「老々医療」、そして「日本一お年寄りにやさしい町」の話・・・

　昨今、医師不足による医療の崩壊が大きな社会問題となっているが、栃木県の佐野市民病院では、２年前の２００７年、医師が全くいなくなるという危機的状況に陥ったそうだ。市では病院の休止も検討したが、最終的には、経営の主体は某医療法人に、運営は公立の市民病院でということで再生した。この仕組みを「指定管理者制度」というらしいが、今、この方式を活用して再生を目指す公立病院が増えているという。
　先日も千葉県銚子市で、市立総合病院の休止をめぐっては市長のリコール・出直し選挙にまで発展した。が、新しい市長のもと、「指定管理者制度」を採用し、公設民営で再生を目指すことになったそうである。
　民営化して半年、先日、その後の佐野市民病院再生の様子がテレビで放送されていた。大学病院などからの医師派遣は難しく、かつて２９名いた医師は現在１０名足らず。院長の人脈から集まった医師たちは、実力はあるが組織になじまなかった医師やリタイアした医師など、それも７０歳から８３歳までの医師たちである。が、年老いたとはいえやる気は十分、次々と休診科目を復活させるなど大活躍で、その試みが注目を集めたという。これこそ同世代の患者を看る「老々介護」ならぬ「老々医療」である。

　次は、「日本一お年寄りにやさしい町」の話。東京都の西に位置する日の出町は約１万６０００人が暮らす緑豊かな町だそうだが、この町の町長さんが、昨年９月１５日の敬老の日、「日本一お年寄りにやさしい町づくり宣言」を発表した。
　宣言した施策は、「７５歳以上の方が負担する医療費を無料に」・「７５歳になる方が受ける人間ドック受診料を無料に」・「健康教室を開催し、お年寄り向けスポーツを支援するなど、健康管理・健康増進を図る」の３つの条例で、すでに今年４月から施行されている。この制度を導入したきっかけは、２００７年１１月に大型スーパー「イオンモール」がオープンし、これにより、２００８年度は約３億３０００万円の税収が入ったことだという。
　この制度については、医療費が無料になることによって後期高齢者が、用がなくても何となく病院に集まってしまう、いわゆる「サロン化」の懸念はないか、現役世代への負担が大きくなるのではないかなど、将来を危ぶむ声もあったそうだが、採決は１３対２の賛成多数で施行された。それにしても、施策宣言から施行までわずか半年あまり、お国のやることとは大違いだ。
　また、１５歳までの子どもを持つ家庭に町内専用クーポン券を毎月１万円分配布、１５歳までの医療費全額無料化、７０歳以上の方には、毎年「敬老金」１万円と、「生涯青春生き生き奨励金」1万円を支給。１００歳になられた方には「百歳万歳生涯青春生涯現役敬老金」１００万円が支給されるという。これは本人だけでなく、家族への感謝の気持ちも込められているそうである。

　このように地方は自分たちで考え、自分たちの力で実施する力強さを持っている。これこそ、橋下大阪府知事が主張する「地方でできることは地方で…」ということであり、もはやお国を当てにしていてはらちが明かないということだろう。日の出町の町長は８０歳だそうだが、お年の割には考え方が柔軟で、行動力にスピード感がある。何かにつけてもたもたしている政治家の先生方、この町長さんを見習ってはいかがでしょうか
　それにしてもうらやましい話で、私も日の出町に引っ越したいくらいである。