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【兵庫】 だまし絵 -アンチンボルドからマグリット、ダリ、エッシャーへ- (兵庫県立美術館)

2009年09月13日 21時00分00秒 | 美術館・博物館・記念館・資料館

騙されるのが好きなのか、はたまた騙されないぞーと挑んでいくのが好きなのか、自分でもどちらなのかは分からないが、兎にも角にも、だまし絵を見るのは楽しい。
チラシは、アンチンボルドの有名な『ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)』。
なんと34種類もの花や野菜で構成されていて、それぞれの花や野菜が顔のどの部分に使われているのかを示す図が作品の隣に置かれていた。
いやー豊作ですな。


チラシの裏側の文字は、だまし絵ならず「だまし文字」になっている。

「だまし絵」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、

エッシャーの『滝』のような作品とか、

マグリットの『白紙委任状』のような作品。
あれ?この人どこにいるの?

作品が置かれる空間に溶け込むように事物を本物そっくりに描き、見る者の目を欺くようなものもだまし絵なのだそうだ。

例えば、ヘイスブレヒツの『トロンプルイユ』のような作品。
額に入れないまま部屋の壁に飾られていたら、うっかり騙されてしまうだろう。
いくつもの大きな部屋だとか、高級家具だとか、屋内プールだとか……わが家の壁にも飾ってみようか。

日本のものもあった。

歌川芳藤『五拾三次之内猫之怪』
国芳のものや、広重の『即興かげぼしづくし』もあり、愉快。
京都高島屋グランドホールで観た「浮世絵ベルギーロイヤルコレクション展」を思い出した。

それから、「描表装」もだまし絵と捉えることができるというのには、新鮮な感じがした。
呉春・松村景文『柳下幽霊図』、河鍋暁斎『幽霊図』、清水節堂『幽霊図』と、幽霊を題材にしたものが多い。
描表装は内と外の境界線をあいまいにするということで、幽霊がぴったりくるらしい。
清水節堂の幽霊は、とりわけ恐ろしい。
風帯が揺れ、幽霊の足元が一文字を跨ぐように描かれている。
『リング』で貞子が画面から現れる恐怖は、これに似ている。

そして、一番びっくりしたのが、こちら。

パトリック・ヒューズ 『水の都』
右から左へ、左から右へ。
こうやって平面で観ると分からないが、実物を前にすると、自分が動くたびに風景も変わるのだ。
近くで観ているのに、何が起こっているのか分からない。
騙されるのが楽しくて仕方ない。
実は、この作品は立体で、四角錐の頂部をカットしたものが、底面を壁にして3つ並んでいる。
頂部の断面には建物と建物の間の小さな空間(一番奥まって見えるところ)が、四角錐の左右の側面には建物、上には空、下には水面がそれぞれ描かれている。
けれど、立体であることすら感じさせない。
これには参った。
自分でも作ってみたくてたまらない。

帰り道、思い出したのはナナフシ。
カメレオンよりだまし絵の才能があると思う。

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