のんびり食堂

日々のことをちょいと書いております。お気軽にお立寄り下さいませ。

武士の一分

2006-12-02 12:02:33 | 映画
有名な監督なのに、何故か山田洋次監督の作品は一度もちゃんと見たことがなかった。今回初めて監督の作品を見て抱いた感想としては、「なんて映画のことを分かっている人なんだろう」ということ。見た目から真面目で冗談なんて言わない人という印象が強かったのだけれど、「武士の一分」ではユーモアに溢れ、劇中何度も笑ってしまった。そういえば、前に三谷幸喜のエッセイで映画賞授賞式で監督との会話した際のエピソードがあり、実は面白い人なのかな、という印象を受けたことがある。

主演・木村拓哉はというと、SMAPだったりドラマでも「木村拓哉」というイメージがあり、純粋にその役としてみることが中々難しい役者という印象があった。今回も序盤の雰囲気はそういう印象もあったけれど、視力が失われた辺りから、生きる希望を失い、周りの者に当たったりで、いつも知っている彼とは一気に違う人になってしまった。目が見えないことに慣れるにつれ、冗談を言ったりということが戻ってくるのだけれど、その頃には「木村拓哉」ではなく、あえて言うならば「水曜どうでしょう」の「愚痴ばかり言う大泉洋」のようにも思えて来た。あと、食事をするシーンが多いのだけど、毒味役としてお勤めをしている三村新之丞(木村拓哉)の所作は美しく、また普段の質素な食事も所作だけ見ているだけで満足な気分になる。自分も妻・かよの作る芋の煮物(?)を食べてみたいと思った。

時代劇とは言っても、時代設定とかあまりややこしくなく、噂好きで喋り好きな叔母さん(桃井かおり)や主人にも文句を言う使用人(笹野高史)だったりの登場人物がとても身近で親しみ深く、彼らの会話に何度も笑ってしまう。盲目になってしまった夫を献身的に支える妻を演じる檀れいが画面に登場するととても華やぎ、周りの人が彼女の外見やしぐさの美しさに惹かれるように、観客である自分も魅了されていくのがわかった。

夫婦の愛を描いた作品で、江戸という時代、今よりも情報が発達していない中、人と人との繋がりが社会を繋ぎ、簡単に断ち切れないという世界なのだけど、それがとても羨ましく思わせ、全く知らない人達が集まっている現代の映画館という空間の中で、一緒に見て笑って、時には泣くというのを、とても心地よくさせた映画だった。

虹の女神

2006-12-02 00:58:43 | 映画
学生時代、私は映像を撮っていた。そして将来は映像系に行こうと考えていた。

そんな自分と同じ女の子がこの映画の登場人物だった。彼女は映像制作会社に入り、会社を辞めアメリカへ映像の勉強をしに行く。そしてある日乗った飛行機が墜落し、彼女は死んでしまう。彼女の好きだった青年(岸田=市原隼人)は、彼女が亡くなり、初めて彼女が自分を好きだったことを、そして自分にとって彼女がどんなに大切な人だったかを思い知る。

上野樹里演じる「佐藤あおい」と似たような学生時代を送ってきた私にとって、彼女の人生はとても短い生涯だったけれどもとても羨ましく感じた。この映画は主に岸田の目線から見た「佐藤あおい」が描かれるのだけれど、何だか思いっきり彼女に感情移入してしまった。失恋や淡い恋っていうのは青春にはつきもので、人生あまり上手く行かないというのを青春時代に思い知る。不器用ながら素直に生きる彼女がとてもまぶしく思えた。さてさて、現在の私はというと、映像を撮るとは全く違った仕事をしている。その当時の私からは想像も出来ないような職業に就いた。仕事は順調だし、満足もしているけれども、学生時代の私が今の私を知ったらどう思うのだろう、とはちょいと考えてしまった。

映画の内容であるが、市原隼人は鈍感で不器用な青年(少年?)を演じるとハマるなあと改めて思った。彼を初めて見たのは岩井俊二監督の「リリィシュシュ」だったと思うけど、年々良い役者になっているなあと思う。上野樹里の恋愛に不器用で上手く相手と接することが出来ないという役柄もとても似合う(今現在やってるドラマの「のだめ」とかもハマってるし)。この映画に出て来た人達見事にハマっていた。彼らの真面目ながらもおかしい行動に何度も笑わされた。

最後のクレジットに流れる種とも子の主題歌が何とも印象的で、ちょいと学生時代のことを帰り道思い出した。