によって、印象に残ったところを一つ、二つ。

 一つめは、後藤雅博さんの、うつ病患者さんの家族合同面接。

 後藤さんは新潟の家族療法の第一人者で、裁判所の研修にもたびたび講師で来ていただいて、勉強させていただきました。

 この論文では、うつ病の夫と妻の合同面接を逐語録も提示されてていねいに検討されていて、とても参考になります。

 特に、リフレーミング(再枠づけ)がうまいなあ、と感心させられました。

 二つめは、すっかり忘れていたのですが、大平健さんの「妄想を伴ったうつ病患者の一例」という論文。

 大平さんといえば、『診察室に来た赤ずきんちゃん』『やさしさの精神病理』などで有名ですが、家族療法の論文も書かれているのは意外な感じでした(一度読んでいるはずなのに、意外、もなにもないのですが…。大平さん、ごめんなさい)。

 例によって、大平さんのドラマのような症例報告で、堪能させられました。やはりすごいです。

 昔の本を、新刊本のように(?)新鮮な気持ちで読むことができて、とても贅沢な1週間でした。         (2020.3 記)

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 経歴

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

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 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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松木邦裕『摂食障害というこころ-創られた悲劇/築かれた閉塞』2008・新曜社-患者さんの健康なこころと対話する

2025年02月03日 | 心理療法に学ぶ

 2020年2月のブログです

     *

 精神科医で精神分析家の松木邦裕さんの『摂食障害というこころ-創られた悲劇/築かれた閉塞』(2008・新曜社)を再読しました。

 何回か読んでいるのですが、レポートは初めて。

 ようやく、少しは自分のものになってきたのかもしれません。

 松木さんが、自分が摂食障害について書くのは最後の本、というだけに、摂食障害という病いの成り立ち、病態、治療などについて、精神分析的な立場からかなり細やかな理解を示されていて、とても参考になります。

 じーじが今回、特に勉強になったのが、摂食障害の患者さんへの精神分析的な面接についての章。

 摂食障害の人との面接で留意すべき点がたくさん示されていて、勉強になります。

 たとえば、患者さんの話をよく聴くだけでは不十分、という点。

 話をよく聴くだけでもかなりの努力を要しますが、それだけでは面接は深まらないので、聴ききれない点や不思議に思う点を聴き返すべきだと説明されます。

 そうすることで初めて、患者さんが本当に考え、面接が深まり、治療が進む、といいます。卓見です。

 このことは摂食障害の患者さんだけでなく、他のパーソナリティ障害の患者さんなどにも大切なことがらだと思われました。

 これに関連して、患者さんのこころの中には、健康な部分と病気の部分があるという見方。

 患者さんの病気のこころに引っ張りまわされずに、健康なこころと対話をしていくことが大切といいます。

 その他にも勉強になることがたくさん、まるで宝箱のような章です。

 もっともっと読み込んで、いい面接ができるようになりたいと切に思いました。       (2020.2 記)

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 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

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 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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日下紀子『不在の臨床-心理療法における孤独とかなしみ』2017・創元社-不在・かなしみ・待つこと

2025年01月28日 | 心理療法に学ぶ

 2017年のブログです

     *   

 日下紀子さんの『不在の臨床-心理療法における孤独とかなしみ』(2017・創元社)を読みました。

 日下さんの本は初めて読ませていただきましたが、少し難しかったものの、テーマが興味深く、一所懸命に読ませてもらいました。

 メインテーマは、心理療法における不在について、ということだと思いますが、それに伴うクライエントの孤独とかなしみ、そして、「待てる」ようになることの意味、などではないかと思います。

 日下さんはこれらのテーマを、ケースをもとにていねいに説明されています。

 日下さんは、まず、現代社会は、「待つ」ことができにくい社会になっていることを指摘し、フロイトさんの、いないいないばあー、やウィニコットさんの、ひとりでいる能力、などを挙げて、「待てる」ことの大切さを説明します。

 さらに、心理療法における、喪の作業、に言及し、かなしみを味わうことの大切さを指摘されます。

 そして、葛藤を葛藤として抱え、持ちこたえることで、心理的に成熟することを説明されます。

 その際、セラピストがふらふらになりながらも、なんとか生き延びること、これが重要だ、と指摘されています。

 かなしみを味わうこと、葛藤を抱えて生きること、なんとか生き延びること、などは、じーじもこれまで、いろんな場面で大切なことだと感じてきましたし、ブログの中でも少しは触れてきていると思いましたが、日下さんの本を読んで、これらが一本の線で結ばれてきたような印象を持ちました。

 まだまだ読みが甘いと思いますし、自分のケースとの照合も不十分だと思いますが、これからも実践を深めて、さらにこれらのテーマを考えていきたいと思いました。         (2017 記)

     *   

 2019年冬の追記です

 今ごろになって気づきましたが、よく考えると、「待つこと」も中井久夫さんがシェイクスピアさんに見出した「わからないことに耐えること」につながりそうです。

 臨床の世界は奥が深いです。         (2019.2 記)

     *

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 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通う。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事する。

 1995年頃、調査官でも落ちこぼれ、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事 個人開業で、心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを相談、研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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