ローカル線を追う

身近なローカル線を点景に、沿線の風景を撮影しています。

俗世界を忘れる山峡の駅

2011年04月26日 | JR東海

 

続・JR飯田線      小和田駅(こわだ) 後編

待合室でこの山の中に住むという老夫妻に出会いました。駅周辺では誰も住む人がいなくなった集落から、まだ相当奥に自宅があるMさん夫妻(夫85歳、妻86)です。子供たちが都会へ出て行ってからも、山が好きだからとずっと住みついています。電気が通っているので、電灯は勿論、テレビ・冷蔵庫・炊飯器や電話もあるから何も不便ではない。しかも郵便も新聞も飯田線でやって来るからお殿様気分ですよと、笑って話されました。

夫は若いころ筏師をしていて、天竜川を材木を組んで集積地まで運び、帰りは徒歩で峠を越え、自宅に帰えりました。それがバスになり、飯田線になりましたが、ダムが造られてからは林業は勢いがなくなり、仕事を失ったといいます。妻は20歳ころ長野県から嫁に来て60年、この土地を離れたことはありません。住めば都ですからね。それにわたしのほうが年上ですから、何かにつけて頑張らなくちゃあ。山の生活では、どこへ行くにも歩きですから、足腰は丈夫です。多少腰は曲がりましたが、膝痛や腰痛は経験したことはありません。元気そのものですよ。ただ一つ不便なことは近くに店がないので、買い物は飯田線に乗って水窪町まで出かけます。今日も今から二人で買い物ですよ。

結局、この後、間もなく上りの電車が到着したので、Mさんご夫妻をホームで見送り、散策路を歩いて見ました。散策路はMさんご夫妻にとっては生活道路ですが、舗装してあるとはいえ幅員も狭く、ところどころ落石の痕跡があったり、そのうえアップダウンの激しい道で、500メートルほど歩いただけで疲れてしまいました。住めば都とはいえ80歳を超えた老夫妻がこの山の中で暮らすのは、なかなかご苦労もあるだろうと思いました。

                                   上りの電車で水窪駅に向かうM夫妻。かくしゃくとしています。

  

 小和田駅は県境にありますので、ホームには3県の標識が立っています。ちなみに駅の所在地は、静岡県浜松市天竜区水窪町です。

  古い道ですが、一応は舗装されています。

 

             駅のすぐ裏側。今は、誰も住んでいません。こうした家が数軒あります。

  M夫妻は、毎日この道を通っているのでしょうか。

  左に天竜川が見えます。

 ところどころ落石の痕跡があり、舗装も痛んでいました。