振り出しに戻る「落陽日記」

旅や日々の生活の一コマ。60代半ば、落陽期を迎えながら気持ちは再び振り出しに戻りたいと焦る日々です。

田沢湖、角館を経て西木温泉で一泊後、帰途に就く

2022-12-19 10:47:17 | 旅行
田沢湖には27年前ごろに出張の途中で立ち寄り、田沢湖高原温泉のホテルの露天風呂から夕暮れに佇む田沢湖を眼下に見下ろした記憶が残っている。



日本一深い水深をもつカルデラ湖だと、最近改めて知った。少し前、TV番組のぶらタモリで北海道の支笏湖を紹介していたが、支笏湖の水深が田沢湖に次いで二番目と言っていた。

ただ、旅から帰って田沢湖のことを調べてみると、およそ80年前から水質の酸性化が始り、湖の生態系が大きく崩れたそうだ。そう言えば田沢湖にしかいなくて絶滅した固有種のクニマスが、富士五湖の西湖で見つかったと言うニュースが10数年前にあった事を思い出した。昭和10年頃に全国何ヶ所かの湖水に受精卵を運び込んだそうで、それらが生存していたのだ。

何故に水質が酸性化したのか、その原因は先日訪れた玉川温泉を源流とする、高酸性度の水が田沢湖に流れ込んだためだ。否、自然に流れ込んだのではなく、人為的に田沢湖に導水したためだ。

カルデラに水が貯まって出来た田沢湖は外輪山に囲まれ、玉川温泉から流れ出る酸性水を運ぶ玉川は、外輪山を越えて田沢湖に流れ込むことはない。昭和15年頃、外輪山の外側を流れる玉川の水の一部を、田沢湖に導く土木工事をした。

その目的は田沢湖の水を利用した水力発電所を建設するにあたり、流入河川としては小さな沢くらいしかない田沢湖の水位を保つために、新たな流入河川を作ることだったのだ。

その結果、田沢湖の水質酸性化が始り、プランクトンや酸性水に弱い鮭鱒類などが死滅してゆき、完成した発電所の機械までもが酸性水に侵されて腐食し、使い物にならなかったようだ。

工事の計画段階から酸性水による障害の発生を懸念する声があったようだが、軍国主義の色濃くなった時代の、電力増産の国策の前に消されたに違いない。何たる愚策。

戦後だいぶ経ってから石灰を使って酸性水を中和させる施設や、希水効果も狙ったダム湖も造られて田沢湖の酸性度が薄まり、ウグイなどの酸性水に比較的強い魚種は復活しているようだ。しかし、湖の深い部分は酸性度が高いままで、田沢湖にクニマスを戻せるようになるまでには、まだ相当の年数が必要だろう。








角館の町に寄ってみた。武家屋敷の並ぶ街並みの桜が有名だが、シーズンとしては終わりかけではあったものの、紅葉はまだ綺麗だった。

今晩の宿は角館の中心部から少し離れた西木温泉だった。チェックインを済ませてから紅葉のライトアップを見るために、再び武家屋敷街に戻った。



ライトアップの見所は少なく、紅葉は昼間だけで充分だったかも知れない。



西木温泉の宿は「ふれあいプラザ クリオン」。町のコミニュケーションセンターを兼ねた公共施設で、温泉には仕事帰りに立ち寄っている町の人たちが多かった。



この宿は、秋田空港を朝9時台に出発する便に乗るため、1時間程度で空港まで行ける宿として選んだ。

今回のみちのく旅は3泊4日とは言え、始りは午後出発便で帰りは午前発便なので、内容的には中二日に目的地が集中した。レンタカーの走行距離は6百キロ弱で、少し強行軍だった。温泉のハシゴドライブも悪くないが、次はゆっくりとした滞在型で来たいものだ。









乳頭温泉郷 鶴の湯  形容する言葉が思いつかない

2022-12-09 17:36:25 | 旅行


鶴の湯の駐車場に着いて車を降りようとすると、突然みぞれ混じりの雪が降ってきた。





晩秋に訪れたみちのくの秘湯で、みぞれが歓迎の演出をしてくれているようだ。一度は来てみたいと、長い間思っていた温泉だけに、寒い中でもテンションが上がってくる。

鶴の湯の景色はテレビやネット画像では何度か見ていたが、何処かの時代村にあるような古い木造の建物や、その奥の方に湯けむりの上がるこの佇まいを、上手く表す言葉が思いつかない。自分の生家は藁葺き屋根の古い家で、山に囲まれていた幼い頃の田舎の風景がふと思い出される。





受付で600円の入浴料を払い、早速男湯へ。脱衣場にいた二人の先客の内一人が、広島から来たのでみぞれにビックリした、と言うともう一人も自分も広島からだと言う。三人で入った浴槽では、自分も参加してしばらく会話が続いた。

たまたま一緒になっただけの三人だが、話が弾んだのは、遠路はるばる鶴の湯を目指してやって来たという、共通の興奮があったからだと思う。


画像は白湯と呼ばれる浴槽で、入浴客がいなくなったのでパチリ。 

昨日から今朝入浴してきた酸ヶ湯温泉や玉川温泉のような酸性度の高い泉質ではないのて、同じように白く濁っていても、湯が柔らかく感じる。

印象的だったのは湯加減が丁度良くて、何時間でも浸かったままでいられそうだった。どんな温泉でも大体5分も浸かれば上半身だけは湯から出したくなるが、それが全くない。たまたまだったかも知れないが、どんな湯加減調整をしているか、湯守さんがいたら尋ねてみたいところだ。




こちらは同じ建物内にあった黒湯。白湯とは泉源が異なるために泉質が違うようだが、お湯の色だけでは区別がわからない。

次は露天風呂だが、男湯から10メートルばかり離れていて、脱衣場が別にあるようだ。先ほど聞いた話では、着替えるのは面倒なので大概はタオルで前を隠し、裸のままで移動しているとのこと。

自分も同じように移動していたら数人の女性(もちろん着衣)の視線を浴びることになったが、そんな光景もここでは不自然に見えることはないような気がする。





露天風呂には入浴中の人がいたので全景は撮れなかったが、割と広くて男女混浴になっている。別の場所に女子用の露天風呂があるため、ここでは女性の姿は見かけなかった。

鶴の湯に着いた時に降り始めたみぞれも、露天風呂に入った頃には止んでいた。みぞれや雪の中の露天風呂なんて、なかなか味わえるものではなく、少し残念だった。


正午前には風呂から上がると、何となく身体に疲労感がある。昨日から連続して温泉に入ったからかも知れない。乳頭温泉郷にある他の温泉も、あと1か所くらいは入浴しようと考えていたのだが止め、温泉郷は車で一回りすることにした。

全部の温泉を見たわけではないが、乳頭温泉郷の中の温泉でも、「鶴の湯」とその別館になる「山の宿」だけは、他の温泉とはかなり離れた別の場所にあるのがわかった。



鶴の湯に向かっていた時も、この案内板とバス停のある場所を左折しなければならないのだが、数十メートル通過してしまった。メインルートを走れば鶴の湯に行けると思っていたのだが、間違いだった。

みちのく秋田の乳頭温泉郷まで折角来たのに、鶴の湯だけではもったいない気もするが、他は次の機会の楽しみにしよう。

酸ヶ湯、玉川温泉、鶴の湯と、いずれも印象の強い温泉ばかりだったので、満腹感で一杯になった気持ちだ。







玉川温泉の湯治宿 次に来たら腰を据えて連泊だ

2022-12-04 14:11:48 | 旅行
事前学習を怠って玉川温泉に来たら、色んなコトにびっくりした。そもそも玉川温泉の名を知ったのは今回が初めてで、酸ヶ湯、奥入瀬、十和田湖を経て翌日は乳頭温泉に日帰りで行ける宿を宿泊サイトで探していて見つけた温泉だ。

十和田湖から山を越えて行く感じで、鹿角を過ぎてからの国道341号線は暗くなった山道。途中30分以上もの間、対向車が来ないような寂しい道だった。これはてっきり人里離れた山奥にポツンとあるこじんまりした湯治宿だと、思い込んだのは大間違いだった。 




宿は3階建てながら本館に東館、南館に西館とあって、更には昔ながらに自炊しながら湯治のできる宿泊棟もあるようだ。大きくてさしづめ迷路のような宿だ。





ここの温泉は酸性度が日本一高く、部屋や大浴場には入浴時の注意書きがあって、源泉に長時間浸かるのは身体にはNGらしい。浴槽は源泉100%と、源泉50%に分かれていて、更に湯の温度でも分かれている。低い酸性度、低い温度の浴槽から攻めるのがコツのようだ。

源泉に浸かってしばらくすると、身体のあちこちでチクチクしてくる。たぶん虫刺され跡か擦り傷の跡だろう。手をこするとスベスベしてくるのがわかる。浴槽を出ると注意書きに従って、洗い湯で全身をしっかり流してから上がった。





翌朝、部屋の窓から見ると温泉の湯けむりの中をみぞれ混じりの雪が降っている。しばらくすると雪が止んだので、朝湯に浸かった後、朝食をとる前に近くを散歩することにした。



自然研究路の方角に遊歩道を歩いてゆくと、素晴らしい景色が見えてきた。





 
このあたりで写真を撮っていると、時々ゴザを脇に抱えた人が行き来している。はて?と思って更に奥へ進んで行くと数軒の小屋(テント)が見えてきた。





ゴザを抱えた人たちの目的は岩盤浴だと、今頃になってわかった。宿の館内にも岩盤浴があるので、こんな屋外にもあるとは思わなかった。


 
地熱のある場所を選んでで野宿かと思いきや、この人も岩盤浴をしていたんだ。


 
乳頭温泉郷あたりでは火山性有毒ガスで人が亡くなる事故があるのは知っていたが、この辺りでもその危険があるようだ。旅から帰って知ったが、約10年前には新雪雪崩で岩盤浴のテントが押し潰され、亡くなった人が数人いる。

また、ここで岩盤浴をすることで北投石が発する微量の放射線を利用してガンを抑えようと、やって来る人もいると知った。 

つくづく思ったが、ここに来る前にもう少し勉強すればよかった。次に来る時には屋外で岩盤浴を体験して、隣接する新玉川温泉にも浸かってみたい。それなら腰を据えて連泊しないと駄目だな。






自分が泊まった部屋は湯治宿らしい質素な部屋だったが、ひとり旅ならこれで充分。滞在中は時間もたっぷりあるので、次回来るなら自炊しながらの連泊も面白いかも知れない。それにはやはりひとり旅が良さそうだ。