７年６ヶ月間で４７品目、偽装ではなく誤表示・・・

　何と呆れた話ではないか。阪急阪神ホテルズが、傘下のホテルなどのレストラン２３店舗で、メニューと異なる食品表示を行っていたという。「九条ネギ」は普通のネギ、「手捏ねハンバーグ」は既製品、「ビーフステーキ」は牛肉に牛脂を注入した加工品、「鮮魚のムニエル」は冷凍保存した魚、「霧島ポーク」は別の産地の豚肉と、調べればまだまだ出てきそうである。
　大阪の阪急ホテルのレストランでは「くらげのレッドキャビア(マスの卵)添え」は、１キロ１万６０００円はするマスの卵ではなく ３０００円前後のトビウオの卵だった。また、宝塚ホテルのレストランでは絞りたて１４００円の「フレッシュオレンジジュース」を、実際は１リットル入り１本５００円程度の既製品のジュースを出していたなど、他にもまだまだあるようで、利益を得ていたことは明らかである。
　レストランなどのジュースは氷が入っているから、コップ１杯は正味２００ミリリットルにも満たないだろう。１リットル５００円のジュースで５杯分取れるすると１杯１００円、これが１４００円に化けるのだから、こんなおもろい商売はない。それでも「偽装ではなく、誤表示と思っている。お客様をだまし、利益を得ようとしたものではない」などと、よくも言えたものである。 

　テレビの記者会見をみたが、原因について「知識不足のうえ、調理担当、発注担当、仕入れ担当との情報伝達、連絡ミスだった」と説明する社長の発言は、いかにも現場担当者だけの責任であるかのように聞こえた。ほんの短い期間の数品目ならともかく、２００６年３月～２０１３年９月までの７年６ヶ月間、４７品目ものメニューが偽装されていたのである。これを上層部が知らないはずはないし、ましてや故意ではないと、誰が納得するだろうか。
　ただ、総務人事部長はテレビの前で 「できるだけお客さまの目にとまるようなメニューにしたいという思いが強いあまり…」と本音が出たようで、記者に問い詰められると「偽装といえば、まあ偽装で…」と、言葉に窮していたのがおもしろい。この人は多少でも良心がとがめたのだろうネ。

　一流のホテルやレストランで食事をする人はリッチな人で、舌の肥えた食通が多いのかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。フルーツ搾りたてのフレッシュジュースと既製品ジュースの違いが分からぬとは…。キャビアなんて安物は不味いはずである。私でも、全品１００円の回転寿司のイクラと、５００円のイクラとでは食べてみれば分かるけどネ。ステーキは牛肉に牛脂を注入した加工品、これを食べて美味いと満足したのかしら？　一流店で食事をする人は、高級料理を食べたという自己満足と見栄で、実際は味など分かりはしない。ホテル側はそう見透かして、バレはしないと高をくくっていたのだろう。いうなれば、お客はみんなバカにされていたのである。 

　ＪＲ大阪駅前の大阪新阪急ホテルでは、問い合わせの電話だけでなく、直接来店する客も相次いでいるという。会社側の試算では、損害額は７万８７７５人に対し１億１０００万円になるそうで、２５日現在、すでに５６３２人に計約１３８０万円を返金しているという。
　返金を申し出た人の確認は、レシートがあれば簡単だが、私のように、レシートは家計簿に記入したらすぐに捨てるという人も少なくない。そんな場合は、客から「いつ、何人で、いくら払ったか」などを聞き取り、店で保管しているレシートの控えと照合し、確認がとれれば返金する。直接来店できない人には電話で事実確認を行い、口座振り込みも行うという。だが、こんなあいまいなことだと、またぞろ「食べた振り」をする悪い奴が現れるのが世の常である。が、お客を怒らせるのはまずい。たとえ半信半疑でも深く問い詰めることもできず、返金せざるを得ないだろうね。
　昨今は、騙した方より騙された方が悪いといわれかねない世の中である。騙されたと自分の恥を晒して返金を迫るより、きれいさっぱり諦めた方がいいネ。こんなご時勢では、もう一流ホテルでも老舗有名店でも、絶対の信頼が置けるところなどありはしない。見栄を張って、高い料理で騙されるより、安いファミレスで騙される方が腹の立ちようも違うだろう。