ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

神田橋條治『医学部講義』2013・創元社-患者さんを大切にする精神科医に学ぶ

2024年06月12日 | 精神科臨床に学ぶ

 2019年のブログです

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 神田橋條治さんの『医学部講義』(2013・創元社)を再読しました。

 これも久しぶり、しかしながら、大切なことがいっぱいです(再読が遅くなって、神田橋さん、ごめんなさい)。

 例によって、今回、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、マニュアル診察の弊害。

 マニュアルをチェックするだけの診察が横行していて、誤診が多発している状況に警告を発しています。

 そうではなくて、患者さんの全体を診て、診察をする大切さを強調されます。同感です。

 二つめは、これとも関連しますが、サリヴァンさんもいう「関与しながらの観察」の重要性。

 パソコンの画面を眺めるより、患者さんをよく診て、関わることの大切さを述べられます。

 これに関連して、「患者様」という表現に違和感を感じる、とも述べられます。これにも同感です。

 言葉だけを丁寧にしても、患者さんを丁寧にすることにはなりません。

 しかも、丁寧にしすぎで、人間味がなくなっています。

 ここで、中井久夫さんの『看護のための精神医学』(2001・医学書院)を薦められていて、いいタイミングです。

 そして、三つめは、神田橋さんも自身の失敗を隠さないこと。

 他の大家と同様ですが、すばらしい臨床家の資質の一つのようです。

 大切なことをいろいろと教えられ、また深く臨床を考えることができました。感謝します。     (2019.7 記)

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 2022年9月の追記です

 大切なことがいっぱい述べられている本ですね。

 早いうちに再読をしなくっちゃあ、と思います。     (2022.9 記)

 

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加藤周一『私にとっての20世紀』2000・岩波書店-「いま,ここで」起こっていることを冷静に把握すること

2024年06月12日 | 随筆を読む

 2016年のブログです

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 加藤周一さんの『私にとっての20世紀』(2000・岩波書店)を久しぶりに読みました。

 2000年に書かれた本ですが,16年後の今年の状況をほぼ正確に予測しています。

 日米軍事同盟,安保法制,自衛隊の海外派兵,法律の拡大解釈,憲法改悪の動き,沖縄の基地問題の固定化,日の丸・君が代の強制,死刑存続,マスコミ統制,などなど。

 すごい読みだと思います。

 国家と権力の目指すところがよく見えていたのだと思います。

 時代は急速に悪化の方向をたどっているように見えます。

 つぎは徴兵制でしょうか。

 政府は徴兵制は苦役で憲法違反と今はいっていますが,その憲法が危うい状況です。

 ちなみに,じーじが加藤周一さんを初めて読んだのは大学2年の時。

 ある先生から夏休みの課題として加藤さんの『羊の歌』(岩波新書)を読むようにいわれて読みました。

 読んでびっくりしました。

 戦時中に日本の敗戦を確信していたということ。

 その明晰な分析と明晰な文章に感激をしました。

 以来,40数年,加藤さんを読み続けています。

 そういえば,司馬遼太郎さんも戦争中に戦車に乗っていて,指揮官が,国家を守るためには国民をひき殺してもいい,と述べたのを聞いて,国家に絶望をしたと書いています(沖縄戦では泣いている赤ちゃんが敵にみつかるからと殺されました。戦争は本当に人を冷酷に変えてしまいます。殺し合いですものね)。

 お二人とも,敗戦後の日本の中で,国民を戦争に追いやった国家と権力を冷静に分析した文章をお書きになりました。

 お二人とも本当に日本の人たちのことを考えていたのだと思います。

 フロイトさんはご存知のように,状況をきちんと分析をしないと事態を反復する,と述べています。

 今,じーじたちに求められているのは,精神分析が大切にしているように,「今,ここで」何が起こっているのかを冷静に把握し,冷静に理解をし,冷静に対応していくことのように思います。

 さらに勉強を深めたいと思います。     (2016 記)

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 2020年10月の追記です

 学術会議の問題、また、きな臭くなってきました。     (2020.10 記)

 

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