2010年も終わりということで、今年読んだ本のベスト10を選んでみた。
1位 伊藤計劃『虐殺器官』
911以降の問題点を、近未来を舞台に、徹底的なディテールと大きな設定の元に描いたエンタメ大作。
プロットのおもしろさ、際立ったアクションシーン、優れた哲学性、圧倒的描写力に、ただただ感服。
2位 マイクル・コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』
ラストの大どんでん返しに、してやられてしまった。伏線も丁寧に張っており、充分に驚かされる。
恋愛小説としても、青春小説としても楽しく、なつかしさと甘酸っぱさで微笑ましい気分になる。
3位 村上春樹『遠い太鼓』
ユーモアあふれる文章が多く、いくつかの場面で大いに笑う。個人的にはクローゼットの虐殺が好きだ。
旅行記としても充分におもしろく、その土地で暮らした人間だけが書けうる実感に満ちた文章が、心に響く。
4位 イサベル・アジェンデ『精霊たちの家』
魅力的で個性的なキャラクターと、イマジネーションに満ちあふれたエピソードに心奪われる。
特に後半の展開はすさまじく、現実と微妙にリンクした内容に、作者の怒りを見るような気がする。
5位 ディーノ・ブッツァーティ『神を見た犬』
短編集ということで、微妙な作品もあるが、本作品中の『コロンブレ』は文句なしの傑作。
謎の魚コロンブレにつきまとわれた男の悲壮とも狂気ともつかない姿と、そのラストに軽い衝撃を受ける。
6位 コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』
抑制された静かな文章の中から、荒廃した世界が浮かび上がってくる様が非常に好ましい。
理性を貫こうとする父子の姿と、互いの愛情がすばらしく、ダークなわりに読後感が良い。
7位 伊坂幸太郎『ゴールデン・スランバー』
いままで読んだ伊坂作品の中では、最も完成度の高い作品と思う。伊坂幸太郎の良さがすべて出ている。
逃亡する青柳を助ける、友人や元カノたちとの関係が温かい。
8位 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』
表題作の、聡明で生き生きとした少女と、気弱なエイリアンの関係が本当におもしろい。
ラストの少女の行動と決断が美しく、汚れた心の僕でさえがつんとやられてしまった。
9位 浅田次郎『蒼穹の昴』
どのキャラクターも個性的で、アクが強く、とことん魅力的。そんな人物群にほれぼれしてしまう。
物語も波乱万丈で、ワクワクドキドキできる一級の娯楽小説。
10位 マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』
背景の見えないダイアローグの中から、徐々に二人の関係が見えてくる過程がスリリング。
読み手の想像力を惹起する会話体の中から、濃密な情愛が浮かんでくる様がなかなか優れている
◎番外
村上春樹『象の消滅』
上記の作品は各短篇集によって読んだことがあるので、ランキングからははずした。だがすばらしいまでの傑作である。
●総括
奇しくも普段読まないSFが上位に来た。
普段読まないからと言って、手を出さないと、優れた作品には出会えないものらしい。SFもちゃんと読んでみるものだ。
今年はいやなことがあったが、読書的にはいい1年だったと思う。
過去の私的ランキング
2006年度 私的ブックランキング
2007年度 私的ブックランキング
2008年度 私的ブックランキング
2009年度 私的ブックランキング
2006年度 私的映画ランキング
2007年度 私的映画ランキング
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1位 伊藤計劃『虐殺器官』
911以降の問題点を、近未来を舞台に、徹底的なディテールと大きな設定の元に描いたエンタメ大作。
プロットのおもしろさ、際立ったアクションシーン、優れた哲学性、圧倒的描写力に、ただただ感服。
2位 マイクル・コーニイ『ハローサマー、グッドバイ』
ラストの大どんでん返しに、してやられてしまった。伏線も丁寧に張っており、充分に驚かされる。
恋愛小説としても、青春小説としても楽しく、なつかしさと甘酸っぱさで微笑ましい気分になる。
3位 村上春樹『遠い太鼓』
ユーモアあふれる文章が多く、いくつかの場面で大いに笑う。個人的にはクローゼットの虐殺が好きだ。
旅行記としても充分におもしろく、その土地で暮らした人間だけが書けうる実感に満ちた文章が、心に響く。
4位 イサベル・アジェンデ『精霊たちの家』
魅力的で個性的なキャラクターと、イマジネーションに満ちあふれたエピソードに心奪われる。
特に後半の展開はすさまじく、現実と微妙にリンクした内容に、作者の怒りを見るような気がする。
5位 ディーノ・ブッツァーティ『神を見た犬』
短編集ということで、微妙な作品もあるが、本作品中の『コロンブレ』は文句なしの傑作。
謎の魚コロンブレにつきまとわれた男の悲壮とも狂気ともつかない姿と、そのラストに軽い衝撃を受ける。
6位 コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』
抑制された静かな文章の中から、荒廃した世界が浮かび上がってくる様が非常に好ましい。
理性を貫こうとする父子の姿と、互いの愛情がすばらしく、ダークなわりに読後感が良い。
7位 伊坂幸太郎『ゴールデン・スランバー』
いままで読んだ伊坂作品の中では、最も完成度の高い作品と思う。伊坂幸太郎の良さがすべて出ている。
逃亡する青柳を助ける、友人や元カノたちとの関係が温かい。
8位 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』
表題作の、聡明で生き生きとした少女と、気弱なエイリアンの関係が本当におもしろい。
ラストの少女の行動と決断が美しく、汚れた心の僕でさえがつんとやられてしまった。
9位 浅田次郎『蒼穹の昴』
どのキャラクターも個性的で、アクが強く、とことん魅力的。そんな人物群にほれぼれしてしまう。
物語も波乱万丈で、ワクワクドキドキできる一級の娯楽小説。
10位 マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』
背景の見えないダイアローグの中から、徐々に二人の関係が見えてくる過程がスリリング。
読み手の想像力を惹起する会話体の中から、濃密な情愛が浮かんでくる様がなかなか優れている
◎番外
村上春樹『象の消滅』
上記の作品は各短篇集によって読んだことがあるので、ランキングからははずした。だがすばらしいまでの傑作である。
●総括
奇しくも普段読まないSFが上位に来た。
普段読まないからと言って、手を出さないと、優れた作品には出会えないものらしい。SFもちゃんと読んでみるものだ。
今年はいやなことがあったが、読書的にはいい1年だったと思う。
過去の私的ランキング
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