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トランポリンで床へ落下

2015-07-12 02:00:20 | 創作欄
沼田一郎は努力もしないで、高望みばかりしていた。
だが、現実は甘くはなかった。
母の期待で公務員か教師を目指していたが、それも挫折した。
教師は楽だろと体育教師の道を選び、単位も取っていた。
だが、それも中途半端に終わった。
体育科ではなく国文科を選んだのだ。
さらに未練もあったので応用化学などの授業も受けていた。
毎日、体育館で過ごしていたので、先輩や講師などから体育館の清掃なども命じられた。
講師の一人は憧れのオリンピック金メダリストである。
その講師から「バーベル片付けろ」と指摘された。
体育科の生徒たちがバーベルを放置して、何処かへ行っていた。
「モップをかけておけ、床が汚れているぞ」と命じた先輩の体操選手もメダリストの一人だった。
大学から体操を始めたのだから一郎は進歩しない。
つり輪、鉄棒、平行棒も全くダメで、トランポリンで遊んでいる状態だった。
剣道の授業だけは高校時代にやっていたので、体育科の学生とは互角以上であった。
一郎が毎日体育館へ通ったのは、美しい女子学生の一人に心惹かれたからだ。
だが邪念が災いもした。
その女子学生の平均台演技をトランポリンの上で見ていた。
そして一郎自身、回転不足で背中から落下し、さらに弾んで床にも落ちたのだ。
その後、「才能がない」とトランポリンは止めたのだ。
ある日の体育科の授業のことだ。
教授が何時ものとおり、出欠を名簿に従って確認する。
教授が名前を読み上げると「国体へ行っています」と同期生が答える。
「そうか、国体かどうりで欠席者が多いはずだ。残った君たちも来年は国体へ行くように」
と諭すように言う。
一郎はレベルが違うので聞き流したが、教室にいることを「屈辱」と感じている学生もいただろう。












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