2014年度作品。日本映画。
東日本大震災の影響で故郷を失いバラバラになってしまった家族が、20年近く音信不通だった弟の帰郷をきっかけに、再び絆を深めていく姿をオール福島ロケで撮影した人間ドラマ。
監督は久保田直。
出演は松山ケンイチ、田中裕子ら。
福島第一原発で故郷を奪われた人たちを描いている。
言うまでも問題意識をはらんだ映画だ。
しかし本作の良いところは、そんな風に問題意識をはらみながらも、声高にそれを主張するわけではない点にある。
ただ目の前にある事実を積み重ねており、そのあたりが大変好印象の作品だった。
この映画が福島で実際撮られたらしい。だとしたらよく撮れたものである。
人のいない商店街や道というものは実にさびしいものだ、と見ていて感じる。
草も伸び放題で捨て置かれた農地などは見ていてかわいそうだ。
そこが故郷である人は何かと思うことはあるのだろう。
それでなくとも、福島で故郷を奪われた人たちはなかなかつらい生活を送っている。
仮設住宅で暮らすせいでぼける老人はいるし、故郷を奪われ悲観する人もいる。
描かれる一家は金も足りないらしく、夜の商売にも出たりする。
そんな中で、故郷を奪われた青年は、奪われた土地で農業を始める。
自分の土地で暮らす。その当たり前の行動はあるいは一つの抵抗なのかもしれない。
ともあれ福島の事実を淡々と描きながら、前向きな雰囲気が出ているのが良かった。
地味ではあるが、味わい深いバランスの取れた作品と感じた次第である。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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