目に余る杜撰なお役所仕事・・・

　一昨年の１２月だったか、北海道滝川市で、元暴力団員と妻による生活保護費詐欺事件が発覚した。平成１８年３月～１９年１１月の間、夫婦で札幌市内の病院に通院するための介護タクシー代などとして約２億４０００万円の生活保護費を詐取したという事件で、元暴力団組員は懲役１３年、妻は懲役８年の実刑が確定している。
　市は、「不正は見抜けなかった」と主張したが、地元の飲食店で豪遊する姿がたびたび目撃されており、タクシー料金の水増し請求も見抜けず、別の事件で有罪判決が確定した後も、当然減額されるべきなのに満額支給を継続していたという。これらは精査すれば簡単に分かることだろうに、“親方日の丸”仕事の最たるケースであろう。
　今回、会計検査院から不当支出と認定され、国庫負担分を全額返還せよとのお達しで、滝川市議会は２３日、約１億８０００万円を国庫に、残り６０００万円を市会計に返還するため、市職員（約６５０人）の給与を月額３％、３年間カットすることなどを盛り込んだ改正給与条例案を賛成多数で可決したという。市によると、一人当たりの減給額は単純平均で年間約３６万円になるという。
　返済に市の税金は一切使わないとなると、これだけの金額を、単に市長、幹部クラスだけでは補填しきれず、全職員が責任をとるということになったのだろう。が、会計検査院のお達しに不服を申し立てることなく受け入れたこともだが、よくこの条例案が可決されたものだと感心している。
　当然とはいえ、地方自治体の不始末は厳しく指摘し、きっちり返済させる会計検査院、ならば、今まで厚労相や国交省など、数々の不祥事で無駄に使われた税金や、横領事件などで生じた損害を、各省庁の全体責任でなぜ返済させぬ　
　これには腹立たしい思いがするが、そもそも会計検査院は官僚機構であり、歴代の院長のほとんどが官僚出身だ。そして、会計検査院ＯＢの独立法人や行政法人への天下りが慣例になっており、結局、“持ちつ持たれつ”なのである。しかし、取れるところから取るというのは道理に合わぬ。　

　他にも未だに“親方日の丸”意識がそのままの、“お役所仕事”がまかり通っている。先日、愛知県で分かったことだが、低額所得者向けに設けている県営住宅に、規定を上回る高額所得の９２１世帯が入居しており、中には家族の分と合わせると年収が１８００万円にのぼる警察官世帯もあったという。９２１世帯の中には公務員が結構いたということは、自分たちの裁量でどうにでもなるということだろうか。あきれた話である。
　これは愛知県に限ったことではない。どこの町にもある「雇用促進住宅」でも、本来の目的を逸脱して、低家賃をいいことに長年住み着いている人が多い。また、生活保護受給者は車を持つことは許されないのに、名義を嫁いだ娘の名前にして堂々と乗り回していた人も知っている。
　一方、過去にはエアコンの設置はダメとかで、熱中症で亡くなったお年寄りの話もあった。生活保護申請を却下され餓死した人もあった。あれもダメ、これもダメと規則を振り回し、融通が利かぬところがお役所である。身を入れて調査すれば分かることが見逃され、一方では規則をたてに、重箱の隅をつつくような細かさ。世の中にはそれぞれ事情があり、規則では講じきれないことがたくさんあることが分からないようで、何が「国民の公僕」か。