[馬場あき子選]
○ 津波退きしがれきの山に雪つもるこれが東北というがごとくに (東京都) 久保田仁
“瓦礫”は漢字で正しく記して初めて意味の解る言葉となるのであって、「がれき」などと“ひながな書き”しても、何のことか解りません。
場合にもよりますが、本作の場合は手抜きとしか言えません。
また、詠い出しの「津波退きし」も音数合わせみたいな感じがしますから、一首全体、推敲の余地の残された凡作と思われます。
馬場あき子先生ともあろうお方が、どうしてこんな下手な作品を首席にお据えになったのでありましょうか?
〔返〕 瓦礫なす浄土ケ浜に雪積もる地獄の果を見るが如くも 鳥羽省三
○ 地震の中で赤ちゃん産んだお母さん温かいシチュー届けてあげたい (富山市) 松田わこ
“スープの冷めない距離”という言葉もありますから、それはご無理な願望でありましょう。
〔返〕 ぶたさんの貯金箱に貯めていたお金を現地に送ってあげてね 鳥羽省三
○ 生きてゆかねばならぬから原発の爆発の日も米を研ぎおり (福島市) 美原凍子
近頃は“無洗米”と称して研ぐ必要のない「米」もありますよ。
かなり高めではありますけど。
〔返〕 原発の爆発の日はパンを食べその翌朝はご飯を食べた 鳥羽省三
○ 屋上に夜を明かし徒歩六時間帰宅せり君が言う津波地獄図 (仙台市) 伊藤 和
「君が言う」とまで「言う」必要があったかどうかは分かりませんが、詰め込み過ぎた為に、かなり窮屈な表現になっていることは事実でありましょう。
〔返〕 屋上に一夜明かして帰宅せりわずか一里を六時間掛け 鳥羽省三
君が言ふ地獄図ならむ我が家への道に累々死体重なり 々
○ 震度6強の実家に父母はいる呼び出し音十回・十一回応えぬ恐怖 (盛岡市) 菊池 陽
大幅な字余りがある以上は、短歌と見做せません。
「応えぬ恐怖」とまで言う必要はありません。
先ずは定型。
次に韻律。
この二条件を満たしていないものを短歌と認めてはいけません。
“新聞歌壇”の如き短歌の普及を図ることを目的とした場に於いては、特に厳格にしなければなりません。
〔返〕 震度6強のボロ家に父母居りて電話幾たびすれど応へず 鳥羽省三
○ こんなにも悲しく響く東北弁聞きたることなし巨大地震は (名古屋市) 山田 静
加害者たる「巨大地震」が、被害者たる「東北弁」の予想外なる悲しい響きに吃驚仰天している、というご趣向かと思われる。
尋常なる発想や表現では、到底選ばれることが出来ないと思っているのでありましょうが、いくら何でも、「巨大地震」が「こんなにも悲しく響く東北弁聞きたることなし」と驚いている、という趣向は無理でございませんか?
〔返〕 「こんなにも高い所に上がっては出漁出来ぬ」と漁船は嘆く 鳥羽省三
○ 大震災避難者の記事前にして妻はいかなご炊くを止めたり (神戸市) 内藤三男
作者の居住地の違いも無視できませんが、“永田和宏選”の首席・坂本捷子さん作と比較した時、本作の説得力の無さが余りにも目立つのである。
〔返〕 いかなごの佃煮を炊きつつ思ふ彼の日の我らと今日の彼らと 鳥羽省三
○ 避難所の人みな人を気遣ひぬ人とはかくも美しきかな (小松市) 沢野唯志
脳天気ですね。
“新しき村運動”を凌ぐほどの脳天気さと思われる。
ここまでの脳天気振りを発揮されると、自分が短歌に携わっている者の一員であることが恥ずかしくもなる。
〔返〕 “気”はさらに見えませんけど“気遣い”ははっきり見える気遣い嬉し 鳥羽省三
○ 立ち直るしかないねと言う被災者の深き目皺のひとすじの涙 (横浜市) 大建雄志郎
「これでもか、これでもか」という感じで、趣向を変えて来るのであるが、所詮、厳粛なる事実の前の、果敢ない表現に過ぎません。
〔返〕 独力で立ち直るしかありません原発以外は自然災害 鳥羽修三
○ 津波退きしがれきの山に雪つもるこれが東北というがごとくに (東京都) 久保田仁
“瓦礫”は漢字で正しく記して初めて意味の解る言葉となるのであって、「がれき」などと“ひながな書き”しても、何のことか解りません。
場合にもよりますが、本作の場合は手抜きとしか言えません。
また、詠い出しの「津波退きし」も音数合わせみたいな感じがしますから、一首全体、推敲の余地の残された凡作と思われます。
馬場あき子先生ともあろうお方が、どうしてこんな下手な作品を首席にお据えになったのでありましょうか?
〔返〕 瓦礫なす浄土ケ浜に雪積もる地獄の果を見るが如くも 鳥羽省三
○ 地震の中で赤ちゃん産んだお母さん温かいシチュー届けてあげたい (富山市) 松田わこ
“スープの冷めない距離”という言葉もありますから、それはご無理な願望でありましょう。
〔返〕 ぶたさんの貯金箱に貯めていたお金を現地に送ってあげてね 鳥羽省三
○ 生きてゆかねばならぬから原発の爆発の日も米を研ぎおり (福島市) 美原凍子
近頃は“無洗米”と称して研ぐ必要のない「米」もありますよ。
かなり高めではありますけど。
〔返〕 原発の爆発の日はパンを食べその翌朝はご飯を食べた 鳥羽省三
○ 屋上に夜を明かし徒歩六時間帰宅せり君が言う津波地獄図 (仙台市) 伊藤 和
「君が言う」とまで「言う」必要があったかどうかは分かりませんが、詰め込み過ぎた為に、かなり窮屈な表現になっていることは事実でありましょう。
〔返〕 屋上に一夜明かして帰宅せりわずか一里を六時間掛け 鳥羽省三
君が言ふ地獄図ならむ我が家への道に累々死体重なり 々
○ 震度6強の実家に父母はいる呼び出し音十回・十一回応えぬ恐怖 (盛岡市) 菊池 陽
大幅な字余りがある以上は、短歌と見做せません。
「応えぬ恐怖」とまで言う必要はありません。
先ずは定型。
次に韻律。
この二条件を満たしていないものを短歌と認めてはいけません。
“新聞歌壇”の如き短歌の普及を図ることを目的とした場に於いては、特に厳格にしなければなりません。
〔返〕 震度6強のボロ家に父母居りて電話幾たびすれど応へず 鳥羽省三
○ こんなにも悲しく響く東北弁聞きたることなし巨大地震は (名古屋市) 山田 静
加害者たる「巨大地震」が、被害者たる「東北弁」の予想外なる悲しい響きに吃驚仰天している、というご趣向かと思われる。
尋常なる発想や表現では、到底選ばれることが出来ないと思っているのでありましょうが、いくら何でも、「巨大地震」が「こんなにも悲しく響く東北弁聞きたることなし」と驚いている、という趣向は無理でございませんか?
〔返〕 「こんなにも高い所に上がっては出漁出来ぬ」と漁船は嘆く 鳥羽省三
○ 大震災避難者の記事前にして妻はいかなご炊くを止めたり (神戸市) 内藤三男
作者の居住地の違いも無視できませんが、“永田和宏選”の首席・坂本捷子さん作と比較した時、本作の説得力の無さが余りにも目立つのである。
〔返〕 いかなごの佃煮を炊きつつ思ふ彼の日の我らと今日の彼らと 鳥羽省三
○ 避難所の人みな人を気遣ひぬ人とはかくも美しきかな (小松市) 沢野唯志
脳天気ですね。
“新しき村運動”を凌ぐほどの脳天気さと思われる。
ここまでの脳天気振りを発揮されると、自分が短歌に携わっている者の一員であることが恥ずかしくもなる。
〔返〕 “気”はさらに見えませんけど“気遣い”ははっきり見える気遣い嬉し 鳥羽省三
○ 立ち直るしかないねと言う被災者の深き目皺のひとすじの涙 (横浜市) 大建雄志郎
「これでもか、これでもか」という感じで、趣向を変えて来るのであるが、所詮、厳粛なる事実の前の、果敢ない表現に過ぎません。
〔返〕 独力で立ち直るしかありません原発以外は自然災害 鳥羽修三