■「操作」などない
新聞社の実施する世論調査については以前から根強く「都合のいいように操作されている」という言説があります。それなりに高額の費用と人手をかけて実施している世論調査を「操作」すれば、費用と仕事がすべて無駄になります。そんなことはありえません。
■万能ではない
そのうえで世論調査には多くの誤解があります。「操作されている」と信頼性を疑う意見の裏返しで、逆に万能だと思われている部分もあります。あらゆる調査と同様、世論調査にも一定の限界があります。よく話題になる内閣支持率も調査方法や選択肢と離れて数字だけを見るべきではありません。たとえば、実施する報道機関が違えば選択肢や聞き方が異なるため、単純に数字だけで比較することはできません。
毎日新聞が定例で実施している全国電話世論調査では内閣支持率の選択肢は「支持する」「支持しない」「関心がない」の三つです。10月26、27日に実施した結果では「支持する」が48%、「支持しない」が30%、「関心がない」が19%でした。 朝日新聞の世論調査は「支持する」「支持しない」の二択です。11月16、17日実施の結果では「支持する」44%、「支持しない」36%で、その他・答えないが20%でした。
聞き方が異なれば、答えが違うのは当然です。この結果からだけでは「毎日のほうが朝日より内閣支持率が高い」とか「10月末から11月中旬にかけて内閣支持率が下がった」などと言えないことは明らかです。
■変化が重要
では何が意味があるのでしょうか。当然ながら同じ報道機関では同じ聞き方をしますので、時間による変化を見ることができます。
12月1、2日に毎日新聞が実施した全国世論調査では「支持する」は42%、「支持しない」は35%、「関心がない」は21%でした。10月の調査と比較して内閣支持率は6ポイント下がったことになります。 各社の世論調査結果を折れ線グラフにして表示すると数字は異なっても、支持率が上がる、下がるという推移はおおむね近い形になります。これが世論調査の意味です。
■統計的誤差
世論調査は変化、言い換えれば数字の上下に意味があると説明しましたが、この数字の上下を見る場合にも注意が必要です。毎日新聞の定例の全国電話世論調査は、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った固定電話と携帯電話の番号に調査員が電話をかけるRDS法で行われ、サンプル数は約1000です。統計的に十分な信頼を得られる数字です。同時に3ポイント程度の誤差があります。
菅義偉官房長官は記者会見で世論調査の結果について質問されると、よく「一喜一憂しない」と答えていますが、実際には政治家は世論調査を非常に気にしています。 「支持率が1ポイント上がった(下がった)」と喜んだり、悲しんだりする政治家がいますが、これは誤りです。1ポイントは誤差の範囲なので、正解は「横ばい」「同程度」です。
こうしたさまざまな限界をふまえたうえで利用すれば、世論調査は世論の風向きをいち早くつかむことができる有効な道具になります。(政治プレミア編集部)
毎日新聞 政治プレミア
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