The Confession of Brother Athelstan (A short story) (The Sorrowful Mysteries of Brother Athelstan) 価格:(税込) 発売日:2013-02-04 |
短いと思ったら,結構長いですw
クランストンの冷やかしに対応するにはちょっと疲れたアセルスタン,トーナメント会場を眺めると,既に観客は去り,テントの周りに武装兵が立っているだけ。ベネディクタを正視できない,恋する修道士アセルスタン(笑)
テントでル・マルシェと面会。血のような赤毛の彼はかなり若いですが,戦う人とは思えない落ち着いた物腰。彼の後ろには,押し黙って武器の手入れをしている若い従者がいます。彼の名はジャイルズ・レ・ストレンジ。どうやら直前に相当怒られた感じ。
ル・マルシェは2人を見るなり「その体型とワインの息は,クランストンさんですね。そして,忠実なブラザー・アセルスタン。率直に行きましょう。私はウッドヴィルを殺していません。槍がに金属の先端が付けられていたのは知りませんでした。おわかりと思いますが,穂先を付けるのは誰にでもできます。」
レ・ストレンジ(Le Strange)。。おおお,ポタマニアにはおなじみのLestrangeってここから来たんだ。本当にある名字なんだ。
クランストン「説明してもらえますか」
ル・マルシェ「最初の一戦で槍が壊れたのでここへ戻り,従者から次の槍を受け取りました。尖っているのは知りませんでした。皆丸めてあると思ってました。私の責任ではありませんよ。」
「では誰の責任ですか?」
「ウッドヴィルに聞いてみれば(苦笑)。覚えているのは,彼に向かって馬を走らせ,槍を低く構えた時に…」
「どうしたのですか?」
「ウッドヴィルが鞍の上でよろけたように見えたんですよね。盾が落ち,槍が傾いてました。その時には私はもう止まる事ができなかったんですよ。…盾を狙っていたのですが、それが落ちてしまったので,もろに胸を突いてしまったのです。」
彼はアセルスタンに慈悲を乞うような目をして見た。
「…奇跡が起きて欲しいと思いました。ちょっとのアザで済んで欲しかった。私も皆と同じように辛いのです。」
アセルスタン「あなたが槍を構えた時,穂先に金属は見えたのではないですか?」
クランストン「ないない」
ル・マルシェ,ちょっと笑って「私は兜を被り面頬を降ろしていました。それと馬上槍試合の基本です。自分の槍を決して見てはならない,相手を見ろ,です。」
アセルスタン「ウッドヴィルは好きでしたか」
「いいえ」
「どうして?」
「あいつはジョン・オブ・ゴーントの党の輩です。私は弟君のトマス・グロスター公爵の家来です。ご兄弟の間には情はありません。家来衆も同様です。私は忠義の男です。トマス様が嫌いなものは私も嫌いです。ゴーントも,ウッドヴィルも。」
アセルスタン「女性の事でも何かあるのでは」
「そうです。私はレディ・イサベラに結婚を申し込んでいました。しかしゴーントは,彼女は王室の保護下にあるという理由で拒絶,ウッドヴィルも結婚を申し込んでいます。彼女は公正な女性です。」
クランストン「さらに魅力的な土地も持っていたという事だね」
「そうです。ウッドヴィルは求婚者でライバルです。決闘で殺す事もできましょう。しかしトーナメントで殺す事はありません。」
アセルスタン「賞金は欲しかったですか?」
「もちろんです。…しかし反則により私は有罪にされようとしています。その名誉も剥奪されてしまいました」
クランストンはジャイルズに,槍を確認したかどうか訪ねます。ジャイルズは気難しそうな,色白だが鋭い目をした少年だ。しかし彼は身長の2倍もある槍の穂先を,いちいち確かめる事などできない,と,不機嫌そうに答えます。
するとル・マルシェは「この子は私も,トーナメントも嫌いなんですよ。僧侶になりたんです。戦士には向かないと。」
アセルスタン「それは本当なの? ジャイルズ」確かに彼は,血みどろの戦地で働くより,勉強したり祈ったりする方が似合いそうです。
「そうです。私はには使命があると思います。しかしオリバー・ル・マルシェ様の元で働く契約も結んでいます。お勤めが終わったら故郷へ帰り,枢機卿に拝謁して,僧侶のお役目を賜ろうと思っています」
アセルスタン「君は主人が嫌いで,名誉を傷つけるために槍の穂先を付け換えたと疑われるかもしれない。いずれにせよ,あなた方お2人は槍に触っています。あるいは,オリバー殿,あなたがウッドヴィルを嫌ってイサベラ嬢と結婚するために殺したと疑う人もいるでしょう。あるいは2人で企んだと言う人もいるかもしれません。」
するとジャイルズ「主人はバナレット騎士です。確かに,お仕えする事は好きではありませんが,バナレット騎士と,そして聖職の道を歩もうとしている私がどうしてそのような恐ろしい事をするでしょうか?!」
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