2013年度作品。ドイツ=ハンガリー映画。
ハンガリー出身の作家アゴタ・クリストフによるベストセラー小説を映画化した人間ドラマ。第2次世界大戦下、農園を営む意地悪な祖母の元へ疎開した双子の兄弟が体験する出来事を彼らの目を通して描き出す。
監督はヤーノシュ・サース。
出演はアンドラーシュ・ジェーマント、ラースロー・ジェーマントら。
原作が好きなので見に行ったが、原作に忠実につくられているように感じた。
一言でまとめるならば、苛酷な世界を生きる少年たちの叙事詩といったところだろうか。
映像になった分、原作で感じた双子の一体感はあまり感じなかったが、全編に漂う静謐さは小説世界と近似していて、目を引く作品である。
舞台は1944年の国境近い村だ。
双子の少年たちは祖母の家に疎開し、母親とも別れることとなる。祖母は子どもたちを平気で虐待するような女で、孫であっても特に愛情を表したりはしない。
それは大層冷たい環境である。
そういうこともあってか、少年たちは痛みに耐える訓練や、空腹に耐える訓練に励むなど、自分たちに無茶な課題を課していく。
その様は見ていても痛ましい。
少年たちは本来的には普通の子どもたちだ。
たとえば自分たちに優しさを示したユダヤ人の靴屋のために怒りを表すし、盲目の母を持つ少女のことを許し、友人にもなっている。
だが時代が時代なせいか、苛酷な部分もある。
牧師を恐喝するような真似だってするし、ユダヤ人を告発した女性に復讐めいたこともする。
本来の彼らは優しい。
でも厳しい世界に合わせ、自分たちを適応させているのだ。
本当に痛ましいことだ。
だけどその過程で、苛酷な祖母と奇妙なつながりが生まれていく点はおもしろい移ろいと言えよう。
さて本作も原作同様、ラストが少しおそろしかった。
二人が離れ離れになるために、そこまでするのか、という風にも感じて、ぞくりとする。
だがこれが二人の少年たちなりの選択なのかもしれない。
その残酷な選択が、映像が静かな分、よけいに深い余韻を残す一品だった。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
原作の感想
アゴタ・クリストフ『悪童日記』
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