長い夜

2008年12月16日 05時18分59秒 | B地点 おむ
日付の変わる頃から、おむは鳴き続ける。
部屋の外に出たがるのだ。
「鳴き」続けるというより「叫び」続けるに近い。
クランプで挟み、更に敷布団で押さえて、凄まじい重さにしてある障子も、とうとう引き開けてしまった。
体調が良くなるにつれ、「望郷の念」が一層つのってくるのだろうか。

部屋の外に出してやっても、無論そこは彼が満足すべき場所ではなく、
彼は途方に暮れたかのような瞳で私を見上げ、また叫び続ける。

2時間の後、憑き物が落ちたかのように彼は沈黙し、私の横にそっと座る。
死のような、しかし暖かい、不思議な静寂に私達は包まれる。

 * * * 

やがておむはトイレに入り、排尿した。
シャーという威勢の良い音を私は初めて聞いた。
膀胱も尿道も、快方に向かいつつあるに違いない。





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