2006年度作品。ドイツ=フランス=スペイン映画。
18世紀パリ。悪臭立ち込める魚市場にグルヌイユは産み落とされる。一切の体臭を持たない彼は驚異的な嗅覚の持ち主でもあった。ある時、彼は街で偶然出会った女の香りに魅せられ、その香りを閉じ込めたいと調香師に弟子入りする。
監督は「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ。
出演はベン・ウィショー。「レインマン」のダスティン・ホフマン ら。
グロテスクな映像の映画である。
たとえば冒頭のグロテスクな映像。魚やらウジやらの映像を見ているだけで、画面の向こうから明確な臭気が伝わって来るような気がした。パフュームというタイトルをつけるだけあり、匂いに対してかなり挑戦的な映画という印象を受ける。
また匂い以外でも、グロテスクな面が本作は多い。
特にラスト付近の映像はどうだろう。そのシーンのときには思わず笑ってしまったが、どこか生々しく、狂気じみている。まさにこれぞグロテスクの極みではないだろうか。
そういう観点からもおもしろい映画だと思った。
個人的に興味を持ったのはこの映画の主題とも言うべき点だ。
主人公は匂いにとりつかれた男の物語だが、これは言ってしまえば、愛を求める男の映画だろうという気がする。
彼が匂いを求めるのも、自分のアイデンティティを求める形になっているし、最後の行動も、表面的な匂いしか自分は再現できず、内面にはだれにも達してくれないという絶望から来るものだ。
その描き方がどこか文学的で、個人的には好みである。
ラストの展開が伏線なしなので、唐突な感じがして不満だったが、予想通りの展開をラストで完全に壊した点など目を引く部分も多い。良質な作品である。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
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