GAIA所員のひとり言

建築設計事務所の一所員の、建築はもちろん、社会の様々なことについてのひとり言。

美術館における写真撮影事情☆

2009-07-28 18:14:19 | Weblog

今回は、「日本の美術館では写真撮影はできないのか?」についてのお話
欧米の美術館に行って、写真撮影が可能であることに驚きをもたれる方も多いのではないでしょうか。
では日本の美術館での写真撮影の現状はどうなっているのでしょう。

先日7月25日から森美術館で始まった「
アイ・ウェイウェイ展-何に因って?」に行ってきました

アイ・ウェイ・ウェイ[艾未未]氏は、美術、建築、編集、デザインなど多岐にわたるクリエイティブな分野で活躍するクリエイター。北京オリンピックの主会場である北京国家体育場(鳥の巣)の建設にあたり、芸術顧問として設計者のスイス人建築家ユニットヘルツォーク&ド・ムーロンと共同制作を行ったことで、国際的に評価を得、近年国際的に最も注目されている中国人アーティストのひとりです。

この催しが注目を浴びている1つとして、先日森美術館がプレスリリースした、「アーティスト艾未未(アイ・ウェイウェイ)さんらの展覧会で、観客の写真撮影を許可する取り組みを試験的に始める」というニュースが挙げられます。
森美術館にそのニュースを知らずに訪れたわたしは日本の美術館では写真撮影はできないという勝手な思い込みがあったため、写真を撮ることを控えていました。そうしましたら、なんとびっくり、中国からの観光客のような方がおもむろに写真撮影を開始。。。
え?いいの??と慌てて部屋内にいらした監視の方に確認すると、フラッシュをたかなければ撮影可能とのこと。日本でめずらしいな、と驚嘆。
そして、帰宅後この記事を知り、なるほど、そんなことが!と納得。

通常、写真撮影は、「著作権保護」「鑑賞の妨げ」「作品保護(フラッシュ)」の観点より禁止されていると考えられます。
特に著作権保護(日本では死後50年までを保護期間、欧州では著作者の死後70年としている国が多数、米は死後70年まで)の問題については、国内では所蔵作品展の撮影を認める美術館が一部にありますが、外部から作品を借用する企画展の撮影の場合著作権の問題などからまず認められていないのが実情のようです。
その点からいって、今回の森美術館の試みは画期的なことと言えるでしょう

ただ、ここで踏まえておきたい点は2つ。
1つ目は、欧米の全ての美術館が写真撮影可能ではないということ。
欧米に行った際に主として訪れる大きな美術館では写真撮影が許可されているため、日本以外は撮影できるのに何故日本はあんなにきびしいんだろうと思ってしまうこともしばしば
しかし、実はそうでもありません。
確かに、アメリカでは著作権の柔軟な運用を目指す運動「クリエイティブ・コモンズ」があり、許可されているところが多いようです。しかし、ヨーロッパについては、大きな美術館の常設展については撮影可でも小さなところなのでは不可なところも多いようです。
それについて、日本の美術館は欧米のような常設展よりも企画展の方が多いためではないかという意見を目にしました。
なるほど、そうなると先に挙げました「企画展の撮影の場合著作権の問題などからまず認められていない」という実情と一致し、写真撮影の許可が出難い理由にも納得がいきます。

2つ目は、国内で写真撮影が許可されているのは実は他にもあるという事実です。

下記の3つはその一部です。

東京国立博物館→基本的に撮影可、一部不可
東京国立近代美術館→基本的に撮影可
国立西洋美術館→基本的に撮影可

今までに、森美術館のように「写真撮影可能です!」とアピールするところが今までなかったのでしょう。。そのため、日本の美術館は写真撮影できないといった先入観が払拭されることなく現在に至っていると言えるのではないでしょうか
今回の取り組みによって、他の美術館でも写真撮影が可能になる流れを後押しする結果につながえり、もっと美術のあり方について考えていく風潮が生まれるきっかけになることを望みます

みなさま、ぜひ森美術館のアイ・ウェイウェイ展、写真も撮りながらお楽しみになってみてください
tomo

 

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