2013年度作品。アメリカ=フランス映画。
第66回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた、コーエン兄弟による人間ドラマ。ボブ・ディランが憧れたという、60年代の伝説のフォークシンガー、デイヴ・ヴァン・ロンクの回想録を元に、トラブル続きの日常から逃げ出すように猫と共に旅に出た男の1週間の物語がつづられる。
監督はジョエル・コーエン、イーサン・コーエン。
出演はオスカー・アイザック、キャリー・マリガンら。
コーエン兄弟と言えば、「ファーゴ」や「ノーカントリー」辺りが代表作なわけで、僕もその手の作品の方が好きだ。
だが、本作はそういう系統とは違う。
正直言うと、予告編を見た段階では合わないように感じていた。
だがそれでも、コーエン兄弟最新作、しかもカンヌのグランプリと聞いては否応なく期待が高まるというもの。というわけで悩んだ末に見に行ってみた。
結果的には最初の直感はあっていたらしい。
ストーリーのない映画は嫌いではないのだが、この作品の雰囲気には入れなかったきらいがある。
結局主人公にも、主人公を取り巻く状況にも、心惹かれなかったのが大きいのだろう。
ただし映画の雰囲気自体は印象深い作品でもあった。
主人公のルーウィンはダメ人間であろう。
友人の家を転々としているし、その短気な性格で泊めてもらっている相手にケンカをふっかけることもある。
歌手のステージでは悪態をついたりと、そのほかにもダメなヤツだなと思う場面はあった。
自分の子どもを産んだ女にも結局会いにいかなかったし、ぶっ倒れた老人を救いもせず、猫も見捨てている。
それでいて冷たい人間ではなく、若干の後ろめたい表情も見せている。
よくも悪くも平凡な男なのだろう。
こういう男っていそうである。
そんな彼にはあまり幸運とは言いがたい状況ばかり訪れる。
そしてユリシーズ(オデュッセウス)のように放浪を続ける羽目になるのだ。
その状況をオフビート感たっぷりに描き続けている。
僕はダメだったが、この雰囲気にはまりさえすれば、この映画を楽しめるに違いない。
またフォークソングは雰囲気があり、なかなか良かった。
ともあれ音楽映画らしさと、独特の雰囲気は印象深い。
僕の趣味ではないが、こういった映画もありなのだろう、と思った次第である。
評価:★★(満点は★★★★★)
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