医科歯科通信  (医療から政治・生活・文化まで発信)



40年余の取材歴を踏まえ情報を発信

確固とした原点がある人は強い

2015-07-12 09:47:11 | 伝えたい言葉
石巻日日新聞社は10年以上、赤字に会社であつた。
近江弘一さんが2006年に役員として入り、1年目で黒字にした。
社員に言い続けたことは、「地域に貢献していけば、必ず自分たちに返ってくる」といこと。
皆も「そうかもしれない」と思い始めきたこと、東日本大震災が起こった。
印刷設備も、被害を受けた。
近江社長は“今、やれることを精いっぱいやる。それが自分たちの使命がある。そこから広がっていくことが必ずあるはずだ。だから、やれることをやる”-私は「手書きで新聞をつくろう」と提案した。
「今やらなければ、存在する意味がない」
それが「伝える使命」の原点だと確信した。
まちづくりに新しい価値が生まれるとおもいます。
こうした取り組みで大切なのは「理念」を共有すること。
私たちでいえば「地域に貢献する」という志です。
夢を持っていても、理念を共有していなければ、何か起こると、すぐに諦めてしまう。
理念は原点ともいえます。
確固とした原点がある人は強い。
私の場合、その理念とは他者を大切にして、地域に尽くすことです。
「利他の心」という言葉でいえば、「他」は「地域」であり、「人」です。
人と人の間には、もっと大事にしなければならない「絆」があり、それは人、地域を愛することから生まれます。
こうした思いを大切にしながら、豊かなまち、豊な社会を築いていきたいと思います。














いかなる法を持ち、どう生きるか

2015-07-12 06:27:43 | 受けとめる力
自分なんかダメだという「自己卑下」
自分さえ良ければという「利己主義」
何も変わらないという「諦め」
それは、中核となる生き方の羅針盤を持たないことに起因する。
「自分も変わることで、周囲も社会も変わる」という理念・哲学が不可欠だ。
人間の究極の偉さは、いかなる法を持ち、いかなる哲学を学び、実践し抜いたかで決まる。
表面的な地位や立場で、人間の真価は決まらない。
いかなる法を持ち、どう生きるか。
そこに人間の偉大さが輝く。


彼は「人生とは何か。何のために自分は生まれてきたのか。仕事も生活も順調であったが、ずっと確固たる哲学を求めていた」

普通の人が極悪非道となる

2015-07-12 05:50:20 | 沼田利根の言いたい放題
戦時下、人は狂気に走る。
子どもたちまで戦闘機から機銃掃射した米軍兵士に幼い娘や娘がいたかもいれない。
アメリカは南北朝戦争以外に国土が戦場になっていない。
戦場は常に遠い彼方の地で行われてきたのだ。
ヨーロッパはイギリス市民を含め空爆を経験している。
原爆は明らかに戦争犯罪であるが、アメリカ市民はそれを認識していない。
ナチスのユダヤ人に対する蛮行。
ヒトラーが後継者に定めたヘルマン・ゲーリングは、利己的であるが、家族や友人を愛する普通の人間であった。
普通の人が極悪非道となる。
これは恐ろしい結論である。
アウシュビッツの大量虐殺を実行した人たちが怪物ではなく、普通の人であったことが犯罪者の本質を表している。
怒りの衝動から自宅に油を撒き、火を放つ父親さえいるのだ。
誰でも殺人者になってしまう。
交通事故の轢き逃げも絶えない。
人は「生きている」より大いなるものから「生かされている」ことを認識すべきだ。
銃を規制できないでいるアメリカと対等になろうなどと夢にも思わないことだ。
沼田利根

「いじめは100%いじめる側が悪い」

2015-07-12 05:18:03 | 社会問題・生活
いじめによる自殺はあとを絶たない。
「二度とこういう事件を起こしてはならない」と言われるが繰り返させる。
「なぜ防止できないのか?」
相談できる24時間体制の電話相談窓口が開設されているが、それほど機能していないようだ。
「いじめは100%いじめる側が悪い」この理念が子どもたちに浸透されていない。
教育現場、家庭、社会に緊張感が足りないのではないだろうか。
つまり、いじめられている子どものSOSが届いていない。
子どもに日記を書くことを義務づける。
こころの中を曝け出すのに、日記の効用が一番ではないだろうか。
何とかしなければとの主体性が教育現場にあれば、助けられる命も助けられるはずだ。


















「私はテレビに呼ばれたら自己判断で行く」

2015-07-12 04:11:36 | 政治・社会・経済問題
自民・二階氏


朝日新聞 DIJITAL 2015年7月11日 ■二階俊博・自民党総務会長
 私は、テレビから呼ばれたら、自分の判断で行く。党の誰かに相談して許可をもらって行ったことはない。若手の議員だって同じだと思う。
 (自民党の棚橋泰文幹事長代理が、TBSのアンケートに答えないよう所属議員に指示を出していた問題について)それは全くばかげたことだ。みんな、国会議員として選挙を勝ち抜いて当選してきているんだから、その本人の判断に任せてあげればいいんじゃないか。(番組に)出ないように言ったところで、出るのは出る。自らの党の国会議員を信じなくて何を信じるんですか。どなたが言ったのか知らないが。(和歌山市内で記者団に)
これが自由と民主主義を標榜する党の幹事長代理なのでしょうか……。















numata727 さんが 2014年07月10日 に書かれた記事をお届けします

2015-07-12 03:49:57 | 医療と介護
numata727

脳卒中から助かる会 体制の整備に力をいれてほしい

★国民病といわれる脳卒中。脳の血管が血栓(血の塊)などで詰まる脳梗塞や、血管が破れる脳出血、くも膜出血により、脳細胞が壊死してしまう病気。脳卒中の約7割を占める脳梗塞の場合、血栓を溶かす薬を投与する「t−PA療法」を発症後4時間半以内に行うことで、症状が大きく改善する確立が高くなる。しかし、現状では患者全体の...
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川端康成は「捨てない人」であった

★タンカーの乗務員として、1980年代のイラン・イラク戦争の時、ペルシャ湾に向かい、日本の生命線である「オイルロード」を確保してきました。護衛はありません。時折、見知らぬ軍艦や軍機が近づいてきて、攻撃されないかと、恐怖に震えました。日章旗と船体の日の丸だけが頼りでした。自衛隊の役割や米軍との関係などを、どうす...
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歯科医、診療報酬で不正 近畿厚生局が登録取り消し

共同通信社 2014年7月8日(火) 配信  近畿厚生局は7日、診療報酬を不正に請求したとして、兵庫県西宮市の「野上歯科医院」の野上恭嗣(やすつぐ)医師(67)の保険医登録と、医院の保険医療機関指定を取り消すと発表した。取り消しは14日付。 厚生局によると、治療を付け増したり、保険点数の高い診療に振り替え...
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薬剤耐性ウイルス抑える 京大が化合物開発

共同通信社 2014年7月9日(水) 配信  薬が効かない耐性ウイルスの増殖を抑えられる化合物を京都大の萩原正敏教授(分子生物学)のチームが開発し、米科学誌※電子版に9日発表した。 皮膚にただれなどの症状が出るヘルペスウイルスで有効なことを確認。薬剤耐性を獲得したウイルスに効く薬の開発につなげられるよう臨...
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歯・口腔に異常を感じる人の8割が未治療

[歯科医療] 歯・口腔に異常を感じる人の8割が未治療  日本歯科医師会調査厚生政策情報センター 2014年7月8日(火) 配信  日本歯科医師会は6月26日に、「歯科医療に関する一般生活者意識調査」の結果を公表した。 全国の20〜70代男女を対象に行われたもので、歯科医療に対する国民の認知度・理解度向上等...
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小中高で「がん教育」…死因1位、指針作成へ

読売新聞 2014年7月7日(月) 配信  日本人の死因1位のがんへの理解を子どもの時から深めてもらうため、文部科学省は、小中高校でがん教育を行うための指針を作ることを決めた。 近く、医療や教育関係者、がん経験者らによる教育内容の検討会を設置。今年度は約20地域でモデル事業を行い、来年度以降、教材を作成す...
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ビタミンDに延命効果? 

〈医療新世紀〉共同通信社 2014年7月8日(火) 配信  ビタミンDには、がんや心臓疾患による早期死亡を防ぐ効果があるかも―。そんな研究結果をドイツなどの国際共同チームが6月17日付の英医学誌BMJに発表した。 欧米の50〜79歳約2万6千人を追跡したデータを解析。死亡した約6700人のうち約2600人...
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米研究員、不正戒めに「リケンするな」

信頼回復、道険し 白紙・STAP論文/5毎日新聞社 2014年7月8日(火) 配信  理化学研究所を舞台に起きたSTAP細胞論文問題。国内の男性研究者は、米国在住の知人から残念な話を聞いた。「米国のポスドク(博士研究員)の間で、不正を戒めるときに『リケンするな』と言っているらしい」 別の研究者は欧州での学...
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米研究員、不正戒めに「リケンするな」

信頼回復、道険し 白紙・STAP論文/5毎日新聞社 2014年7月8日(火) 配信  理化学研究所を舞台に起きたSTAP細胞論文問題。国内の男性研究者は、米国在住の知人から残念な話を聞いた。「米国のポスドク(博士研究員)の間で、不正を戒めるときに『リケンするな』と言っているらしい」 別の研究者は欧州での学...
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社会保障審議会 「紹介なし自己負担」に3案、医療保険部会

出産一時金は42万円に据え置きで決着 m3.com 2014年7月8日(火) 池田宏之(編集部) 社会保障審議会医療保険部会が7月7日に開催され、引き続き療養範囲の適正化がテーマとなり、紹介状なしの大病院受診の患者負担の在り方や、国民健康保険に対する国庫補助などについて議論があった(資料は、厚生労働省の...
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口腔メンテで糖尿病改善や認知症予防も

 「歯科治療」に必要な知識が凝縮2014.07.10 週刊朝日編集部(著)「いい歯医者2014」(朝日新聞出版、800円+税)【拡大】 近年の研究から、「歯と口の健康状態」が、全身疾患と密接な関係にあることがわかってきた。長寿のカギは歯科医にある−ということだが、世の歯科医院は玉石混交。どうすれば“石”では...
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これからの歯科経営戦略 新時代のノウハウ)

http://www.dba-abe.co.jp/strong>☆ チャイルド矯正 ◆コース内容 歯科医院の数がコンビにより多くなったと言われだしてから久しい。これからの臨床は自由診療の拡大を考えられるものでなくてはならない。矯正も特色のあるいろいろなものをそろえ、多様な中から患者さんに選択してもらうことが必...

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記誰でも人生という舞台の名優である

http://www.dba-abe.co.jp/★勇気のコツ=自分のためでなく、誰かのために動く。すると利己的な考えを乗り越えられ、“勇気指数”が高まる。ポジティブ心理学の第一人者・ロバート・ビスワス=ディーナー博士★青春は戦いである。精神の闘争のない青春は伸びない。勝てない。★何らかの圧迫を受ける。その壁...

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訪問専門の診療所を解禁 

2015-07-12 03:45:07 | 医療と介護
厚労省、在宅医療後押し



日本経済新聞 電子版 2015年7月10日 配信

 厚生労働省は来年4月をめどに、医師が高齢者らの自宅を定期的に訪れて診察する「訪問診療」の専門診療所を認める方針だ。外来患者に対応する診察室や医療機器がなくても開設を認める。政府は高齢者が病院ではなく自宅で治療する地域包括ケアを推し進めている。訪問診療に専念する医師を増やし、退院した患者の受け皿をつくる。



 訪問診療の患者の8割以上は「要介護」と認定された高齢者だ。外来で病院に行くことが難しい。
 訪問診療を広げる背景には、入院ベッド(病床)の不足がある。内閣官房が6月にまとめた推計によると、このまま改革をしないで放置すれば「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には約17万床が不足する。
 症状が安定した患者は病院でなく、自宅や介護施設で治療を受けやすくする。
 入院した患者が自宅での訪問診療に移れば、医療費が減るとの見方もある。政府の試算では訪問診療にかかる自己負担と保険給付を合わせた医療費の総額は1人あたり月に約32万円で、慢性期患者の入院(約53万円)より4割安い。入院するとささいな体調不良でも治療を施すため、医療費が膨らみやすいとの指摘がある。
 厚労省は訪問専門の診療所を開く場合に、いくつかの条件を付ける方向だ。施設ごとに担当の地域を決め、住民から依頼があれば訪問することを義務付ける。重症の患者を避けて軽症の患者だけ選んで診察するようなことがないようにする。
 患者が来たときに診察の日程などを相談できるよう診療所に事務員を置くことも求める方針だ。
 こうした規制緩和に加え、医療サービスの公定価格にあたる診療報酬を見直す2016年4月に、訪問診療の評価をどこまで上げて金銭的な動機を与えられるかが、普及に向けたカギを握る。
 健康保険法は患者が好きな医療施設を受診できると定めている。厚労省はこの法律に基づいて、医療施設を訪れた患者を必ず診察するよう施設に義務付けてきた。

 外来患者に対応するため、決まった時間に施設内で診察に応じる必要があるほか、一定の広さの診察室や医療機器の設置も義務付けている。診療時間の半分は外来対応にあてるほか、X線の設備を置くよう求める地域もあるという。
 8月以降に中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で議論し、来年4月をめどに訪問診療だけの診療所を認める通知を出す。
 ※訪問診療:患者の自宅や介護施設を長期にわたって計画的に訪れて診察や治療をすること。主に寝たきりの患者や神経難病で体を動かしにくい患者、病院の待合室で長時間待てない認知症の患者らを対象にする。血圧・脈拍の測定や点滴のほか、健康相談やリハビリに対応する。1回10分あまりで、月に2、3回の訪問が多い。急病などで患者に呼ばれて医者が出向く「往診」とは区別する。検討中の専門診療所は往診にも対応する。

太平洋戦争の死者は私たち一人一人であったかもしれない

2015-07-12 03:23:33 | 受けとめる力
太平洋戦争の末期の沖縄戦。
死者の総数およそ20万人に達し、そのうち軍人、兵士の戦死は10万6000人で、県民の戦争による死者は、9万4000人。
実に正規軍の戦死者に匹敵する数の住民が戦争の犠牲者になっている。
沖縄戦を本土決戦の一環とみるならば、国民のすべてが自らの存在を歴史の中で確認すべき月である。
もし1945年秋からアメリカ軍による日本本土上陸作戦第2弾(オリンピック作戦)、第3弾(コロネット作戦)と続いていけば、沖縄戦とほぼ同様の光景が描かれたはずだった程度の認識を持たなければ、私たちは沖縄の人々に申し訳ない思いがする。
太平洋戦争の死者は私たち一人一人であったかもしれないとの想像力を持つことで、あの戦争の本質がわかってくるように思う。
ノンフィクション作家・保坂正康さん











トランポリンで床へ落下

2015-07-12 02:00:20 | 創作欄
沼田一郎は努力もしないで、高望みばかりしていた。
だが、現実は甘くはなかった。
母の期待で公務員か教師を目指していたが、それも挫折した。
教師は楽だろと体育教師の道を選び、単位も取っていた。
だが、それも中途半端に終わった。
体育科ではなく国文科を選んだのだ。
さらに未練もあったので応用化学などの授業も受けていた。
毎日、体育館で過ごしていたので、先輩や講師などから体育館の清掃なども命じられた。
講師の一人は憧れのオリンピック金メダリストである。
その講師から「バーベル片付けろ」と指摘された。
体育科の生徒たちがバーベルを放置して、何処かへ行っていた。
「モップをかけておけ、床が汚れているぞ」と命じた先輩の体操選手もメダリストの一人だった。
大学から体操を始めたのだから一郎は進歩しない。
つり輪、鉄棒、平行棒も全くダメで、トランポリンで遊んでいる状態だった。
剣道の授業だけは高校時代にやっていたので、体育科の学生とは互角以上であった。
一郎が毎日体育館へ通ったのは、美しい女子学生の一人に心惹かれたからだ。
だが邪念が災いもした。
その女子学生の平均台演技をトランポリンの上で見ていた。
そして一郎自身、回転不足で背中から落下し、さらに弾んで床にも落ちたのだ。
その後、「才能がない」とトランポリンは止めたのだ。
ある日の体育科の授業のことだ。
教授が何時ものとおり、出欠を名簿に従って確認する。
教授が名前を読み上げると「国体へ行っています」と同期生が答える。
「そうか、国体かどうりで欠席者が多いはずだ。残った君たちも来年は国体へ行くように」
と諭すように言う。
一郎はレベルが違うので聞き流したが、教室にいることを「屈辱」と感じている学生もいただろう。












ヤマユリ

2015-07-12 00:13:47 | 創作欄
恋愛らしい恋愛の体験がないまま一郎は結婚した。
「恋愛と結婚は違いますよ」一郎は弁護士夫人の遠山紀子に言われたことを長く胸にとどめていた。
一郎は小学生向け学習辞典の販売で、等々力の遠山宅を訪問した。
お手伝いさんが玄関の応対に出た。
何時ものとおり「学校の方から来ました」のセールストークで訪問の主旨を伝えた。
それで一郎は応接間まで案内されたのだ。
約半年の短い営業活動の期間で、応接間まで通されたのは初めてだった。
「ご苦労さまです」と柔かに笑顔で応対する夫人は、30代と想われたがお嬢様さんタイプで世間ずれしてはいないように想われた。
一郎は多少の後ろめたさを感じたが、黒革の鞄から学習辞典の1冊を取り出して説明した。
「とても良い学習辞典ですね。いただきますわ」とすんなり売れたのである。
娘さんは私立のお嬢さん学校へ通学していて、夫人から学友の数人を紹介されたのだ。
一郎は夫人が本棚から出しきた学年名簿を夫人の指で示されたので、手帳に住所と名前を記入した。
「わたくしが電話をしておきますわ。是非訪問してください」と親切に言うのだ。
思わぬ収穫であった。
応接間にはヤマユリが大きな紫色の花瓶に飾られていた。
豪華で華麗な花で、直径は20数センチ、「ユリの王様」とも呼ばれている。
応接間に漂う香りは甘く濃厚であった。
「美しい花ですね」と一郎は目に留めた。
「わたくしの誕生日が昨日でして、主人から贈られましたの」と夫人は微笑む。
一郎は夫人にすすめられてイチゴのシュートケーキを食べた。
「学校の方から来ました」というセールストークを信じ込んでいる人のよい夫人であった。
本棚には吉屋信子の小説の他に堀辰雄、太宰治、三島由紀夫、川端康成、立原正秋などの箱入の書籍が並んでいた。
「小説がお好きなのですね?」と聞いてみた。
「女子大学時代に恋いで真剣に悩みましてね、本に解决を求めた時期もありました」夫人は醒めたような瞳をしていた。
一郎はどのような恋であったのかと想ってみた。
「でも、恋愛と結婚は別です。違いますよ」と夫人はきっぱりとした口調で言う。
一郎にその夫人の言葉が深く残ったのだ。
一郎は高校時代、大学時代の青春の真ん中にあって恋愛らしい恋愛の体験がなかった。
「結婚するなら恋愛に限る」と思い込んでいたのだが、そのような縁には巡り合わなかった。
ヤマユリは弁護士夫人だった遠山紀子の華麗な姿を彷彿させた。
その2年後、傷害罪で新宿署に逮捕された一郎は遠山紀子の夫の幸吉に弁護を依頼したのだった。





記事:7月11日毎日新聞