![]() |
![]() |
|
|
|
![]() |
喫茶店に行こう 17杯目 |
![]() |
雨である ―― 。 |
![]() |
こんな日でも、二人の喫茶店は営業中。 |
![]() |
しかし ―― 「……おい。もう店を閉めようと思うんだ」 |
![]() |
「そうですね。今日はもう、お客さんは来ないでしょう」 |
![]() |
「そういう意味じゃない。この喫茶店は廃業する、という意味だ」 |
![]() |
「は、廃業!? 店をたたむんですか!?」 |
![]() |
「断腸の思いだが……何しろ負債が数億円に達しているのでな……」 |
![]() |
「じゃ、じゃあ、僕の三億円を使って下さいっ」
|
![]() |
「それはできん! お前に甘えるわけにはいかん! 絶対にな!」 |
![]() |
「金は、大事にしろ。銀行にでも入れておけ……」 |
![]() |
「……」 |
![]() |
「給料もろくに払えなかったが、今までよく頑張ってくれたな。ありがとう」 「そ、そんな……お礼なんて……」 |
![]() |
ガクッ 「うううっ!」 |
![]() |
マスターは、くずおれて、慟哭した。 「うう……ううううう……」 |
![]() |
おむさんも、泣いた……。 「う、ううっ」 |
![]() |
「いや……泣いてちゃだめだ……うまい方法がある筈だ……」 |
![]() |
「そうだ! あの人に頼んでみよう!」 |
![]() |
すたすた
|
![]() |
「おや、喫茶店のウエイター君じゃないか。何か用かね?」 |
![]() |
「実は、かくかく、しかじか……」 |
![]() |
「ふ~む。助けてやりたいが……私とて、億単位の金は出せん」 |
![]() |
「僕が三億円出しますから、あなたは芝居を打って下さい!」 |
![]() |
「ほほう、芝居だと? 詳しく聞かせて貰おうか……」 |
![]() |
―― 30分後。 |
![]() |
「おいっ、マスター! 店は開いてるか?」 |
![]() |
「い、いらっしゃいませ……」 |
![]() |
「アイスのエスプレッソを出せ! もちろん金は払う!」 |
![]() |
「は、はい」 |
![]() |
「お待たせしました……」 |
![]() |
「うまかった! 最高だ! よしっ、三億円払おう!」 |
![]() |
「えええっ!?」 |
![]() |
事情を知らないマスターは、三億円を受け取った。 ―― そして、店を立て直した。 |
![]() |
おむさんは、店のために全財産を投げ出したわけだが ―― しかし、微塵も悔いはなかった。 |
![]() |