僕が見ていてあげる

2011年09月20日 16時45分33秒 | B地点 おむ

 

 

雨が降る

とても強い台風が 近付いている
雨脚は 弱くなったり 強くなったり
そんな淋しい 雨の日に ――

ヒガンバナが ひっそりと

誰にも知られず 花を咲かせた
やっと咲いたのに ――

こんな日だから 誰も花を見に来ない
雨滴に濡れて 美しいのに ――

台風で すぐに散ってしまうかもしれないのに ――

花を見る者は 誰もいない
「で、でもさ。ヒガンバナどころじゃないよ!」
「台風だもの! 早く避難しなくちゃ!」
「うむ。私もここで、雨を避けるぞ」
「僕は……僕は、ここにします」
「そんな所じゃだめだ! 濡れてしまうぞ!」
「もう少し! もう少しだけ、ここにいます」
「ヒガンバナを、見ていたいから」
「ここなら、ヒガンバナが、よく見えるから……」