2019年夏のブログです
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佐々木譲さんの『真夏の雷管-北海道警・大通警察署』(2019・ハルキ文庫)を読みました。
旭川の本屋さんで見つけて読みましたが、とても面白かったです。
佐々木さんは北海道在住の小説家。北海道を舞台にした良質の小説をたくさん書かれています。
本作もネグレクト気味の小学生をめぐって、警察官、母親、そして、爆弾犯人が、それぞれの立場からおとなのあり方を提示し、関わります。
そして、小学生もそれぞれのおとなの真摯な態度に何かを学ぶようです。
佐々木さんの小説は文章がうまく、かつ、スピード感がすごいです。その読後感もとてもすがすがしいです。
解説の池上冬樹さんも述べておられますが、佐々木さんの小説は犯人への目線が温かで、アメリカの警察小説のように一方的に邪悪な人物ではなくて、犯罪に至る経過が丁寧に描かれているのが特徴的です。
どこか家裁調査官の非行少年へのまなざしを思い浮かべられるようなところがあります。
そこが佐々木さんの小説の魅力です。
警察官も、弱さも強さも抱えている普通の存在で、右往左往してしまいます。
特に、男女関係はとても不器用で、しかし、そこが微笑ましいですし、魅力的でもあります。
北海道に来て、北海道が舞台のいい小説が読めて、最高の贅沢です。 (2019.7 記)
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2020年冬の追記です
佐々木さんの北海道警シリーズにはまってしまった勢いで、今日は『真夏の雷管』をまた読んでしまいました。
前回からまだ半年で、あらすじはさすがの忘れん坊のじーじでもある程度は覚えていたのですが、佐々木さんの文章がスピード感があって、かつ、その表現がおとなの味わいに満ちているので、一気に読まされてしまいました。
信ずることのすごさ、信ずる者同士の良さ、不器用でも思いやることの大切さ、などなどが描かれています。
改めて素敵な小説だと思いました。 (2020.1 記)