社長決裁

2008年07月18日 18時11分57秒 | B地点 おむ

 

(承前)

「いやあキミィ、ずいぶん降ったねえ」

「おむ社長! お忙しいところご足労をお掛けして、誠に恐縮です」

「ほらほらキミィ、何してるのかね。社長のイスを早く組み立ててくれたまえよ」

「申し訳ございません、直ちに」
「で、何かね、この書類は?」

「はっ、副賞の件でございます」

「愚考いたしますに、今般の賞品、戸外で用いるものではありませんし、野良猫であらせられる社長におかれましては、人工の玩具ではなく自然界の動植物で遊ばれるのが至当かと」

「うん、そりゃそうだよ、キミィ」

「つきましては、ご縁の深いキジトラ兄弟様への贈り物になさっては如何でしょう?」

「キミィ、そりゃまさに、私が以前から考えていたことだよ」

「恐れ入ります。では、社長、ご決裁を!」

「よろしい!」

ばーん

「じゃ、キミィ、宜しく頼むよ。くれぐれも丁重にな」

「はっ、心得ております。お任せ下さい」

「じゃ、私は寝るからね」

「はっ、社長におかれましては、おこころ安らかに御寝あそばされますように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


副賞はもちろん福祥である

2008年07月18日 12時03分25秒 | B地点 おむ

 

荷物が届いた。何だろう、もしかして……?

おお、賞品! ……ではない。
副賞だけが先に来たようだ。

(参照、「おむの快挙」

おお、シャカシャカチューブ!
おお、ボンボリ付き!
では注意をよく読んで、
本体を出してみましょう。

拡げてみましょう。……で、でけーっ!

……早速、おむに報告しなくては。
けど、大雨が降ったから、いるかな?

いた!

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


センベツ代わりに

2008年07月15日 18時14分00秒 | B地点 おかか

 

「おう若造、明日は早朝から出かけるって?」

「ええ、箱根へ行くんです」
「にしらはろくな銭もねいくせに箱根だってけつかる」

「先生、またそのネタですか」
「すまん、すまん」

「ともかく、準備がありますんで今日はこれで」
「ではセンベツ代わりに、とっておきの芸を見せてやろう」

「おお、先生の芸を拝見できるとは!」
「いいか、目ん玉かっぽじってよく見ておけよ」

「……目をかっぽじったら痛いっすよ」
「瞬間芸、ブタさん!」
「……」

「……」
「……ま、まあ、気をつけて行っといで」

「ありがとうございます、行って参ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ご出産おめでとう!

2008年07月14日 16時48分00秒 | G地点 シロC

 

「やあチッチ、ひさしぶり」

「カメラのお兄さんか。三週間ぶりだねえ」

「ずっとおむさんにつきっきりだったんだ。でも今日、伝染性貧血じゃないって検査結果が出たそうだよ」

「それはよかった! でもねえ、こっちだって大変なんだよ」

「チッチのその姿、大変そうには見えないけど」
「大変なんだってば。まず、このナナちゃん」

「ナナちゃん?」
「前にも会ったことがあるでしょ?」

「そうだったかな、サクラちゃんと見分けがつかないよ。あれ、僕はサクラちゃんとナナちゃんを混同してるのかなあ……?」
「ほらこの首。浅い傷だけど、引っ掻くから、なかなか治らないんだ」

「うわっ! でも、おばちゃんが看てくれてるんだよね」
「それから、ぶたさんフェイスのシロさん」

「うん、実は女の子なんだろ……って、なんだか、顔つきが以前とは変わったんじゃない?」
「そうかもね。なにしろ、シロさんは今、子育て真っ最中なんだから。赤ちゃんが近くにいるらしいよ」

「な、なんだってー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


我と我が身を

2008年07月13日 18時33分28秒 | B地点 おかか

 

彼はいつも、実に渋い魅力を放っている。
さらりと垂れた前髪が、ではなくて草の葉が、なんとも絵になるではないか。
鋭い視線の表情も、きりっと決まる。
のみならず、愛らしい面もふんだんに見せてくれる。
そんな彼の様子が、今日はなんだか、おかしい。

こうべを垂れたまま、水をじっと見詰めているのだ。
ま、まさか?
世をはかなんで、我と我が身を水中に投じようと……!?

あああっ!
……な、なあんだ。水を飲みに行ったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


驟雨の後

2008年07月11日 16時36分14秒 | B地点 おむ

 

驟雨に追われた私達は
ここに腰を据えた

この橋の下ならば
濡れることもない
雨脚は強いが
やがて止むだろう
雨雲は風下にあるのだから……
そして再び木漏れ日が
待ち兼ねた君は
草叢に躍り出た

帰って来た君は
宝石を私にくれた

この世で最も価値ある宝石を
私だけにくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


荘厳なる営為

2008年07月10日 17時48分25秒 | B地点 おかか

 

 

「早速、この草を整えて、と」

「ああ……先生……」
「よっ。……うむ、快調、快調」

「まいったなぁ」

「これは崇高にして厳粛なる生の営みだぞ。一切の先入観を廃して、虚心坦懐に直視すべきだよ」

「僕としては、クリックして拡大しないよう、読者に注意したいですね」

「うむ、キレもいい」

「コクもある、とか何とか言いたいんでしょう、先生」
「どうだこの身のこなし。若い者には負けんぞ」
「健康のバロメーターだし、よ~くチェックしなくてはな」
「さて、念入りに後始末をして」
「次は水を飲みに行こうかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


次はその「まさか」なのだよ

2008年07月10日 17時46分56秒 | B地点 おかか

 

「さて、食事も終えたし」
「この辺の草が、いい感じだな」

「先生……?」
「くるっと向きを変えて、と」

「ああ、やっぱり……」
「先生、なにも僕が寝てる側で……」

「何を言う、ここは私のいつもの場所だぞ」
「カメラの若造がここに椅子を置いたのが悪いのだ」
「カメラのお兄さんは日陰を選んでくれたんですよぅ」

「日陰なら他にいくらでもあるだろ?」

「くんくん。うむ、今日も快調だな」

「やれやれ」
「食事を済ませて、おしっこも快調、となると、次はアレだな」

「せ、先生、まさか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


不覚

2008年07月10日 16時58分04秒 | B地点 おかか

 

「……なあ若造、内々に頼みがあるんだが。」

「なんでしょう、おかか先生?」

「じ、実はな……。」

「先生、どうなさったんです。落ち着かないご様子ですね。」

「いい年をして、恥ずかしいんだが……」

「もしかして先生、照れてらっしゃるんですか?」
「たまには人間に、スリスリ甘えてみたいんだよ。」

「えっ!? 先生が?」
「な、たまにはいいだろ?」

「……私は大歓迎ですが、後ろでおむさんが見てますよ?」
「な、なにっ!?」
じー
「しまった、見られたか、聞かれたか? ……不覚!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


シンマツバヒバサミ

2008年07月10日 10時30分00秒 | B地点 おかか

 

すまんがちょっと聞いてくれ。真面目な話だ。
まずこれを見てくれ。
07月01日の16時20分に撮影された写真だ。
手前にいるのが私、奥にいるのが、おむ。
上の写真より数秒前の撮影だが、おむの足元にあるゴミが見えるだろう。これはハンバーガーの包装紙だった。誰かがここで食べて、包みを捨てたらしい。

ハンバーガーにはタマネギが含まれている。これは、猫にとっては、毒なのだ。ネギの仲間(ネギ・タマネギ・ニンニク・ニラ)には、猫の赤血球を壊す成分があるそうだ。熱を加えてもこの毒は消えない。「猫に与えてはいけない食物」の筆頭だ。
誰かがここで頻繁に、そういった食物を猫に与えているのかもしれない。このところおむの体調がすぐれないのを、読者諸兄姉はよくご存じだろう。ボランティアさんが献身的に面倒を見てくれているから大丈夫だとは思うが。

ところでゴミの方だ。カメラの若造が今日、これを買ってきた。いわば「巨大なピンセット」だな。で、奴がこれを使ってゴミ拾いをしていたわい。Lサイズのゴミ袋が、すぐにいっぱいになったぞ。
カメラの若造は、日常的にゴミ拾いをするほどの善人ではないが、ごくまれに、「写真の背景にゴミが写るのが嫌だ」という不純な理由で、ゴミ拾いをすることがあるのだ。
まあそんなわけだ。

猫にネギ・タマネギ・ニンニク・ニラを喰わせてはいかん。
やたらとゴミを捨てるのもいかん。

私がいま言いたいのは、この二つなんだよ。

話を聞いてくれて、ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


雰囲気を和ませようとしたんだが……

2008年07月09日 16時43分01秒 | B地点 おかか

 

「先生、僕、貧血だって診断されちゃって……。」

「うむ、大変だなあ。」

「どれどれ、私がよーく見てやろう。」

「え?」
「……何してるんですか、先生?」

「いや、だから、貧ケツだろ?」
「なーんちゃって、はっはっはー!」

「先生、それはちょっと……。」
「ふん、もういいですよ。」

「すまん、すまん、機嫌を直してくれ。」
「ほら、私のケツも見せてやるから。」

「先生!」
「いくら先生でも、そういう冗談は笑えませんねっ。」

「……いや、ほんとうにすまん、悪かった。」

「今日は大失敗だ、私としたことが……。ごめんよ。」