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大倉草紙

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【東京】 よみがえる浮世絵-うるわしき大正新版画展 (江戸東京博物館)

2009年10月27日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
9月27日(日)


「江戸時代の浮世絵版画と同様の技法によって制作された、大正から昭和初期に興隆した木版画」のことを新版画というらしい。
もう一度観てもいいかも、と思えるくらい、素晴らしい内容の展覧会だった。


川瀬巴水『清洲橋』
ロバート・ムラー氏は、この一枚から新版画のコレクションを開始したそうだ。
川瀬巴水の作品はいくつか展示されていたが、どれも吸い込まれてしまいそうに美しい。


伊東深水『対鏡』
この展覧会の図録の表紙にもなっている。
伊東深水の作品を観て、グッときたことはないのだが、これは好み。


橋口五葉『髪梳ける女』
髪のかんじが実に見事。
表情や手、そして背景のキラ刷りも美しい。


川瀬巴水『増上寺の雪』
42版もの工程から成る順序摺の過程が分かる映像や、版木の展示があり、非常に面白い。
色が重ねられるたびに、深みが出てくるのが実感できる。

【東京】 皇室の名宝 ― 日本美の華 1期 永徳、若冲から大観、松園まで (東京国立博物館)

2009年10月26日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
10月24日(土)
当日の行程: 【報土寺】【勝海舟邸跡】【赤坂氷川神社】【志賀直哉居住の跡】【久国神社】【勝安房邸跡】【日枝神社】 → (銀座線・溜池山王駅~上野駅) → 【皇室の名宝 ― 日本美の華 1期 永徳、若冲から大観、松園まで(東京国立博物館)】


この日、『皇室の名宝』展を観に行く予定はなかったのだが、誘いのメールを受け取り、赤坂散策を切り上げて、上野に向かった。
到着したのは午後2時半過ぎ。
館内に入るのに5分ほど並ぶ。
本当に「名宝」だらけだ。
思い出すままに書く。


『唐獅子図屏風』狩野永徳筆(右隻)
右隻の唐獅子は貫禄がある姿。
左隻には、永徳の曾孫・常信が描いた唐獅子が置かれている。
絶対に強くないだろうな、という感じの唐獅子だけれど、なんともいえない愛らしさがある。
並べてあるからこそのおもしろみ。

  
『動植綵絵』伊藤若冲筆
左から、「老松白鳳図」、「向日葵雄鶏図」、「紅葉小禽図」
「群魚図」のルリハタの描写に、プルシアンブルーを用いていたことが分かったとニュースで見た。
これまでは、平賀源内の『西洋人物図』(1770年代前半)で使われたのが最初だとされてきたが、若冲はそれよりも早く、プルシアンブルーの絵の具を取り入れていたらしい。
このことを意識して観たせいかも知れないが、「群魚図」以外の作品においても、ところどころに用いられている青色が画面を引き締めていて、とても美しく感じられた。
それにしても、30幅揃うと迫力あるなあ。
どれもこれも、素晴らしい。

●『旭日猛虎図』円山応挙筆/まるまる太った猫のようでかわいい。長くて、背中から角が生えたように折れ曲がっている尻尾が気になる。
●『唐子睡眠図』長澤蘆雪筆/これも印象深い。ぐっすり眠った子どもの絵。
●『虎図』谷文晁筆/水面に映った虎の顔がよかった。
●『花鳥十二ヶ月図』酒井抱一筆/どれも素敵だ。こういうものを目にすると、月替わりで自宅に飾ることができたらどんなに嬉しいことだろう、といつも思う。
●『西瓜図』葛飾北斎筆/北斎は好きなのだけれど、これはちょっと……。斬首を想像してしまった。
●『御苑春雨』横山大観筆/幽玄の美といった感じ。
●『宮女置物』旭玉山作/象牙でできているとは信じ難いほどのしなやかさを持った作品。十二単の重なり、紐のやわらかな感じに驚き、見入ってしまった。
●『七宝四季花鳥図花瓶』並河靖之作/気の遠くなるほどの細かさ。並河靖之の七宝作品は、いつ観てもため息が出る。花瓶を取り巻く人々も、思わず「へえー」「すごいねえ」と呟いていた。
●『七宝月夜深林図額』濤川惣助作/水墨画と見紛うほど、ぼかしが素晴らしい。
●『紫紅壺』河井寛次郎作/やさしく美しい色がよかった。

2期もまた楽しみだ。

【三重】 松阪市立歴史民俗資料館

2009年10月14日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
7月19日(日)
当日の行程:(車) → 【伊勢神宮(外宮)】【猿田彦神社】【伊勢神宮(内宮)】【尾崎咢堂記念館】【田丸城】【斎宮歴史博物館】 → 【いつきのみや歴史体験館】 → 【斎王の森】【三井家発祥地】【松阪商人の館】【本居宣長旧宅跡】 → 【本居宣長記念館・鈴屋】【松阪市立歴史民俗資料館】【松阪城】【新上屋跡】 → 【本居宣長・春庭の墓(樹敬寺)】【御城番屋敷】【北畠神社】【霧山城】 → (津泊)


城の傍らにしっくりくる、とても素敵な建物だ。
玄関脇に置かれた赤いポストも愛らしい。
案内板を見れば、国登録有形文化財だということだ。

「松阪市立歴史民俗資料館
 (旧飯南郡図書館)本館・倉庫
 資料館の建物は、明治四十三年(一九一〇)の皇太子の飯南郡への行幸を記念して一般から寄付を募り、飯南郡図書館として建設されたもので、明治四十五年四月に開館した。開館当初は、本館、倉庫、新聞雑誌縦覧所の三棟があったが、新聞雑誌縦覧所は昭和初期に解体された。
 本館は二階建てで、伝統的な和風の意匠をもち、左右に翼部、中央に玄関が突出した左右対称の構成に特徴がある。倉庫は、本館の東に隣接して建つ二階建ての土蔵で、漆喰壁を下見板で覆い、外観の意匠を本館と合わせているが、高さを低く押さえている点が、立ちの高い本館とは対照的になっている。
 その後、背部を増築して松阪市立図書館として使用してきたが、昭和五十二年(一九七七)に図書館が別の場所に新築移転したため、翌年に内部改修を行い、松阪市立歴史民俗資料館として現在しようされている。
 二〇〇七年十一月二十一日  松阪市教育委員会」(案内板より)

参宮街道沿いの湊町にあった薬種店を再現したもの、松阪木綿や伊勢白粉(おしろい)に関する展示がある。
伊勢白粉の原料は、丹生から採れる水銀。
水銀鉱石を蒸留加工すると白い粉になるという。
「おしろい」という名の通り、もちろん化粧品として使われ、お伊勢参りのお土産として人気を博していたそうだが、それだけではなく、様ざまな薬の原料にもなっていたようだ。
身体には悪くないのだろうか?

【三重】 松阪商人の館

2009年10月11日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
7月19日(日)
当日の行程:(車) → 【伊勢神宮(外宮)】【猿田彦神社】【伊勢神宮(内宮)】【尾崎咢堂記念館】【田丸城】【斎宮歴史博物館】 → 【いつきのみや歴史体験館】 → 【斎王の森】【三井家発祥地】【松阪商人の館】【本居宣長旧宅跡】 → 【本居宣長記念館・鈴屋】【松阪市立歴史民俗資料館】【松阪城】【新上屋跡】 → 【本居宣長・春庭の墓(樹敬寺)】【御城番屋敷】【北畠神社】【霧山城】 → (津泊)


松阪商人の館は、豪商・小津清左衛門邸を資料館として公開したもの。
「江戸名物、伊勢屋、稲荷に犬の糞」というように、江戸の町は伊勢屋の看板だらけだったそうだ。
「近江泥棒、伊勢乞食」という言葉もある。
近江の商人は強欲で、伊勢の商人は吝嗇だという意味らしい。
手堅く商いをし、財を築く者が多かったのだろう。
松阪商人の館である小津清左衛門邸は、お伊勢参りの人々が行き交った参宮街道に面している。
三井家発祥地として残っている三井高利が生まれた家も、同じ並びだ。
主家のほかに、廊下でつながった内蔵を見学。
万両箱もある。
千両でなくて万両か、羽振りが良かったのだろうなあ。

【三重】 尾崎咢堂記念館

2009年10月07日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
7月19日(日)
当日の行程:(車) → 【伊勢神宮(外宮)】【猿田彦神社】【伊勢神宮(内宮)】【尾崎咢堂記念館】【田丸城】【斎宮歴史博物館】 → 【いつきのみや歴史体験館】 → 【斎王の森】【三井家発祥地】【松阪商人の館】【本居宣長旧宅跡】 → 【本居宣長記念館・鈴屋】【松阪市立歴史民俗資料館】【松阪城】【新上屋跡】 → 【本居宣長・春庭の墓(樹敬寺)】【御城番屋敷】【北畠神社】【霧山城】 → (津泊)


我が家の旅行では、カーナビに何かを見つけて脇道にそれることがよくある。
尾崎咢堂記念館もたまたま見つけて寄ってみた場所だ。


尾崎咢堂の像

尾崎咢堂記念館の建物は、旧尾崎邸宅。
館内では、「憲政の神様」「議会政治の父」と呼ばれる尾崎咢堂の生涯を7つの時代(①少年時代、②青年時代、③政治活動への参加、④衆議院議員尾崎行雄誕生、⑤憲政擁護運動、⑥脱軍国主義へ、⑦世界連邦をめざして)に区分して書簡、遺品、写真を中心に紹介している。
また、尾崎咢堂と関わりの深かった人々を紹介するコーナーも設けられていた。

ポトマック河畔の桜は、日本からアメリカへ贈られたものだというのは有名だが、― 確か、中学校の英語の教科書にも載っていたような ― それが、1912年、当時、東京市長だった尾崎咢堂が贈ったものであるとは知らなかった。
尾崎咢堂記念館の庭には、その返礼として贈られたハナミズキが植えられている。

【東京】 江戸東京ねこづくし (江戸東京博物館)

2009年10月02日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
9月27日(日)


引越後、段ボールだらけの部屋を目の前に、まさに猫の手も借りたい。
だからというわけではないが、「江戸東京ねこづくし」を観に行った。
チラシにあるのは、『流行ねこのおんせん』(部分)。
猫好きには、もうたまらない。


歌川国芳『猫の歌舞伎』
真面目にやっているのが可笑しい。


歌川国芳『猫飼好五十三疋』
国芳は、やっぱり面白い。


朝倉文夫『たま』
ブロンズだとは思えない、本物の猫のような身体つき。
家に置いてあったら、餌をやってしまいそう。

「作家と猫」というテーマでの展示もあった。
おなじみ『吾輩は猫である』に関するものが多い。
何度読んでもじーんとくるのは、内田百の『ノラや』や、谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のをんな』。
大好きだ。

出かけるときは頭が痛かったが、「ねこづくし」を観て猫にマタタビ、すっかり元気になった。


【大阪】 『坂の上の雲』が書かれた書斎風景とその時代展 (司馬遼太郎記念館)

2009年09月30日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
6月28日(日)
当日の行程:(JR・三輪駅) → 【三輪山登拝】 → (奈良交通バス・三輪明神 大神神社二の鳥居前~桜井駅北口…近鉄・桜井駅~八戸ノ里駅) → 【『坂の上の雲』が書かれた書斎風景とその時代展(司馬遼太郎記念館)】


『坂の上の雲』の創作メモや自筆原稿、そして、執筆に使用された万年筆などが展示されている。

『坂の上の雲』を読み始めると忙しくなって途中でやめてしまう、ということが何度が続いた。
一段落ついてすぐにまた読み始めればよいのだろうが、別の本に興味が向いてしまい、だいぶ経ってから「さあ、『坂の上の雲』でも読むか」と本棚から取り出してくると何かしら起こる。
ほんとうに不思議なほどに、タイミングが悪い。
その後に読み終えたのではあるが、その時も最後の最後まで何かあるんじゃないか、とそわそわしていた。

松山には行ったことがない。
松山どころか、四国に足を踏み入れたことがない。
いつかは行ってみたい、お遍路にも行きたいなあ。

『坂の上の雲』は、11月末からテレビドラマでも放送されるようなので、楽しみにしている。

【大阪】 伊勢神宮と神々の美術 (大阪歴史博物館)

2009年09月27日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
9月22日(火)
当日の行程:(タクシー) → 【伊勢神宮と神々の美術(大阪歴史博物館)】 → (地下鉄にて帰宅…自転車) → 【ごて地蔵尊】【露天神社(お初天神)】


引越し間際の慌ただしいなか、伊勢神宮と神々の美術を観に出かける。


伊勢参詣曼陀羅
『伊勢参詣曼陀羅』は、いくつかあるらしい。
左は、三井文庫蔵の『伊勢参詣曼陀羅』のうち左幅(内宮)。
右は、個人蔵の『伊勢参詣曼陀羅』のうちの右幅(外宮)。
展覧会の期間中、何度か展示替えがあるようで、訪れたときは右側のものが展示されていた。
人々の動き地形を見るとおもしろい。


男神坐像(重要文化財)
松尾大社蔵。
松尾大社を訪れたときは東京へ出張中で拝むことができなかった男神坐像に、大阪で出会うことができた。
あなただったのねー、と噂で聞いていた方にお目にかかった気分。


金銅高機(国宝)
これはミニチュア織機。
福岡県宗像市の沖ノ島祭祀遺跡から出土したもの。
これと同様の高機は、伊勢神宮にも伝えられているらしい。
非常に精巧にできている。
こういうのって、フィギュアを集めたりする人にはたまらないかも。


玉纒御太刀 附 鮒形
キラキラきれいな太刀。

伊勢神宮では、20年ごとに建て替えが行われる。
第62回の式年遷宮は、平成25年(2013)。

先日参拝したときには、宇治橋の架替え工事中だった。
式年遷宮の年に、また参拝したいと思っている。

【大阪】 海遊館

2009年09月21日 23時16分16秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館
6月7日(日)
当日の行程:(大阪市営地下鉄・大阪港駅) → 【天保山公園】【海遊館】【安藤忠雄建築展 2009 対決。水の都 大阪VSベニス 水がつなぐ建築と街・全プロジェクト(サントリーミュージアム[天保山])】 


海遊館に行く。
様ざまな国の言葉で書かれたパンフレットがある。
ロシア語で書かれたものをいただいてみる。


カワウソが可愛かったが、なかなかこちらを見てくれない。


こういう格好をしてくれないとラッコだと判別できない私。


ウチのデブになりつつある猫とダブる。


造り物のようなワニ。


右側は鏡になっている。
ペンギンはナルシストなのかなあ?
みんな鏡のほうを見ている。


エイの上に乗っかって、楽をしているのはだーれだ?

イワシの群れが美しかった。
顎が外れたように大きく開けて泳いでいる姿が愛らしい。


【兵庫】 だまし絵 -アンチンボルドからマグリット、ダリ、エッシャーへ- (兵庫県立美術館)

2009年09月13日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館

騙されるのが好きなのか、はたまた騙されないぞーと挑んでいくのが好きなのか、自分でもどちらなのかは分からないが、兎にも角にも、だまし絵を見るのは楽しい。
チラシは、アンチンボルドの有名な『ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)』。
なんと34種類もの花や野菜で構成されていて、それぞれの花や野菜が顔のどの部分に使われているのかを示す図が作品の隣に置かれていた。
いやー豊作ですな。


チラシの裏側の文字は、だまし絵ならず「だまし文字」になっている。

「だまし絵」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、

エッシャーの『滝』のような作品とか、

マグリットの『白紙委任状』のような作品。
あれ?この人どこにいるの?

作品が置かれる空間に溶け込むように事物を本物そっくりに描き、見る者の目を欺くようなものもだまし絵なのだそうだ。

例えば、ヘイスブレヒツの『トロンプルイユ』のような作品。
額に入れないまま部屋の壁に飾られていたら、うっかり騙されてしまうだろう。
いくつもの大きな部屋だとか、高級家具だとか、屋内プールだとか……わが家の壁にも飾ってみようか。

日本のものもあった。

歌川芳藤『五拾三次之内猫之怪』
国芳のものや、広重の『即興かげぼしづくし』もあり、愉快。
京都高島屋グランドホールで観た「浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展」を思い出した。

それから、「描表装」もだまし絵と捉えることができるというのには、新鮮な感じがした。
呉春・松村景文『柳下幽霊図』、河鍋暁斎『幽霊図』、清水節堂『幽霊図』と、幽霊を題材にしたものが多い。
描表装は内と外の境界線をあいまいにするということで、幽霊がぴったりくるらしい。
清水節堂の幽霊は、とりわけ恐ろしい。
風帯が揺れ、幽霊の足元が一文字を跨ぐように描かれている。
『リング』で貞子が画面から現れる恐怖は、これに似ている。

そして、一番びっくりしたのが、こちら。

パトリック・ヒューズ 『水の都』
右から左へ、左から右へ。
こうやって平面で観ると分からないが、実物を前にすると、自分が動くたびに風景も変わるのだ。
近くで観ているのに、何が起こっているのか分からない。
騙されるのが楽しくて仕方ない。
実は、この作品は立体で、四角錐の頂部をカットしたものが、底面を壁にして3つ並んでいる。
頂部の断面には建物と建物の間の小さな空間(一番奥まって見えるところ)が、四角錐の左右の側面には建物、上には空、下には水面がそれぞれ描かれている。
けれど、立体であることすら感じさせない。
これには参った。
自分でも作ってみたくてたまらない。

帰り道、思い出したのはナナフシ。
カメレオンよりだまし絵の才能があると思う。