やっぱり！ 火のないところに煙は立たないんだ・・・

　元プロ野球選手・清原和博が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された。「火のない所に煙は立たない」というように、やっぱり火種はあったのだ。それも何年も前からくすぶっていたのが、とうとう煙をあげて燃え始めたようである。
　警視庁は、清原容疑者を逮捕した２日の前日までに、東京都港区にあるマンションの清原容疑者宅から出された家庭ゴミを捜査。一部の付着物から、覚醒剤の成分を検出したという。これまで何度も薬物疑惑の噂はあったが、警視庁は１年以上にわたる内偵捜査を経て、この日の強制捜査に踏み切ったという。
　清原容疑者は所持の目的を「使用するため」と認めているそうだが、「（覚せい剤の）入手先についてしゃべるつもりはない」と供述しているそうだ。背後に反社会的勢力の存在があれば、べらべらしゃべることはできないだろうが、ただ本人に刑罰を科して終わりというのでは覚せい剤を根絶することはできないし、再犯のおそれも心配される。昨年９月、覚せい剤取締法違反などの罪で、懲役３年、執行猶予４年の有罪判決が確定したASKAの事件でも、結局、尻すぼみでうやむやのうちに忘れ去られようとしている。　

　何と愚かなことを、と誰しもが思っているだろう。いつも多くの人に囲まれちやほやされ、思いのままに生きてきた彼だが、今の心のうちはどうであろう。現役を退いたあとの喪失感もさることながら、妻や子どもたちに去られ、何もかも失って初めて味わった寂しさ、孤独感は本人にしか分からない。「番長」と呼ばれ、怖いものなしの強い男のよう振舞っていても、やはり彼も人の子、妻や子に去られ独りになったことが一番辛かったのだろう。だからと言って、覚せい剤に手を出すなどもっての他である。
　逮捕のニュースを聞いても、いつかはこうなるだろうなあ、という予感があって大して驚きもしなかった。だが、１４年間連れ添った亜希夫人と離婚後は、自宅マンションを税金滞納のため差し押さえられ、ウィークリーマンションを転々としていると聞けば哀れみを覚える。彼に注目するようになったのは、ＫＫコンビで活躍した甲子園時代、県北の津山市が彼の親御さんの出身地だとかで、大騒ぎになったことからである。色々と彼のやんちゃぶりは耳にしたが、彼が東日本大震災の被災地にポンと１０００万円を寄付したと聞いて、その気風のよさ、優しさにちょっと見直す気持ちにもなっていた。
　最近では、１月１１日に開催された名球会ベースボールフェスティバルに登場。長嶋茂雄氏から「頑張りなさい」と声をかけられ感激しまくっていた姿をニュースで見たが、先輩や仲間たちの堂々たる姿を前にして、後ろめたさや自分のしていることを恥ずかしく思う気持ちが少しでもあっただろうか。
　
　余談だが、今回の事件で、昔、阪神などで活躍した江夏豊元投手を思い出した。彼は１９９３年、覚せい剤所持の現行犯で逮捕。初犯ながら、所持量が多く懲役２年４月の実刑判決を受け服役した。ネットでのにわか仕込みだが、通算２００勝２００セーブポイントを達成した唯一の投手であり、不滅のシーズン４０１奪三振を達成した投手である。普通ならとっくに野球殿堂入りしてもおかしくないのに、彼はまだである。その理由が、過去の覚せい剤取締法違反での逮捕歴が影を落としているとも言われる。
　江夏氏の裁判では野村克也や江本孟紀、衣笠祥雄ら友人たちが法廷に立ち彼を弁護したという。清原にこういう友人がいるだろうか。江夏氏は服役とともに名球会から退会。仮釈放後は野球解説者・評論家に復帰、現在は名球会にも復帰している。２０１５年には、阪神の一軍春季キャンプで臨時コーチを務めた。そして、２０１６年にも、阪神の二軍春季キャンプで臨時コーチを務める予定だとか。過去に実刑判決を受けた人がこうして野球界で指導者として受け入れられるようになったのは、彼の人間性によるところが大きいと人は言う。が、それには２０年という長い年月を要している。清原もこれを機に改心し、江夏氏のようにいつか野球会に受け入れられるような人間になってもらいたい。
　４日、甲子園球場にある甲子園歴史観から清原関係の展示品が撤去されたそうだ。名球界はどうなるだろう。これまでの数々の栄光とは裏腹に、これからの彼の人生は苦悩に満ちたものとなるであろう。が、犯した罪の代償は大きいことを肝に銘じてしっかり生きてほしい。