私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「最愛の大地」

2013-08-19 20:38:01 | 映画(さ行)

2011年度作品。アメリカ映画。
アンジェリーナ・ジョリーの初長編監督作となるヒューマンドラマ。92〜95年にかけてヨーロッパで起きたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争により、運命を大きく狂わせていく2人の男女の姿を映し出す。ヒロイン、アイラ役のザーナ・マリアノヴィッチ、相手役のゴラン・コスティックなど紛争を経験した同地の俳優たちが多数起用されている。
監督はアンジェリーナ・ジョリー。
出演はレード・セルベッジア、ザーナ・マリアノヴィッチら。




物語として見るなら、本作は微妙である。
しかし社会正義に対する強い意識が存分に伝わる作品でもある。
「最愛の大地」に関して、率直に語るなら、そうなるだろう。


舞台はユーゴ内戦時のボスニア・ヘルツェコビナ。
そこで民族浄化を進めるセルビアの兵士は、むかし恋したムスリムの女性を見つける。彼は彼女を虐待から守ろうとし、逃亡の手引きもする。しかし彼女は再びセルビアの兵舎に戻されてしまう。彼は彼女を自分の女として囲うようになるが。。。ってのが流れだろうか。

そういった題材は、一見おもしろそうである。
だがテンポが悪くて、いまひとつ乗り切れない。
それもこれも、淡々と事実を羅列しているだけに見えるからだ。
どうせなら緊迫感を煽るなどしてもいいのに、演出はどこか中途半端に感じる。要は退屈なのだ。

僕の趣味もあることは否定しない。それでも見応えのある映像と、ショッキングな内容なだけに、もったいない気もする。


しかし描かれている内容そのものはすばらしい。
ムスリムという理由で男だけ射殺されるなど、冒頭からいきなり衝撃的である。
男性だけでなく女性も、敵の兵士からレイプされたり、辱めを受けたりと実にエグい。
そのせいで精神的に追い詰められている女性もいるけれど、さもありなんとも思う。

個人的に一番ひどいと思ったのは、そうやっていたぶっている女性を人間の盾にして敵のアジトに乗り込むところだろうか。
その非人間的な行為はむごいとしか言いようがない。


物語運びなど、僕の趣味からははずれる面はある。
しかしそこで描かれる内容そのものは、まちがいなく見るだけの価値がある。
この世界で現実に起きた無残な出来事を、切々と訴えるアンジェリーナ・ジョリーの姿勢に感服するばかりであった。

評価:★★(満点は★★★★★)

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