献体の遺骨を６年半放置・・・

　正面に大きく横たわる島が消えてなくなった。これを春霞というのだろうね。

　ご近所の白梅がきれい！　明日は啓蟄。寒さが緩み、虫たちが土の中から出てくる季節を表すという。いよいよ春本番だね！


　先日、あきれた記事を見つけた。提供された男性の遺体（献体）を兵庫医科大学が、遺族に連絡なく火葬し、約６年半返還を怠っていたという。22日、遺族が精神的苦痛を負ったとして同大学を相手に1100万円の損害賠償を求め、神戸地裁に提訴したという。
　ちなみに献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することである。かつては献体をする人も少なく、身元不明者や引き取り手のない遺体を使って解剖実習を行っていた時期もあったようだ。
　20数年前になるか、私は岡山医大へ、亡母は川崎医大へ、ほぼ同時期に献体登録をした。その頃は献体希望者が少なかったからすぐに手続きは完了、岡山医大学長から感謝状が届いたほどだった。が、最近は献体に対する認知度が上がり、希望者は増えて登録されるまで２、３年かかるところもあるそうだ。
　どこの大学でも同様らしいが、献体登録をすると、遺体の大学までの搬送費ならびに火葬にかかる費用は大学が負担してくれる。また、引き取り手がいない遺骨は大学が用意した合祀墓や納骨堂に納められる。そのため「葬儀の費用が払えない」「家族に葬儀のことで負担をかけたくない」「墓を作らなくていい」という理由で献体を希望する人が増えたとか。昔の人は報いられることを求めず、ただ医学・歯学のお役に立つならばという純粋な気持ちから献体を希望したそうだ。これも時代の流れか…。
　
　余談だが、私の近しい身内でがんで亡くなったのは７人、それも胃がん、肺がん、腎臓がん、上顎がん、胆のうがんと多種多様だった。また血縁はないが姉の夫は「原発性肝がん」、横隔膜が原発という珍しいガンに罹り、50歳の若さで亡くなった。がん患者の終末期は、俗にいう『スパゲティ症候群（身体じゅうにチューブやセンサーが取り付けられた重症患者のことをと呼ぶ）』で、義兄も見るに忍びない状態だった。
　その亡義兄の娘である私の姪は、時先天性心疾患で５歳の時岡山医大手術した。また胃がんで亡くなった私の弟の長男は、３歳のころ小児腎臓病で長期入院した。おかげで今は２人とも元気で、もう立派なオバサン、オジサンとなっている。
　このようにわが一族は、病院や医療従事者の方々にはずいぶんお世話になった。小児腎臓病は「指定難病」で治療費無料、どれだけ助かったことだろう。そのご恩返しというわけではないが「医学の進歩に少しでもお役に立てば」という思いから、私と亡母は献体したのである。
　昔は、遺体はホルマリンの大きなプールみたいなところに入れられると聞いていたが、今は遺体の足の付け根の大腿動脈から血管に保存のための防腐剤が入れられ、血液と入れ替える。そして一体一体が保存用のロッカーのような冷蔵庫に安置され、解剖の時を待つそうである。
　亡母は平成16年２月に亡くなった。高齢者が優先されるそうだから早かったのだろう。３カ月ちょっと経ったころ、献体した大学から「火葬するので立ち会ってほしい」と連絡があった。大学の安置室で亡母に対面した姉は「亡くなった時の状態のまま、まるで眠っているようだった」と言っていた。火葬後、遺骨はわが家の墓に納骨、最後まで丁重に扱ってくれた大学に感謝している。
　私もそろそろだ。が、孤独死で死後何日も経過した遺体は献体には使ってもらえない。病院で「ご臨終です」となるように死ななくては…。それが心配なのよね。